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楓の本名

 楓さんの家は都市部にあった建物とは全く別の雰囲気の建物だった。

 和風の巨大な屋敷。庭には遣水もある。家に近づくと、赤い光が一人でに前に進み、家の方からやってきた青い光と衝突すると淡い光を放って二つの光は消えた。


 玄関先で皐月さんが出迎えてくれた。家の中は土足禁止らしい。


 通された部屋では既に料理が用意してあり、楓さんたちは既に席についていた。

 楓さんが軽く話をしてから、みんなで料理を食べ始める。


「とてもいい屋敷ですね。俺たちも将来こういう屋敷に住んでみたいです」

「最近は、こういう屋敷は少なくなりました」

「すみません、単刀直入に質問しますね。楓さんはこの国でどういった地位についているんですか?今日の授賞式でも前のほうにいらっしゃいましたし」

「今となっては私と紅葉はただの気孤ですよ」


「私と皐月はただの妖狐」

 朱莉さんが言う。


「妖狐にも種類があるとは思いませんでした」

「まあ、外の人間からしたら私たちは全員妖狐でいいわけですし」

 皐月さんが言う。


 文香が嘘松王国の地位について詳しく聞きたいというと、彼女たちはそれについて話してくれた。


 一番偉いのは天狐。どうやら十六夜天狐の「天狐」というのは本名ではなく通称で、本人がそれを気に入っているため使っているだけだという。

 天狐は嘘松王国では絶対的な支配者であり、地位についても天狐の決定が全てだという。だが実際上は地位についての審査を別の機関が行い、天狐はその承認をしている。

 だから今回の俺と文香のように天狐が自ら地位について決定を行う例は非常に珍しく、嘘松王国でも俺たちのことは話題になっているらしい。

 天狐の次に偉いのは空孤だ。十六夜の隣にいた二人がこれに当たる。尻尾は2本だがかなりの実力者で十六夜の懐刀だ。空孤の人数などは決まってはいないが身内の者がなる傾向がある。

 十六夜は国王になった後、直ぐに空孤にいた20名を降格させ、あの二人のみを空狐に決定した。

 そして空狐の次に偉いのが気狐。城内にいた妖狐たちは皆これに当たる。名誉嘘松王国民は気狐と同等の地位を得ている。

 最後に一番一般的なのは妖狐。いわゆる普通の国民だ。朱莉さんや皐月さんはこれに当たる。

 これらの地位は絶対的なものだが、城内や伝統的な場面のみで用いられているようなところもあり、生活するうえでこの地位が問題になることはまずないという。

 しかし、昔からの文化的な思想として妖狐には強い者が偉いという考えがあるから、上位の者は熱狂的な支持をもって尊敬される。

 外交などは全て天狐によって行われる。

 とはいっても殆ど鎖国に近いため交流は少ない。裏では何かやっているらしいがそれは噂の域をとどめない。


 昔は大きな問題であったオークの国とのいざこざも十六夜天狐が実験を握ってからは、静まった。彼女の圧倒的な強さを知ってからオークたちはおとなしくなったらしい。

 内政は天狐と空狐で行われる。内政といっても国民は研究ができる環境が整っていれば十分であるし、

 国の面積や規模、人口も前の世界でいう一つの都市レベルであり、国民は力ある者の言葉に素直であるから何一つ問題なく国は運営されている。



 話が終わること、皐月さんと朱莉さんがお皿を下げてくれた。


「なるほど。いろいろ知れてよかったです。先ほど、楓さんが今となってはと言っていたと思うんですが、前はどうだったんですか?」

 なんとなく予想はできているが、話の途中で彼女が言いたそうな気がしたので、聞いてみる。


「そうですね。助けてもらった日からいつかは言おうと思っていたんですが、なかなかタイミングが見つからず、結果的にいままで騙してしまったみたいになってしまい申し訳ありませんでした。私の本名を教えしますね」


 本名か。やっぱりこの流れだとそうなるよな。文香も大体感ずいているようだ。


「私の本名は、嘘松うそまつかえでです。初代天狐、嘘松十郎(じゅうろう)は私の祖父です」


「そうだったんですか」

 一応少し驚いた反応をしておこう。そのほうが質問もしやすいだろう。

「何か私たちに話したいことがあって呼んだんじゃないんですか?力になれることならば手助けします」

 文香が話を進める。


 一呼吸をおいて、楓は口を開く。

「私に、お二人の強さの秘密を教えてください」


「それはどうしてですか?」

 腰の魔導銃を確認しながら質問をする。


「強くなりたいからです」

「楓さんは私たちよりランクが高いはずです。今のままでも十分お強いと思いますよ」

 文香も質問を投げかける。

「私の力じゃ十六夜天狐の足元にも及びません」

「どうして天狐より強くなる必要があるんですか?」


「復讐をするためです」


「復讐、ですか。詳しく話してもらえますか? もしかしたら力になれるかもしれません」


「はい。それなら」

 と言って楓さんは話し始めた。


「私の家は代々天狐を努めていました。先ほども言った通り、この国を設立したのは私の祖父です。祖父の後をついで、私の母が2代目の天狐となりました。ところが、7年前、あの人が私たちの国にやってきて、全てが壊されました。母は十六夜天狐に決闘を申し込まれ、私たち姉妹の目の前で殺されたのです。母の復讐のために父もあの人に挑みましたが、結果は同じでした。それは決闘などというものではなく、ただの虐殺でした」


紅葉は顔を下に向けている。


「一応この国では決闘という制度は正式なものですから、私のこれはただの逆恨みかもしれません。しかしだからといって両親の死は他の妖狐のように割り切れるものでもありませんでした。

 以来、私は外の世界に力を求めて旅をすることにしました。天狐はそんな私を気にかけることはなく、相手にさえ思っていません。そんなあいつに私たちは復讐がしたいのです」


「辛い話をさせてしまいすみませんでした。少し文香と相談したいことがあるので」

 そういって俺と文香は部屋を出る。


「文香どうする?」

「最終的な決定はあなたの判断に任せるけど、私は言ってもいいと思います。何か情報も得られるかもしれませんし、倒した後のことも彼女たちにこの国を任せればスムーズにいくでしょうし」

「わかった」

 俺たちは部屋に戻る。


「楓さん、そして皆さん、今から大事な話をします」

 俺はそう切り出すとこう言った。

「俺と文香は十六夜天狐と同じ転生者です」


 それから俺は、転生者とは何かという説明をし、俺たちの最終目的が転生者の殺害であることを告白した。

 死に戻りについてまでは話さなかったが、文香のジョブスキルや、その他の強力なスキルのことは話した。


「十六夜天狐は俺が始末します。そのための情報を俺と文香に教えてください」


 皐月さんと朱莉さんは俺たちの話を完全に納得したようではなかったが、楓さんは十六夜天狐の実力の片鱗をみたこともあり、驚きつつも受け入れてくれた。


***


 それから数週間が過ぎ、遂に作戦を決行する日が来た。

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