八咫鏡ー3 新王誕生
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『IQ250の天才詐欺師が、異世界転生者から【最強の武器と能力】を奪い取り、家族の復讐を果たすために、世界の全てを欺く物語』
https://ncode.syosetu.com/n9099fr/ (8/18追記)
俺は十六夜に向けて魔導銃を構える。
「何を言っている?今までの話で私は嘘をついていない」
「とぼけるな!お前は、カインズに媚びを売るためにゴブレイさんを犠牲にしたんだろう?本当のことを言え!」
「すまないが、話の筋がわからない。ちゃんと説明してくれないか」
「この期に及んでとぼけるつもりか!? 裏もとってある。俺はお前がゴブレイさんに何をしたか知っている」
「私は何も知らないし、嘘はついていない。さっき話はしただろう?『クトゥグアの炎』は私が解除しなければ止まらない。私は国を託すために、死の間際、炎を消した。これが私の話が真実である保障になるはずだ。そもそも死んでいる私が嘘をつくメリットがない」
「どうせ、全部嘘なんだろう?お前は国のためなら平気で犠牲をいとわない最低のやつなんだ!」
「あなた、落ち着いて」
文香が俺をなだめる。
「落ち着いていられるか! こいつはゴブレイさんを苦しめたのにそれを無かったことにしようとしているんだぞ!?」
「今のあなたは冷静じゃないわ。あなたらしくもない。私は、いままで彼女の説明を聞いてきて、彼女が嘘をついてるようには見えなかった。話の筋もちゃんと通っていると思う。ゴブレイさんの件は他の理由があるかもしれないじゃない?まずは話をちゃんと聞きましょう。それから考えれば大丈夫だから」
文香の話を聞き、ようやく自分は我を取り戻す。
頭の中にはゴブレイさんの最後の笑顔が浮かんできた。
「主人に代わって、私が質問しますね。あなたはゴブレイという冒険者を知っていますか?」
「知らない」
十六夜は答える。
「じゃあ一連の事件について説明しますね。ゴブレイさんはゴブリン討伐を専門とする冒険者です。
この前、バビロン周辺で、ネオゴブリンロードという新種のゴブリンが発生し、緊急クエストが発令されました。その裏にはカインズが絡んでいたという情報を私たちは持っています。カインズの本当の目的は、ネオゴブリンロードではなく、ゴブレイさんを蠅の王にすることでした。そのために、彼は魔導書の力によって屍食鬼にかえられています。そして、その魔導書を渡したのがあなただと、彼の手記には書かれていました」
「身に覚えはない」
十六夜は断言をした。
冷静さを多少取り戻した俺は口を開く。
「だが、手記にはそう書かれていた。そして、そのことを闇商人という情報屋に聞いて裏をとった」
「闇商人か。そいつに関しては名前くらいは知っておる。狐狩りを行ってる連中の一人だろう。そいつが嘘をついたという可能性は?」
「それはない。根拠はないが断言できる」
「根拠はない、か。まあいい。今はそこを責めても仕方がない。手記は直接渡されたのか?それが偽物である可能性は?」
「どんな理由で書き換えられたんだ?」
「私をおとしめるためということになるな」
俺はしばしの間、手記が書き換えられたという可能性を検討した。だが、その可能性は限りなく低いことが分かった。
「手記が書き換えられたという可能性は低い。今、思い出したことだが、彼は緊急クエストの前、楓さん達に気をつけろといっていた。これはお前がゴブレイさんに魔導書を渡してから、彼は妖狐全体を警戒するようになったからだと考えられる」
「そうか。ならその線はなくなるわけだ」
「十六夜さん、あなたがカインズに洗脳されたということはないかしら? 記憶を変えられたとかでも説明はつくはずです」
「その可能性も低いな。もしそんな能力を奴が持っているのなら、嘘松王国は既に崩壊している。幾らでもそのチャンスはあったからな」
沈黙が訪れる。
「文香はさっき、十六夜が嘘をついていないと思うと言っていたな。それはどうしてだ?」
「根拠はないわ」
「俺と同じか。だが、言っていることはわかる。俺も根拠はないが十六夜が嘘をついているとはさっきまで思っていなかった。だからこそ嘘をつかれたという裏切りが余計に俺を駆り立てたというのもある」
「闇商人も嘘をついていなくて、私も嘘をついていないとするとどうなる?」
十六夜が言う。
その言葉に俺は少し違和感を感じた。
何かわかりそうな予感がする。俺はスキルを使用した。
「『The Great Gatsby』」
超集中状態で俺は様々な可能性を考慮していく。
闇商人も嘘をついておらず、天狐も嘘をついていないとしたら、どうなるか。
実時間にして数秒の時間が経過する。そして俺はある答えを導き出してしまう。
「まさか、俺は勘違いをしていたというのか?」
「どういうことなの?」
「闇商人がゴブレイさんに魔導書を渡したと考えれば全て説明がつく。闇商人は見た目を変える能力を持っている」
全てが、それで説明されてしまう。
この結論にたどり着いたとき、頭の中に様々な場面がフラッシュバックした。
***
「闇商人さん、あなたの情報には不可解な点がありますね。今の話ぶりだと、ゴブレイさんはカインズに利用されていた。強力な蠅の王を生み出す条件に、対象の屍食鬼化というのも含まれているのでしょう?
しかし、ゴブレイさんに『屍食鬼写本』を渡したのは十六夜天狐です。カインズではありません」
「お客様方は嘘松王国の目的についてどこまで知っていますか?」
***
この時、闇商人は文香の質問に明確な答えを出していない。それどころか論点をずらしているとさえいえる。
***
「ゴブレイさんは、あの十六夜天狐から貰ったらしい。これは彼の手記に書いてあったことだ。
どういう経緯で貰ったかの詳細は知らない。天狐はゴブレイに力を与えるといって本を渡した。俺の知っている話は以上だ」
「なるほど。どうやら本当に嘘はついていないようですね。そして情報の価値も高い」
***
俺が嘘をついていないとわかったのは、彼女自体がゴブレイさんに魔導書を渡したからだ。彼女は十六夜天狐の姿になり、ゴブレイさんに魔導書を渡していた。
ネオゴブリンロードについて既に知っていたのも、Cグループにウルデミゴスがいたと知っていたのも、
あいつがCグループでウルデミゴスと一緒にいたあの冒険者だったとすれば説明がつく。
大体、俺たちがいなかった場合、Bグループはどうやって処理されていたのか考えればこの答えはたどり着けたはずだった。
あの時の俺はウルデミゴスが直接処理でもするんだろうと考えていたがそうではなかった。
Aグループは西側の毒でゴブレイさん以外を殺す。Cグループは直接殺し、死体を偽装する。
そして、Bグループはファイズのメンバーに処理させるつもりだった。あいつらを誘導できたのはただ一人。闇商人だ。闇商人が狐狩りについて助言すれば、あいつらは何も考えずに実行してくれる。
つまり、俺は最初から勘違いをしていた。
「じゃあ俺は、勘違いで罪のないあなたを殺したというのか......?」
十六夜天狐を最初に選んだのには理由があった。俺は人を殺すのには理由が必要であることを知っていた。
普通の人間は理由なしに殺人なんてできない。できたとしても精神が壊れてしまう。
ファイズを殺した時に罪悪感は全く感じなかった。だが、ゴブレイさんは違う。
彼を殺した時のトラウマが脳をこびりついて離れない。1か月半が過ぎた今でも、ゴブレイさんを殺した時のことを思い出し、飯が喉を通らないこともあった。ゴブレイさんを殺した時の、あの引き金の重さが、最後に十六夜天狐の腹に撃ち込んだ時の引き金と重なり、俺は吐き気を催す。
「違う。俺じゃない!俺は悪くない!勘違いだったんだ。悪気はない。俺は、俺は悪くない!!」
余りの絶望に俺は頭を抱える。
「大河よ、落ち着け。何があったかは知らないが私はお前に殺されることを恨んではない。お前の目的は妹を救うことだろう?そのために必要だった行為だ。悔やむことは無い」
「それでも俺は罪のない人間を殺したんだ!」
俺は訳が分からなくなり、魔導銃を自分の頭に突きつける。
「あなたやめて!」
文香がそういって、俺の手から魔導銃をはねのける。
「今死んでも何もないわ。一度落ち着きましょう。ね?」
文香は後ろから、俺に抱きついた。
数十秒の沈黙。
文香の優しさが直接伝わってくる。
俺は文香に感謝を述べ、十六夜の方に向き直る。
「文香、ごめん。ありがとう。十六夜、迷惑をかけた」
「もう落ち着いたか?」
「そう簡単に割り切れるものでもない。だが、この痛みから逃げても仕方がない」
俺は真っすぐと相手の目をみていう。
「十六夜陽香さん、俺はあなたの罪の償いがしたい」
「償いか。じゃあ一つ頼みごとをしよう」
スッキリとした笑顔で天狐は答える。
「私の姉を救ってやってほしい。嘘松王国を守ったうえで、お前らの目的も果たす。その上で、可能だったら私の姉を救ってほしい」
「わかった。お姉さんの名前を教えてくれ」
「十六夜千尋。大切な私の姉だ。よろしく頼む」
「了解した」
鏡の中の天狐が後ろの炎を見る。部屋は徐々に暗くなっていた。
「そろそろ時間だ。私はこれからお前らに会いにいかなければいけない。
それに先立って、最後に頼みがある。この鏡を破壊してくれ。残しておいても意味がないし、万が一のことがあったら大変だからな。色々話せてよかった。嘘松王国は頼んだぞ」
十六夜がそう言い残すと部屋の明かりは消えた。
***
俺と文香は部屋を出る。
部屋の外では楓さんが待っていてくれた。
「大河様、文香様、もう外に国民が集まっております」
「楓さん、最初からそのつもりだったんですか?」
「勿論です。あの日から次の国王はあなた方しかいないと思っておりました」
楓さんに誘導され、城の上の階にいく。
「ここから広場が見えます。国民は皆、新しい王の登場を待ちわびています」
俺と文香が登場した瞬間、歓声があがる。
「我らの新しき王、川霧大河様と文香様に盛大な拍手を!」
楓さんがそういうと、盛大な拍手と共に、俺たちは4代目天狐として迎えられた。
2章完結。
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