表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/119

黄色印の兄弟団

この話のために前半のテンポを犠牲にしてまで多くの伏線を張ってきました!

気になる人は1章「村の様子」に戻ってもらえるといいかなと思います。


ご期待ください

 ゼルダの後ろには他に2人の知らない人が立っていて、同じく黄色の服を着ている。3人は手に籠を持っていて、その中には光を放つガラスの瓶が入っている。


「ゼルダちゃん、随分雰囲気が変わったのね」


 文香が話しかける。改めてゼルダを確認すると成長が確認できる。あどけなかった面影は残ってなく、体つきは成熟した大人のものになり、髪も肩まで伸ばしている。


「そうですか?文香さんたちは変わってないんですね」


「そうかしら?ところであれは何をしているの?」


「今日は祈祷の日なんです。これから皆で黄金の蜂蜜酒を飲みます。よかったらお二人もどうですか?」


 フランシスがこちらの様子に気づく。


「あれは、大河さんと文香さんじゃないか」


 逃げるに逃げられなくなった俺と文香は村人たちに混ざる。

 ゼルダさん達はガラス瓶を村人に配っていく。俺と文香もそれを受け取る。ガラス瓶の中には少量の黄金に輝く液体が入っていた。

 文香に目で合図をする。文香はジョブスキルで湯呑を素早く取り出すと、そこに俺と文香の液体を移し、直ぐにしまった。

 俺と文香は空のガラス瓶を手にもつ。


「兄弟よ。ハスター様に感謝の気持ちを捧げ、今この杯を乾杯しよう。イア!イア!ハスター!!」


「「「「「「「イア!イア!ハスター!」」」」」」


 村人はそう叫ぶとガラス瓶を一気に飲み干す。俺と文香も一応飲んだふりをしておく。蜂蜜酒を飲んだ瞬間、村人たちは恍惚の表情を浮かべ、感嘆のため息をついている。


「あぁハスター様」


「なんて幸せなんだ」


「気持ちいぃ」


 この世の全ての幸せを感じているような様子で村人たちが意味のない言葉をつぶやく。

 その隙に俺と文香は集団から離れた。




「村長の言ってた通りだ。この宗教は明らかに危険だ」


「これからどうするの?」


「村長とゴードンさんの姿はなかった。まずは村長の家に行ってみる」


 俺と文香は村長の家に向かった。村長の家も他の家と変わらず黄色に塗装されている。

 ドアをノックしても反応がない。ドアを押してみると鍵は開いていた。俺と文香はそのまま中に入る。部屋の中のあらゆる家具と壁が黄色に塗装されている。村長が正気のままならこの状況を認めるはずがない。

 家の中を一通り探したが村長の姿は見当たらなかった。


「ゴードンさんの家に行ってみよう」


 ゴードンさんの家は黄色の壁に囲まれていた。壁の真ん中の扉のまえでノックをする。


「ゴードンさん!大河です。いるなら開けてください」


 ギィ。


 ドアが開く。ゴードンさんは黄色の服を着ていなかった。


「久しぶりだな。とりあえず入ってくれ」


 壁の中には以前の通り鍛冶屋があった。石造りの鍛冶屋を見て安心をする。


「ゴードンさんは大丈夫なんですか?」


「あぁ。俺はあいつらの宗教には参加していない。外の壁はあいつらが家を黄色で塗れとうるさいからつくった」


 ゴードンさんは俺と文香を家の中に案内し、お茶を出してくれる。


「一体あれは何なんですか?村長さんはどうしてるんです?」


「ウォレス村長は死んじまった。あのフランシスの野郎に殺されたんだ」


「殺された?」


「あぁ。お前さんたちには全てを話す必要があるな」


 ゴードンさんは俺たちがラプト村を離れてから起こった出来事を話してくれた。


 ***


 俺と文香が村を去ってから数週間後、フランシスは同年代くらいの若者10人を連れてアルデバランに向かった。

 若者たちが帰って来た時、彼らは黄色い服をまとい、フランシスと同じように村人を宗教に勧誘し始めた。

 集団の名前は「黄色印きいろじるし兄弟団きょうだいだん」。名前の知らない神の降臨を望む奇妙な集団だ。

 若者たちが宗教にのめりこみ始めたとき、ゼルダも同じようにして黄色の服を着るようになった。この村の変化は話題にはなっていたものの、村の大人たちは若者たちの変容を一時的なものだろうと楽観視していた。村長もその時は特に何かをするようなことはなかった。事実、つい最近までは若者も過激な行動はしなかった。


 4か月前のある日、バベルの塔が消えたと話題になっていたころ、アルデバランから帰ってきたフランシス達は興奮の表情を浮かべながら村に戻ってきた。


「ハスター様。ハスター様!」


 若者たちは口々にそう叫び、村人たちに判明した神の名前を伝えまわった。

 それから数日後、アルデバランからフランシス達と共に黄色の服を着た人々が手に黄金に輝く瓶を持ってラプト村にやってきた。それから村中を回り、広場に村人たちを呼びだした。ほとんどの大人は無視を決め込んでいたが、子供たちや野次馬の大人が広場に集まった。

 黄色い服を着た者は広場に集まった人々にガラス瓶を渡し、一緒に飲もうと言った。大人の村人たちは最初それを渋っていたが、それを飲み干した子供たちの幸せな表情を見て、一人の大人がその液体を仰いだ。

 広場にいた人々は幸せに酔っていた。その異様な光景を見た他の大人も好奇心に身を任せ黄金の液体を飲んだ。


 それからというもの、黄金の液体を飲んだ大人たちはアルデバランに定期的に通うようになり、いつしか村の中でもあの黄色の服を身に纏うことになったという。

 ウォレス村長が村の異常に気が付いたときには既に手遅れだった。村長は黄色の服を村で禁止するルールを作ったが、すでに信者は村の過半数を超えており、そのルールが効力を発揮することはなかった。


 ある日の夜、村長と老人たちは結託をし、信者たちの服を全て燃やすという強硬手段に出た。しかし、いち早く危険を察知したフランシスの妨害により作戦は失敗に終わった。

 フランシスは黄色の服を燃やそうとした者たちを締め上げ、広間に村人たちを集めた。全ての村人が広間に集まり、フランシスは村長がしたことを説明した。そして、演説の最後に「裏切者には死を!」と大きく叫んだあと、斧で村長たちの首をはねた。その光景に集団はどめいたが、いつの間にかアルデバランから集まってきた信者が村人たちにガラス瓶を配ると、村人はそれを飲み村長のことを忘れた。誰もが正気を失った中、あの気持ちの悪い掛け声が朝まで続いた。


 ***



「村長が死んでからはフランシスがラプト村の実権を握るようになって、俺を除く村人の全員が黄色印の兄弟団に入団した。村中を黄色に塗るようになって、アルデバランの奴らもラプト村によく来るようになった。俺はガラス瓶を作ってくれたからという理由で何とか見逃してもらっているってわけだ」


「ゴードンさんはこれからどうするつもりですか?」


「ここは俺の故郷だ。村から出るつもりはねぇ。村の皆を元に戻したいと思う。でも具体的な方法がわからない」


「そうですか。お話ししてくれてありがとうございます。お茶ごちそうさまでした」


 俺と文香はゴードンさんの家を出る。


「文香、どうするべきだと思う?『時計仕掛けのオレンジ』を使って時間さえかければ村人たちを正気に戻すことはできる。だが、どんなにそれが外部からみて悪いものだとしても、人々の信仰を勝手な判断で変えてしまうのはどうなんだろうか。もし村人たちが正気に戻ればフランシスは悪者とされるだろう。しかしそのフランシス自身も宗教そのものの被害者なのかもしれない。今の話を聞いてもフランシスが村長を殺して、村人はそれに対して何も思わなかったという事実がどうにも受け入れ難い。何をするのが正解なんだろうか?」


「あなたがラプト村を救いたいという気持ちはわかる。でも今の私たちの故郷は嘘松王国。嘘松王国を代表する私たちが外の出来事に口を出すのは、国にとって良いことではないと思うわ。それでも何かしたいというならいつも通りまずは情報を集めるべきだと思うの。私たちの価値観で物事を解決する以上、どこまでが善でどこまでが悪なのかはっきりさせる必要があるから。とりあえず、村のはずれで楓さんを下ろしましょう。そろそろ定期連絡の時間よ」




 文香はジョブスキルを発動する。楓さんが光に包まれて出てくる。


「文香様ありがとうございました」


「いえいえ。そろそろ定期連絡をお願いします」


 楓さんが定期連絡を終わらせた頃、後ろから声が聞こえる。フランシスの声だ。

 文香が楓さんにジョブスキルを発動させる。


「あれ、さっきは3人見えたような気がしたんだが。まあいいか。

 大河さん、文香さんこれからアルデバランに行くんですけど一緒に来ますか?」


「何かするんですか?」


「明日の夜、アルデバランで演劇が行われるんです。大河さんと文香さんにも是非見てほしいと思ったので」


「わかった。是非行かせてほしい」


 腹は決めた。俺はラプト村の問題を解決しなければいけない。

 そのためには文香の言う通り情報が必要だ。


「あなたが決めた道なら私はどこまでも付いていくわ」


「ありがとう。文香」


 俺たちはアルデバランへと向かう。

ブクマ、評価してくださった読者さん、本当にありがとうございます。

数値が伸びてるのをみるのはうれしいですね。物語も面白くなっていくと思いますのでよろしくお願いします。


ブクマ、評価、感想など頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ