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八咫鏡ー1

 俺は鏡の十六夜に向けて魔導銃を構える。


「まて、冒険者。そんなことをしても意味がない。今お前がここにいるということは既に私は死んでいる」


「説明しろ、十六夜」


「この鏡は八咫鏡やたのかがみという神器だ。過去と未来を繋ぐことができる。本来は八咫鏡一つではこの機能は使えないが、スキル『狐火きつねび』を使うことで鏡の能力を応用して使っておる」


「タイムパラドックスはどうなる?」


「そうだな。この状況は正に典型的なタイムパラドックスだ。私が未来を知り、死ぬのを避ければ、お前たちはここに映らない。お前たちが映らなければ私は未来を知ることができない。そうすると私は死ぬ。よくある問題だ。だが、このパラドックスはいくつかの抜け道がある」


「パラレルワールド、ですか?」

 文香が答える。

「あなたが死ぬ世界と、生き延びる世界、この二つの世界が並行で存在できるとするならば、タイムパラドックスは解消されるはずです」


「確かにその仮説も現実的だ。しかしそれは正解ではない。パラレルワールドは存在しない。もう一つの可能性がある。そうだな、ヒントを与えよう。確定した過去が変わることはない、というのは事実だ」


 俺はしばしの間、思考する。そしてそれらしい答えを見つける。


「過去の記憶を消すのか?」


「正解だ。お前は頭がきれるようだな。お前の言う通り、私はここで話した内容を保持することができない。部屋を出た瞬間、私がこの部屋で過ごした瞬間の記憶は完全に消される」


「確かにそうすればタイムパラドックスは起きない。だが、何故そんなことをする必要がある?」


「天狐の座を引き継いでもらうためだ。私も先代の天狐から同じようにして王の座を引き継いだ」


「待て。話が見えない。俺が天狐の座を引き継ぐと思っているのか?」


「その通りだ。お前にはその責任がある。今の現状を知っておるだろう?カインズとイキリトのせいでこの世界の状況は不安定になっておる。西と東をつなぐこの国の重要さはお前にもわかっているはずだ。確かに、妖狐という種族は強い。私がいなくなっても周辺諸国に侵略されるということはないだろう。しかし、他の転生者が襲ってきたらこの国は成す術がない。私を倒すほどの実力を持つものがいるとするならば、それは間違いなく転生者だ。カインズとイキリト以外の転生者以外ならば、この国を託すことができるかもしれない。そのための保険がこの鏡だ」


「俺にはこの国を背負って立つなんてことはできない」


「お前は国民がどうなってもいいのか?妖狐の身体はそれだけで大きな価値がある。尻尾を狙って非道な行いをするような連中がこの世界にはいくらでもいる。国が占領されたら、多くの国民が虐殺され、ゴミクズどもの性欲を満たすための道具として扱われ、最後には殺される。お前はこの国の人々を見殺しにするつもりなのか?」


 俺はあの時のファイズの声を思い出す。あのニヤついていた顔が脳裏に激しい怒りが湧いてくる。

 意を決め、文香の方を見る。文香は頷いてくれた。


「わかった。その仕事を引き受けよう。今日から俺が国民を守る」


「よくぞ言ってくれた。冒険者よ。そうだ、すまないが名前をもう一度教えてもらえないか?」


「川霧大河だ」


「川霧文香です」


「同じ苗字か。兄妹なのか?」


「夫婦です」

 文香が即答する。


「なるほどな」

 十六夜は頷く。


「そういえば俺はお前の本名を知らない。本名はなんて言うんだ?」


「私の名前は十六夜いざよい陽菜はるなだ」


「どうして天狐と名乗ってたんだ?」


「この国を守るという責任を果たすためだ。あの人に国を託された時、私もお前と同じような気持ちだった」


「十六夜、今までの話の中で3つ質問がある。してもいいか?」


「そうだな。私も質問したいことがいくつかある。本題に入る前に軽く話をするのはいい提案だと思う。

 交互に質問をしあうというのはどうだ?」


「わかった。まずは俺からさせてもらう。一つ目の質問だ。お前はどんな理由で先代の天狐を殺したんだ?」


「私は元々彼女を殺すつもりはなかった。私のギフトは知っているか」


「知っている。【すべてがFになる(オール フィクション)】。コピー能力だろう?」


「そうだ。私はその能力で彼女のギフト、【宵山万華鏡よいやままんげきょう】をコピーしたかった。私は力を求めていたからな。私の【すべてがFになる(オール フィクション)】は相手の能力を直接視る必要がある。だから彼女に決闘を申し込んだ。転生者の私が彼女に負ける可能性はまずなかった。私は彼女のギフトだけをコピーし戦闘を終わらせようと思った。

 しかし、彼女は強かった。私に勝てるほど強かったわけではない。だが、私が本気を出していないことを見抜けるくらいのレベルにあった。妖狐は誇り高き種族だ。そしてその長、天狐ならばプライドも並大抵ではない。彼女は私が本気の力を出すことを望んだ。例えそれの意味することが死であると知っていても彼女はそれを望んだのだ。だから、私は彼女の期待に応えた。

 鏡で出会った彼女は満足した顔で私に国を託した。その日から私は十六夜天狐として生きることになった」


「どうしてその話を楓さん達にしなかった?」


「楓と紅葉は才能を持っている。だから外の世界について知ってほしかった。復讐心は何よりも人を成長させるものだと私は思っている。だから彼女たちの前では悪者として生きることを選んだ」


「そうか。では、お前の質問も聞こう」



「私はお前との戦いで黒い炎を使ったのか?」


「あぁ。使った。それには苦戦させられた。ちょうど俺もそれについて聞きたかった。あの技は何だったんだ?」


「そうか。使ったのか。それなら悔いを残すこともあるまい。あれが私の最後の切り札だ。名前は『クトゥグアの炎』という。触れたものが燃え尽きるまで消えない、闇の炎だ。そうだ。いいことを教えよう。クトゥグアの炎は使用者が死んだところで消えない。つまり、私は死ぬ前に意識的にお前の炎を消したということだ。無論、それはお前に国の未来を託すためだ。この事実も是非私のこれからの話の信頼に当ててほしい」


「そうだったのか」

 死を直前にしながら、自分を殺す相手を憎むことなく、国の未来にかけて火を消すという行為は俺には到底できるものとは思えなかった。


「あれを使うと、私の防御が一時的にゼロになる。その瞬間をついてお前は勝ったのか?だがどうやって?

『クトゥグアの炎』を使うということは『THE() ()WORLD(ワールド)』も使っているはず。危険があれば感知できるはずなのだが」


「ああ。その通りだ。俺はそのチャンスを利用した」

 俺はアンリミテッドノートブックスを取り出す。

「このメモ帳は天使に貰ったものだ。このメモ帳に文字を記すとき、透明なペンが作られる。そのペンを俺はユニークスキル『ペンは剣よりも強し』で投擲した」


「ほぅ。神器か」


「それについて聞きたい。神器とは何なんだ?それと、八咫鏡やそれを使うためのスキルについても説明してくれ」

ブクマ、評価本当にありがとうございます。


あと少しで100pt超えそうですね!

このまま伸ばし続けたいと思います!!

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