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ラプト村 再び

この話が書きたくて前半のテンポを殺してまでも伏線をたくさん張ってきました。

期待してください!!!


詳しい内容は1章の「村の様子」に戻ってもらえばわかります。

「懐かしいな、この感じ。最近はずっと嘘松王国にいたから」


「二人だけだったらもっとよかったんだけど」


 文香は楓のほうを見てさらっとそう言う。冗談のようにもとれるが実際のところはどうなのかわからない。


「無理言ってすみませんでした。なるべくお二人の邪魔をしないように努めますので」

 楓が文香に答える。


「邪魔をしなければ何もしないわ。楓さんの言うこともわかるから」




「ラプト村のみんなは元気でやってるかな」


 トルキン公国とは無事に平和協定を結んだ。会談ではドメル平野を嘘松王国の領土だと認めさせることに成功した。こちらは友好の証として嘘松王国都市部の主食である油揚げ製作の技術を提供することにした。雑食のオークにとって安価で作れる嘘松王国の油揚げは便利な食料となるだろう。

 それから俺と文香は内政に勤しみ、国が安定したため冒険に出ることにした。

 主な目的は2つ。一つ目は魔導銃の素材を集めにいくこと。東大陸のリザードマンの国の周辺の火口でとれる鉱石が製作に必要だとドワーフが言っていた。

 もう一つの目的は鬼の集落にいくこと。屍食鬼は曲がりなりにも鬼の種族だ。少しでも魔導書について情報が欲しい。だから鬼の集落をひとまず目的地にすることにした。

 鬼の集落は山を挟んだ向こう側にある。バビロンの反対側の山の麓には、鬼の集落と放牧で有名なアルデバランがあり、それらはラプト村と交流があった。



 久しぶりにラプト村の皆に会いたいと思ったので山を迂回せず、山頂にあるラプト村によるルートで目的地を目指すことにした。

 この予定を決めた当初は文香に国を任せ、俺一人で行こうと思っていたのだが、文香がそれを許さず、更には楓が『以心伝心テレパシー』で状況を報告できる自分がいたほうがいいと言うので3人で冒険に出ることにした。


「定期連絡が終わりました。特に問題はないそうです」

 毎日昼の12時と夜の22時に楓と王国に残った空孤の一人が『以心伝心テレパシー』で定期連絡をするようにしている。時計はドワーフに作らせた。




 俺はアンリミテッドノートブックスを開き、村人についてのメモを読む。


「鍛冶屋のゴードンさんなんていたな。体つきはいかついのに優しいんだよな」


「私としてはゼルダちゃんとフランシスくんがどうなったのか気になるところだけど」


「あぁ。懐かしい。ウォレス村長の娘さんとその恋人か」


「もう1年以上も経つのね」


「長い1年だったな。おっと。ここら辺があの怪物にあったところじゃないか」


「結局あの怪物が何故私たちを襲ってきたのかはわからなかったわね。闇商人はバベルの塔が関係しているって言ってたけれど」


「そのことだけど確かフランシスくんに聞いたとき何か知ってるようなそぶりをしたってメモには書いてある」


「そういえばそうね。何か知ってるような反応だったわ」


「転生してからあの怪物について得られた情報は闇商人のものとフランシスくんのそれだけだった。闇商人でさえ詳しく知らなかったものを一般人のフランシスくんが知っているのはいかにも怪しい。ラプト村を出て俺たちは強くなった。今の俺にはそれを聞き出す力がある」


「それもあなたがラプト村によりたいと言った理由なのね?」


「まあそれもそうだけど、みんなに会いたいってのが一番の理由かな。転生してきて最初に過ごしたラプト村での10日間はとても濃密で楽しかったな。村の人たちはみんないい人だったし。全部が終わったら楓と紅葉に嘘松王国を譲ってラプト村でスローライフなんていうのもいいかもな。よし、今日はここらへんで宿をとることにしよう。文香頼む」




 文香はジョブスキルを使用してテントや料理器具、食料などを取り出す。

 楓と俺は周囲に設置型の魔法を発動する。持ってきた油揚げを食べて、火を囲んで談笑なんかをする。

 夜は楓が見張りをするといいだした。俺は罠があるからそこまでしなくてもいいといったが、文香は楓の見張りに賛成した。


「明日は私が楓さんを運搬すればいいじゃない?」


 なるほど。文香の意図はわかった。止める必要もない。俺もそれに同意した。


 目が覚めたとき文香はもう目覚めていた。楓は別のテントで眠っているらしい。

 文香が起きたのを確認して仮眠をとりにいったそうだ。

 文香は朝ご飯を作ってくれていた。嘘松王国にいるときは従者が料理を作ってくれるから文香の朝ごはんを食べるのは久しぶりだ。




「うっ......」


 料理をいただこうとしたとき、急激な吐き気に襲われた。

 頭の中にゴブレイさんを殺した時の光景と、十六夜天狐を殺した時の光景がフラッシュバックする。

 体中が汗ばみ、心臓の鼓動が早くなる。


「あなた大丈夫?」


 しばらく、気持ちが落ち着くのを待つ。その間、文香は背中を優しくなでてくれた。


「大丈夫だ。心配かけてすまない」


「またあの光景なの?」


「あぁ」


 こういうことは俺と文香が天狐になってからも何度かあった。文香はいち早く俺の異変に気が付き、相談に乗ってくれた。俺と文香は客観的な分析から、俺がいわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しているのだろうと結論づけた。

 60回以上の死の体験。繰り返される時間の体験。人殺しの体験。

 これらのストレスは俺の精神を確実に蝕んでいた。


「汁物なら平気そう?」


「ありがとう」


 文香は気をつかって料理を下げてくれた。


 朝食が終わると、文香は出発の準備を始める。

 楓が寝ているテントに行くと、ジョブスキルを使って楓さんを運ぶ。

 そしてまた俺と文香はラプト村に向かって歩き出す。


「やっとこ二人きりになれた」


「そうだな」


 俺は文香に左手を差し出す。

 文香は俺の左手を絡めとってギュッと握る。



 ***



「見えてきたな。あれ?」


「だいぶ雰囲気が変わってるわね」


 ラプト村は全体的に黄色をしていた。どの家も狂ったような黄色で塗装されており、村を囲む腰くらいの柵までもが黄色くなっている。


「なんか嫌な感じがする」


 ひとまず俺と文香は以前住んでいた家の場所に向かうことにした。

 道中、村人の姿は見えない。何かがおかしい。

 家に着く前、広場に通りかかると、そこには大勢の村人が集合していた。村人たちはみんな黄色のレインコートのような服を着て、フードを被っている。朝礼台のようなものの上にはフランシスがのっていて、村人たちはフランシスの方を向いている。


「一体何があったんだ?」


「全員、私たちが知ってる人たちね。何人か姿が見えない人もいるけれど村人のほとんどが集まってる」


 フランシスが腕を大きく広げ演説のようなものを始める。

 いかにも宗教チックなまどろっこしい話が続き、聞いているだけでも頭が痛くなってくる。


「兄妹達よ。我々の主たるハスター様に祈りを。イア! イア! ハスター!」


「「「「「イア! イア! ハスター!!」」」」」


 村人たちは大声をあげて祈りを捧げている。

 俺と文香はその様子を遠目で見る。


「ハスターって言ってるわね」


 1年前、村長さんの家でフランシスは神の名前は分からないと言っていた。

 今ならその理由がわかる。バベルの塔が存在していたあの時は「ハスター」という名前が読めなかったのだろう。

 村人たちの不気味な姿を見ながらどうしたものかと思案する。


「あれ、大河さんと文香さんじゃないですか!」

 後ろから声をかけられ振り返る。


 そこには村人たちと同じように黄色の服を来たゼルダが立っていた。

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