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鬼の集落

 鬼の集落。簡易的に囲われた柵の中に木造住宅がいくつか見える。集落の入り口らしきところには2人の鬼がいる。鬼は二人とも青色の肌をしていて2本の角を頭に生やしている。


「旅の者だ。長旅で疲れてしまってどこかで宿をとりたい。集落の中に入れてくれないか?」


「旅の者がこんな場所に何の用だ? お前人間だろ。怪しいな。教団の連中じゃないだろうな?」



「『時計仕掛けのオレンジ』」

 球体状の魔導銃を腰のあたりで素早くひき、2人の鬼に命中させる。


「ルール1 お前たちはなんとしてでも俺と文香を村にいれたくなる」


「わかりました。ここで少し待っていてください」


 鬼の一人がそういうと集落の中に戻っていく。しばらくして、図体のデカい風格のある鬼と棍棒を持った6人の鬼が現れる。


「お前さんたちが旅人か」

「そうです」

 数が多すぎる。俺の『時計仕掛けのオレンジ』の許容範囲を超えてしまっている。


鬼童丸きどうまるさん、是非この旅人を入れてやってください」

 先ほど洗脳した鬼が頼み込む。


藤丸ふじまるがここまで頼み込むから何かと思いきや、そういうことか。藤丸、お前も成長したのだな。匂いでわかる。確かにこの二人は屍食鬼グールだ。屍食鬼ならば助けてるのは当然だ。肥前丸ひぜんまる、旅人を俺の家まで案内してやってくれ。俺はこのまま集会にいく」


「わかりました」

 肥前丸と呼ばれた鬼が俺の前に進み出る。


 俺たちは肥前丸につられて集落の中を歩いていく。

 見た感じ村の鬼はそこまで多いわけではなさそうだ。肌の色は赤だったり青だったり。女性の鬼は角が一本なのがわかる。


「ここが鬼童丸さんの家です。お相手できなくてすみません。今いろいろと立て込んででまして」


「アルデバランのことですか?」


「ご存じなんですか?そうです。我々の蜂蜜を狙って彼らはしつこく言い寄ってきているんです」


「事態はどの程度まで認識できていますか?鬼の子供が連れ去られていることは知っていますか?」


「鬼の子供?まさか!詳しく聞かせてください」


 俺は黄色印の兄弟団は鬼の子供8人を拉致し、演劇で殺したことを話した。


「そんな!そんなことが!!鬼童丸さんにすぐに知らせに行かなくては」


「俺たちもつれていってください」


 俺は再び肥前丸さんにつれられ、ひときわ大きな家にたどり着く。

 中では5人の鬼がテーブルを囲んでいた。



「どうした肥前丸?何かあったのか?」


 肥前丸が俺の話を伝える。鬼童丸は話を聞いて逆上する。


「旅人!嘘をつくな!!」


「嘘はついていません。事実を言ったまでです。おそらく事態はあなた方が考えているよりも更に深刻です。私は場合によってはあなたたちに協力したい。いま、あなた方が持ってる全ての情報を教えてください」



 鬼童丸は俺の言葉を聞いてもなお怒りが静まる様子がない。会議に集まっていた鬼の一人が肥前丸に鬼童丸を連れて出ていけと命令し、話は再開された。



「私の名前は金剛丸こんごうまるという。この集落では鬼童丸の次に偉い。私がこの場を取り仕切ろう。旅人よ。現状は私が説明しよう」


 彼はその場にいた者の名前、加賀丸かがまる赤城丸あかぎまる信濃丸しなのまるの紹介を軽くしたあと、説明を始めた。

 話はこのようなものだった。

 以前から鬼の集落とアルデバランでは物の取引が行われていた。

 アルデバランからは衣を、鬼の集落は蜂蜜をそれぞれ取引していた。鬼の集落でも例年、アルデバラン用の蜂蜜の量は確保され管理されていた。だが、アルデバランは最近になって普段以上の蜂蜜を要求するようになった。鬼はその取引を断った。理由は単純だ。取引するだけの収穫量がないからだ。


 なろう王国の建立により、鬼の集落は蜂蜜の献上を義務づけられた。義務といっても気まぐれなタイミングでそれは要求される。だから、鬼の集落では献上するための蜂蜜を一定量残しておかなくてはいけない。

 その蜂蜜をアルデバランは要求してきた。鬼はそれを拒む。交渉してから数日後、貯蔵用の蜂蜜の半分が何者かによって盗まれた。当然、犯人はアルデバランの者しかいない。


 鬼はアルデバランの人間を呼び出し、話し合いの場を設けた。すると彼らからは驚くべき要求をされた。蜂の巣自体をよこせと言ってきたのだ。

 蜂の巣は先祖代々伝わってきた鬼にとって大事なものであり、それを全て搾取しきると一時的に蜂蜜を得られることがあっても来年以降の蜂蜜ができなくなる。事の顛末を聞いた若い鬼たちがアルデバランに蜂蜜を取り返しに行った。しかし、帰ってきたのは若い鬼たちの死体と13人の人間の死体だった。

 そちらの鬼も死んだが、こちらの人間も殺された。これでお互い様だと教団は言ってきた。

 それ以来、鬼はアルデバランと関わることをやめた。そしてつい数日前のこと。子供の鬼が行方不明になるという事件が何件か発生した。


 俺もアルデバランで見て聞いてきた情報を鬼たちに渡す。

 鬼たちは俺の話を聞いて怒りで震えている。


「話してくれて感謝する。君たちもここに来たというには何か理由があったのだろう。今日は鬼童丸の家に泊まると聞く。その時に肥前丸か肥後丸に話があればするといい。今から私たちはアルデバランについて重要な協議を行うことにする」


 金剛丸が言った。

 気が付くと鬼童丸も戻っていたらしい。肥前丸につれられて再び俺は鬼童丸の家にいく。



 ***


 夕暮れ時。

 鬼たちは俺と文香に料理をごちそうしてくれた。

 ほんのりと梅の味がする。そのことを文香に言うと、文香は料理人にレシピを聞きに行った、


「どうしてお二人は参られたのですか?」


「自分探し、でしょうか。鬼童丸さんも言っていたように、我々はおそらく屍食鬼です。ですが、その確信をもっているわけではありません。なので少しでも自分たちがどのような存在かわかればいいと思って旅している内にここにつきました」


「となると、吸血鬼に吸われた元人間ということですか?」


「吸血鬼?わかりません。鬼や屍食鬼のルーツについては全く知らないのです。教えてください」



 肥前丸さんは俺の質問にも根気強く答えてくれ、俺は鬼という種族についての知識を深めることができた。

 それらは全てアンリミテッド・ノートブックスに書き記しておいた。


 夕食をとり終わって、俺と文香が話をしていると、突然目の前が白く染まった。


「霧か?」


「いいえ。ここ一帯の気候は安定しているはず。もしかして魔法?」


 確かに文香の言う通り、霧を生み出す魔法はある。土属性の魔法ホワイトミストを使えばそれは可能だ。

 しかし、《ホワイトミスト》を扱えるレベルの魔術師がいるとは思えない。



「敵襲だーーーーー!!」


 叫び声が広がった。

ブクマ、感想などありがとうございます。


明日は2話投稿します!

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