VS 十六夜天狐ー5
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文香に起こされて俺は目覚める。
アンリミテッドノートブックスを開き、死亡数に棒を加えていく。
13個の「正」、今日は65回目の朝だ。目の前に浮かんでいるスキルをいじる。既に答えはできている。
朝食を食べ、文香に作戦について話す。
流石にここまでくると話すことも多くなり、説明をし、文香の理解度の確認をするのに2時間の時間が費やされる。
「おそらく、あと1、2回の内に戦いが終わると思う」
そういって終わった後の行動について文香と確認する。
十六夜天狐を倒した後、俺たちはオークの国のさらに奥にある人間の国に逃げる計画をしている。
あとの嘘松王国については楓さん達が処理してくれるらしい。
***
ドメル平野に立つ2人の影。大河は文香に具体的な位置取りと、魔法の最終確認をしている。
ざわざわと木々が揺れ、一陣の風が吹き抜ける。
同じ時間。同じ風。何十回と体験したこの突風に大河は吐き気を催す。幾度と繰り返される死に戻りは着実に大河の精神を蝕んていた。
「あなた大丈夫?」
「大丈夫だ、問題ない。この悪夢はもう終わらせよう」
そろそろか、と大河は呟き定位置に着く。何十回も実験した結果に導いた位置だ。
十六夜天狐が現れると、大河は魔導銃を引いた。
銃声に反応をして、天狐は素早く後ろに下がる。
「なんだ?」
天狐は相手を視認する。
「あの冒険者か」
天狐の側近二人は背後からの襲撃にそなえ後ろを向く。
「まずは小手調といこう」
天狐の5本の尻尾が大河に向けられ、魔法が発射される。
計30発の魔法。
大河はまるで魔法の軌道を先読みしたかのような動きで、さばいていく。
炎の力がエンチャントされた大河のナイフは上手く使うことで魔法を打ち消すことができる。
文香が魔法で撃墜した魔法は5発。他は魔導銃とナイフで撃ち落とされたか、躱された。
「なかなかやる」
天狐は目の前の敵に少しの期待を募らせる。
「『A Study in Scarlet』」
周囲に目の前の二人以外の敵がいないとわかると、天狐は緋の目を解除した。
「「魔法の話する?」」
天狐と一人の分裂体は『Plausible Story』を発動する。その時、文香は指示通りに魔法を発動し始めていた。
そして、7本の尻尾が大河に向けられ、魔法が発動する。
105発の魔法。文香の目の前には30のマジックシールドが展開されている。
それらは全て文香に向けられる魔法の順に並んでいる。つまり、《レリギアス・マジックシールド・トリプル》を使ったときよりも魔力が節約されている。
大河の目の前にも60のマジックシールドがあった。これらも文香の者と同様、順番どおりに完璧に並んでいる。
これら90のシールド全てを展開したのは文香だ。全てオーバーマジック。流石の文香でもこれらをして残る魔力は6割しかない。
「『The Great Gatsby』『A Study in Scarlet』」
文香は打ち合わせ通り、スキルを使用する。
これらのスキルの補助があれば、文香も大河と共に魔法の撃墜に参加できる。
100発の魔法が大河と文香に到達することなく消えていく。
最後の5発のうち2発は大河がナイフでさばく。残り三発のうち二発は躱され、1発が大河に被弾する。
だが、それすらも全て大河の計算だった。この最後の一発に当たるというのはゲームでいう乱数調整のようなものだ。
最後の一発を被弾することで、大河は天狐の次の行動を絞ることができた。
最後のレリギアスが大河に被弾すると大河は後ろにすこし押される。この隙を天狐が見逃すわけがなかった。
文香が『A Study in Scarlet』を使ってきたことを天狐は視認できている。つまり、相手が自分と同じ転生者であるということ天狐は理解していた。
天狐は敵への警戒レベルを引き上げ、分裂体に指示を出す。
それから4本の尻尾になった分裂体が【拍手喝采】をする。
「【すべてがFになる】」
ギフトでそれを自分のスキル欄に加える。そしてスキルを使用し終わった分裂体を吸収し、魔力を全快まで回復する。
天狐の身体には九つの尻尾がある。九尾。十六夜天狐の真の姿だ。
天狐が一連の動作を終えたとき、目の前には既に大河が迫っていた。
《身体伸縮化》《身体強化》《部位硬化》《反応速度強化》《エンチャント:火》《エンチャント:水》《エンチャント:雷》。天狐は無詠唱で素早く自分自身にバフをかける。
中距離を保ちながら5本の尻尾を自在に伸縮させ、鈍器として振り回す。5本の尻尾で近接をし、残りの4本で中距離から魔法を放つ天狐の戦法。
滅多に使うことがない戦法ではあるが、その動きは手慣れている。5つの尻尾を使った素早い攻撃。しかし、攻撃は全て見切られる。
攻撃がまるで全て予測されていたような大河の動きをみて天狐は動揺した。
こいつのギフトは相手の心を読む、もしくは近い未来をみることができるといったものかもしれない、と天狐は考える。
大河が距離を一気に詰めてくる。4本の尻尾で魔法を撃ってけん制するが、その魔法は文香の援護によって大河の元には届かない。
「『菊と刀』」
大河の懐に刀が現れ、大河は居合いを放つ。
ひゅっ。
刀が素早く天狐をかすめ、ダメージを与える。
天狐は右後ろに飛ぶが、まるでそれを知っていたかのように、大河も一緒に天狐と飛ぶ。
ひゅっ。
天狐の右腕に深い切り傷ができる。
まずい、あれを使うしかない。そのためには距離をとらなければ、と天狐は考える。
《跳躍強化》を使用し、天狐が後ろに大きくバックステップをする。
《ウィンドウ・ウォール》。
天狐は土属性の魔法で見えない壁をつくる。
それを知っていたかのように大河は天狐を追わない。
天狐は大河が追ってこないのを確認すると、9本の尻尾を全て前方に向ける。
《オーバーマジック・レリギアス・フレイム》。
天狐の切り札の内の一つ。ただの魔法ではない。【Plausible Story】とオーバーマジックを併用し、威力を高めたこの魔法は全てを破壊する。
その魔法は、1発だけでも消費魔力は通常の100倍だ。それが9本の尻尾から同時に発射される。
弾の発射というより、それは爆発に近い。魔法の強化は加算的に行われるとはいえ、その威力は絶大だ。
その純粋な威力は『檸檬』よりも高い。これが天狐が『檸檬』をスキル欄にセットしていない理由だ。
レリギアスフレイム900発分の魔力消費で天狐の残り魔力は空になった。
「『菊と刀』」
大河がスキルを使用し、刀は再び菊になる。
そして、大河は魔法を使う。
《オーバーマジック・フラワー・アイギス》
光属性のオリジナル魔法。魔法は、魔法式さえできれば発動することができる。大河にとって時間とは無限に等しい。大河は死に戻りを繰り返す中で、対天狐用の魔法を作り出したのだ。
菊は巨大な薄紫色の盾となり、大河を魔法から守る。
バーン!!!
凄まじい衝撃。大河はじりじりと後ろに押されていく。
パリン!
高い音を立て、フラワー・アイギスは破壊される。
しかし、魔法は大河には届かない。文香の発動したシールドが大河を守ったのだ。
文香は大河のみを守る魔法の発動を最後に、魔力が尽き、その場に倒れた。
大河はトリガーを引く。
バン!バン!バン!
3発の弾丸が、天狐に当たる。
身体にぶつかった弾は崩れて消える。しかしダメージは天狐に通っている。
天狐は決断をする。
同時に、大河もあるスキルを発動する。
天狐は切り札を発動した。
「『THE WORLD』」
世界の、時が止まった。
次の話で最初のボス編は完結です。その後はボーナス回を1話挟み、伏線回収をしていきます!
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