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嘘松王国への誘い

「お久しぶりです。楓さん身体の調子はあれからどうですか?」

「本当にあの節はありがとうございました。身体はもう大丈夫です」


 闇商人の話を聞き、リセットした日は文香と久しぶりにデートをした。翌日は十六夜天狐戦に備えて、武器や防具の新調をして過ごした。ゴブレイさんに影響されて俺は鍛冶屋で一番高価な刀を購入してみた。すると新しいスキルが追加されていた。それらを一通り試した後、刀は十六夜天狐に対しても有効な武器であるだろうと判断できた。

 そして今日、俺と文香はある酒場に訪れた。楓さんと近況報告をするためだ。


「何か大事なお話があると聞きましたが、その前にCグループの行方について聞いていいですか?」

「そうですね。ではその話から始めましょうか。Cグループの探索にはマジックスフォックスのメンバーで行いました。結論から言うと、Cグループは全滅していました」

「全滅、ですか」

「残念ながら」

「それじゃあやっぱり私が処理したゴブリン達はCグループが取り逃した奴らだったんですね」


 文香は俺と別れ、楓さんたちを宿に運搬する際に、ゴブリンの群れと遭遇した。

 ネオゴブリンと40体のゴブリンシャーマンだったが、文香の圧倒的な火力の前では敵ではなかったようだ。

 念には念を入れ、まだ使用していなかった『The Gre(グレート)at Gatsby(ギャッツビー)』を使用し、一匹も取り残すことなく処理したらしい。


「そうみたいですね。文香さんと大河さんのお陰で私たちの任務は完全達成されました。この世からネオゴブリンは消えたのです。それだけでなく、あの日以来、ゴブリンの目撃報告は今だありません。もしかしたら本当に彼の夢が実現したのかもしれませんね」

「あぁ。そうだといいですね」


 俺はゴブレイさんのことを思い出す。

 あの時引いた引き金の感覚がいまだに忘れられない。いつもとは違う、重たい感覚。

 俺は自分の手でゴブレイさんを殺したんだ。俺が感傷に浸って黙っていると、文香が代わりに大事な質問してくれた。


「Cグループの死亡状況について詳しく説明してもらえますか?」

「死亡状況ですか?そうですね。彼らは小さい広間で発見されました。全員焼死です。シャーマンの魔法による弾幕攻撃があったのではないかと私は考えています」


「死体の損傷はどうでしたか?顔は確認できましたか?」

 文香が質問を続ける。

「顔は確認できていません。皮膚が溶けていました。しかし、装備品から身元の確認はとれています。死体の数も一致していました。残念ながら、誰かが生き残ってるというような可能性はないと思います」



 皮膚が溶けていて顔の確認はできていない、か。ビンゴだな。ウルデゴミスは別の死体を用意して偽装したんだろう。俺の上位探知は自分が敵と認識している者にしか反応しないし、高度な隠密系のスキルをされていたら探知できない。

 少なくとも『A Study(シャーロック) in() Scarlet(ホームズ)』を使ったときに人影はなかった。時間的に考えて『檸檬れもん』が見られていたとは考えにくいが、警戒はされているはずだ。



「生き残ったのは俺たちだけでしたか......」


「.......別の話をしましょうか。以前から申し上げていた大事な話についてです」

「お願いします。どんな内容ですか?」


「大河さんと文香さんが狐狩りから私たちが救ってくれたということを国に報告しました。現国王の十六夜天狐様はそのことに関して大いに感心なさりまして、お二人に名誉嘘松王国民の称号を与えたいとおっしゃいました」

「名誉嘘松王国民?それを受け取ることはどういう意味をもつんですか?」

「国王の絶対的な決定権によって選ばれるのが名誉嘘松王国民です。なられた方は我が国の国民として扱われます。つまり、無期限での入国が可能になります。歴代でその称号を受けっとたのは十六夜様以外にいません」


「十六夜さんは元々嘘松王国民ではなかったんですか?」

「えぇ。彼女は妖狐でありながら外から来た異質の存在です」

「なるほど?彼女はどこから来たんですか?他の妖狐の国の噂などは聞いたことがないので」

「少なくとも東大陸では嘘松王国以外の妖狐の国は確認されていません。妖狐の里というものも存在しますが、しかし、そこに若い妖狐はいないはずです」


「どうしてですか?」

「知的好奇心とエネルギーに満ちた若い妖狐は魔法の研究に興味を持ち、日々、魔法の実験や理論の構築を繰り返します。別に法律で禁止されているわけではないのですが、人口が少ないおかげで環境も整っている自国の外に、わざわざ出ようと思う者は少ないのです。歳を重ね成果も上がらなくなった妖狐はその時になって初めて魔法以外に興味を示し始めます。そして、その世界を見るために国を抜け、自分たちの里を作る。私たちみたいに若くして外の世界に興味を示す者はごく少数です。外部との交流が少ないため外の世界の情報も集めようにも集められない状況に嫌気がさして私は冒険者になりました。幸いなことにバビロンは我々を拒まず、平等に扱ってくれました。元々戦闘民族だった妖狐は高いステータスを持ちますし、尻尾や魔法知識は強力な武器となりました。それらのお陰で私たちは冒険者として今日まで生きていくことができたのです」


「名誉嘘松王国民になると何か義務は発生するのですか?」

 文香が問う。

「義務はありません。入国の権利が得られるだけです」


「だったら快く受け取らせてもらうことにします」

「ありがとうございます。でしたら、5日後に予定を開けてもらえますか?王国で授賞式が開かれます」

「そこに十六夜天狐は出席しますか?」

「国王も出席します。詳しい日程と場所については後日お伝えしますね。前日にはあの宿をお使いください」



 その後は楓さんと他愛もない話をし、解散した。

「ついに私たち以外の転生者と会うわけね」

「そうだな。いきなり攻撃を仕掛けるつもりはないが警戒しておいたほうがいい。罠という可能性もある」


 5日が過ぎ、俺たちが十六夜天狐と対面する日がやってきた。

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