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舌戦ー2 応酬と報酬

対談終わり。


理屈こねてごちゃごちゃしてるところは嫌いな人は流し読みで大丈夫です。

「すまない。話を中断してしまったな」

 二人目の顔でカインズは話を始める。


「いえいえ。しかし、こうして俺たちが会話を続けてしまうとこの者たちの命が犠牲になってしまいますね」


「そんなことは気にするな。先ほどオーラが言った通り、こいつらは自らの命を私に捧げることを望んでいる。そもそも我がヘルヘイム帝国において、死というのはただの状態に過ぎない。死を恐れるのは愚かなことだ。この考えは貴様にもわかるだろう?我々は既に一度死んでいるんだから」


 ここで情報を探ってくるのか。面白い。受けてたとう。


「そうですね。我々転生者は既に死を経験しています」


 これで正解のはずだ。死というワードについて話を深めるのは愚策。俺の【運命(うんめい)(ころ)がす女神(めがみ)右手(みぎて)】が死と関わる能力だと感ずかれる前に話題を終わらせておきたい。十六夜天狐を倒すと決めた時点で俺と文香が転生者であることがばれてしまうのは覚悟している。


「やはり二人とも転生者だったか」


 ()()()()と入れたのは俺と文香の両方が転生者かどうか確定情報を得るためだろう。


 バカめ。まんまと罠にかかってくれたな。


 俺は()()と表現することでその範囲をあえて規定しないでおいた。カインズの質問の仕方やタイミングを知ることで相手の頭脳レベルを測ることができるからだ。


「俺も文香もあなたと同じ転生者です」


 今までの会話でカインズの頭脳の程度がわかった。カインズは一般人より頭が切れるとしても、俺よりは頭が悪い。カインズは俺に情報を求めるような質問を続けてした。それに俺は正直に答えた。次はこちらの番だ。




「転生者同士で2体1の戦いだ。陽菜はるなが負けた理由がよくわかったよ。転生者並みの力を持つ者はこの世界には存在しないからな」


「そうですかね? 俺はつい最近までバビロンで冒険者をしていたんですが、その時に腕利きの者は何人か見ましたよ? 例えば、新種のゴブリンの王を倒したゴブレイという冒険者がいます」


 カインズは俺と文香以外に転生者がいないのか探りを入れてきた。だがそれには乗らない。こちらが攻める番だ。一番欲しい情報はバベルの塔の倒壊にこいつが関わっているかどうかということ。そのためのこちらが切れるカードとしてネオゴブリンロードと闇商人の情報がある。あわよくば闇商人の情報も得たい。


 ここにいるオーラが身体を変身させるようなスキルを持っている可能性もなくはないが薄い。だが、いままで得たこの世界の情報からすると、姿を変える能力は闇商人のギフトだろうと予想できる。

 身体の部位を膨張、収縮化する魔法は、嘘松王国でも十六夜天狐のみが研究していたレベルの高度なものだ。だから魔法のみで顔の形を変えるというのはほぼ不可能と言っていい。それにCグループにいたあの男と闇商人では性別や骨格、肌の質感、瞳の色まで全て別人レベルで違っていた。強力なギフトには文学作品の名前がつく傾向があるのはわかっている。そうなるとギフトの名前までも大体絞れてくる。候補は二つ、オウィディウスの『変身物語』か、カフカの『変身』。



「ほう。その話をしてくるとは思なかった。貴様は一体どこまで知っているんだ?」


「さあ? どこまででしょうか? 先代は多くの情報を持ってましてね。いろいろお聞きしましたよ」


「くどい。はっきり聞こう。はえの王計画を邪魔し、私の子供たちを始末したのは貴様か?」


「蠅の王計画? 知りませんね。あのネオゴブリンロードはあなたの子供だったんですか? 以前倒されたゴブリンリロードが生き返っているあたりヘルヘイム帝国が絡んでいるんだろうとは思っていましたが」


 俺がそういうと、今まで黙っていたオーラがいきなり立ち上がり大声をあげる。


「とぼけるな!ウルデミゴスとグレーテルを殺したのはお前たちだろう!! あいつらの死体はどこにある?」


 ウルデミゴスとグレーテル。ビンゴだ。やはり闇商人は世界樹の落とし子だった。

 だがこいつがいきなり怒り出した意図は何だ?俺と文香は死体について何も知らないし、いきなり名前を出してくるメリットも見いだせない。


「落ち着いてください。私たちはそのもの達について何も知りません。知っているのはゴブリンロードの復活にそちらの国が関わっているらしいということ、ゴブレイさんに十六夜陽菜の姿をした誰かが魔導書を渡したということだけです」

 俺が相手の思考を読んでいるのをみて、文香が代わりに答えてくれた。


 その間に、考えられた解釈は二つだ。


 まず一つ目。

 カインズが言いがかりをつけてうやむやにしようとしているという可能性。

 カインズは事前に俺の質問にに対する解答を用意していた。過去が改変されたこの世界で俺は闇商人と接触していない。だから、カインズは俺がゴブレイさんからもしくは陽菜さんから情報を得たとしか考えられていない。その二人に対する情報管理には自信があるのだろう。

 そこで俺にこれ以上の詮索をやめさせるべく、Cグループに手先がいたという情報を渡し、ここで譲歩しろという意思を示している。だが、これが正しいとすると、最初にオーラがバカなふりをしたのも演技だということになる、しかしそのような様子は感じられなかった。それに、今の状況が訪れるとカインズが予想できたとは考えにくい。カインズからネオゴブリンロードの話を切り出したならともかく、その話を切り出したのは俺だ。

 初回の会談。それも仲良くしていこうという話の流れの中での質問だ。いままで嘘松王国に対してカインズは慎重に動いている。ほとんどの条約も嘘松王国が有利になるような条件で結ばれている。そんな相手に、しかもよくわかっていない俺と文香に対していきなり仕掛けてくるのは得策とは考えられない。つまりこの一つ目の考えは可能性として低い。


 二つ目の可能性。

 本当に俺とカインズの知らない何者かが存在している可能性。

 Cグループの中、もしくはゴブリン達と結託している何者かが計画的にカインズの蠅の王計画を阻止すべく行動した。

 そして、闇商人としてグレーテルを活動させたあと、何かしらの方法で始末した。

 今までの感じからオーラは本物のバカのように思える。だから仲間の名前も言ったし、何も知らないから怒っている。

 そういうことを考慮するとこれが正しい気がする。近い考えとしてカインズの手先が裏切ったというのもあるが、ここにいる人物たちのカインズに陶酔しきった様子を見る限りその線はなさそうだ。


「本当に何も知らないんだな?」


「知りません。そもそも知っていたのなら自分に不利になるようなことを聞かないはずでは?」


「そうだな。もしかしたら我々の知らない何者かが裏で動いているのかもしれない。イキリト、あいつが何か噛んでいるという可能性も考えられる。最近は活発に行動しているみたいだしな」


「誤解が解けたなら何よりです」




「先ほどは私の部下が悪いことをした。代わりと言っては何だが良い情報をあげよう。いま現在嘘松王国は隣の豚の国に宣戦布告をされている、そうだろう?」


「よくご存じで」


「トルキン公国はなろう王国の傀儡かいらい国家だ。今回の宣戦布告はイキリトの指示で行われている。この情報は確実なものだ。私のギフトを知っているなら私がそのような情報戦に強いということがわかるだろう? このことは心に留めておくといい。もしなにか不都合がおきたなら私の国を頼ってもらっても構わない。ユグドラシル連合は嘘松王国を同盟に加えることを望んでいる。貴様が望むならその戦争の手助けもしよう」


 確かに絶対的な洗脳能力があれば、機密情報なんて簡単に知ることができるだろう。


「素敵な提案だと思いますが、今は保留にさせてください。国民も混乱すると思いますし、まだ私自身諸外国との関係について詳しくないので。いまは現状維持でいきましょう」


「わかった」




 その後は当たり障りのない会話が続いた。

 既に知っている西大陸についての情報や、ヘルヘイム帝国の歴史などについてだ。

 カインズが4人目になって話がひと段落したとき、彼は「そろそろ時間だ」といって立ち上がった。


「ありがとう。いい話ができたよ。そうだ、最後に友好の証としてプレゼントを贈りたいと思っているのだがどうだろう?」


「どんなプレゼントですか?」


「西大陸の技術を渡したい。具体的にいえば私の配下にいるドワーフを数名そちらの国に贈ろうと思う」


 明らかな罠だ。だがこちらにも考えがある。


「それに対してのお返しには何をすればいいですか?」


「礼はいらんよ。プレゼントだと言っただろう?どうしても礼をしたいというなら拒みはせんが。ドワーフはできるだけ早く送ろうと思う。確か、嘘松王国では他国の者が入国するとき許可が必要だったはずだ。その辺の手配はよろしく頼む」


「わかりました。今日はありがとうございました」


「こちらこそ。また会えるのを楽しみにしている。『早すぎた埋葬』」


 カインズがスキルを発動すると、床に寝ころんでいた3人が起き上がる。4人目の男の顔も無表情になっていた。既にカインズの意思はそこにはないようだった。


「失礼しました」

 オーラがそういって部屋を出ていく。アンデット達も続いて部屋を出る。


 こうしてカインズとの最初の会談は終わった。




 ***




 会談の後、一つだけ気になったことがあったので文香に質問をした。


「オーラの言っていたグレーテルという名前。闇商人の本名なんだろうけど、そのグレーテルという名前自体にどこか聞き覚えがある気がする。文香はこの名前を聞いて何か思い出すことは無いか?」


 俺と文香の知識の量は同じ。しかし文香の方が情報を思い出すのは得意だ。


「グレゴール・ザムザの妹って言えば、あなたはわかるでしょ?」


「あぁなるほど。思い出したよ」


『ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた。』


 誰もが知っている一節。フランツカフカの『変身』。


「今の文香の話を聞いて、確信を得た。ありがとう」


 裏で絡んでいたのは闇商人だった。ヘルヘイム帝国の全貌が見えない以上警戒しておくに越したことは無さそうだ。

次回は新キャラめっちゃでます。お楽しみに


気にってもらえたらブクマ、評価、感想などお願いします。


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