闇商人ー3 深きものどもとルルイエ
伏線と伏線。
タイトルを少し変えてみました。
俺はアンリミテッドノートブックスを取り出し、例の怪物の似顔絵を描いたページを開き闇商人にみせる。
「この怪物について何か知っていることはないか?」
「インスマス面?あるいは......」
闇商人が驚いたようにつぶやく。
「もう少し具体的に言ってもらえれば答えられると思います」
「そうか。文香頼む」
文香は手をかざして、あの怪物の死体を出す。死体が現れると、嫌な魚臭い匂いがした。その顔のおぞましさをみて、闇商人は顔をしかめる。
「まさか! これはどこで手に入れたんですか?」
「その情報は高く売れるか?」
「勿論です!」
「取引成立だ」
それから俺は2年前バビロンに向かう旅路の途中で起きたことを、魔導銃の行方については曖昧なままにしておきつつも、偽りなく話した。
「そんなことが。では、私もこの怪物について知っていることを話しましょう」
一呼吸をおいて、闇商人は普段の調子を取り戻す。
「この怪物の名前は、ディープワン、もしくは、深きものと言います。しかし、正確に言うならば、身体に人間的な部分も残っているので、まだ成体になりきれていない 深きものの混血種 が正しい呼称になるかもしれません。彼らは異世界の魔物です。今までこの世界で確認されたことは私の知る限りありません」
「ならどうしてお前はそのことについて知っている?こいつらの目的はなんだ?どうしてこの世界に現れたんだ?」
恐らく魔導書で情報を得たのだろう。闇商人の持っている情報はできるだけ知りたい。
「私はこのことを『ルルイエ異本』という魔導書から知りました。そこには彼らの信仰する神と、その教団、彼らをまとめる上位の存在について書かれています。彼らの目的はわかりませ......いや、これは明確ですね。彼らの最終目標は信仰する神を再び蘇らせることです。そのために地上で何かをする必要があった。地理的に考えれば、バベルの塔が関連しているかもしれませんが、真相はわかりません」
「『ルルイエ異本』に書かれていたことをもっと詳しく説明してくれ。この死体を対価にしたい」
「わかりました。説明させていただきます。まず彼らの崇める神についてですが名前はわかりません。これは屍食鬼のときと同じ理由です。別名、というより役の名前に近いかもしれませんが、彼らはその神を、ルルイエの主と呼ぶこともあります。ルルイエというのは深きものどもと、その神が封印されている神殿の名前です。神殿は深い海の底にあると書かれています。深きものという名の由来はそこにあります。
彼らを指揮する怪物にダゴン、ハイドラというものもいます。父なるダゴン、母なるハイドラと言われています。明言はされていませんが、おおむね深きものどもの親なのでしょう。
ダゴンとハイドラは深きものと似たような形をしていますが、身体は深きものの数倍は大きいと言われています。深きものどもはダゴンをリーダーとし、ある組織を作っています。その名はダゴン秘密教団です。ダゴン秘密教団の目的は彼らの崇める神の復活です」
「さっき言っていたインスマス面とはなんだ?」
「インスマスはこの世界の都市の名前です。海に面したどこか物寂しい都市です。インスマスにはある都市伝説があります。それはインスマスで度々おこる若者の失踪事件についてのことです。失踪事件が起こった後、仲の良かった者の話を聞くと、失踪者はある日突然顔が魚のようになって海に向かっていったと口をそろえて皆がいうのです。その顔というのは深きものと同じ、もしくはそれに近い特徴をもつのです。『ルルイエ異本』にある深きものの混血種についての記述では、深きものと人間の間に生まれた子は生まれたときは人間の身体の特徴を持つが、成人が近づくと身体は深きものの特徴を帯びていき、最終的には人間の特徴は完全になくなるとありました。インスマスの伝承と『ルルイエ異本』に書かれていた話には何か関連があるのかもしれません」
「そうか。いろいろ教えてくれてありがとう。買い物は終わりだ」
「いえいえ。こちらこそ。お客様と良い信頼関係を築けてよかったです。私としても嬉しい情報も集まりましたし。あ、そうだ。お客様。私と握手してもらえませんか?友好の印にも」
「いや、遠慮しておくよ」
ちらっと文香の方を見る。文香は目を伏せてこちらに目を向けない。
俺が死ぬところを見たくないんだろう。俺は腰の魔導銃を取り出す。
「魔導銃ですか?珍しいものをお持ちですね。いきなり取り出してどうしたんですか?」
「いや、まあな。俺としても申し訳ないとは思っているんだが仕方がないんだ」
「私を撃つつもりですか?それならあなたはお客様ではないということになりますよ。私、こうみえても強いんです。あなたたちなら簡単に殺せるくらいには」
「争うつもりはない。正義感半分、打算的な思い半分でここに来たが、途中から狐狩りのことはどうでもよくなった。話をしてみて印象が変わったんだ。あなたがそんなことをしていることが、どうも信じられない。それでも俺がこの結末を選ぶのは変わらない。さようなら」
ひんやりとした空気が辺りを包む。
「お客様、死ぬ前に一つアドバイスをあげましょう」
突然、闇商人が話し出す。しかし、その声にはさっきまでの雰囲気は感じられない。
まるで別人になったような、そんな感じがする。
「十六夜天狐が切り札を使った直後、彼女は無防備になります。その隙を見逃さないように」
「どうしてその話をした?」
「どうしてでしょうね?」
そう言って闇商人は笑う。その笑顔は今までみたのとは違い、氷のように冷たい。
「あ、ちなみに料金はいりませんよ。これ以上答えるつもりもありません。またどこかで会える日を楽しみにしています。さようなら」
俺の指がトリガーを引く。
世界が歪み、運命が変わる。そして時は巻き戻る。
***
「おはよう文香」
「あなた。お疲れ様です」
「あれ、さっきと反応が違う。どうして戻ってきたってわかったんだ?」
「あなたたのことは何でも知っています」
照れくさかったから、俺は強引に話題を変えた。
文香のおいしいご飯を食べながら、闇商人の話と今後の予定について話し合う。
最後の闇商人の変化を話したが、結局のところ真相はわからなかった。
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そろそろ最初の転生者との熱い戦いが待ってます。ご期待ください!




