闇商人ー1 屍食鬼
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『IQ250の天才詐欺師が、異世界転生者から【最強の武器と能力】を奪い取り、家族の復讐を果たすために、世界の全てを欺く物語』
https://ncode.syosetu.com/n9099fr/ (8/18追記)
バビロンに戻った日の夜、ギルドから直々の依頼が届いた。
前回の依頼についての事後調査だ。Cグループの行方など気になる点もある。しかし、闇商人のことを優先したいため断った。
ポストには他に楓さんからの手紙があった。3日後に会おうというものだった。「是非」という内容で返信を送くると、俺と文香は闇商人の元へ向かった。
ファイズから奪った地図を頼りに目的地に着く、目の前にあるのは普通の武器屋のようにみえる。文香を後ろに待機させ、俺がドアを開く。中にはカウンターがあってその奥に一人の女が立っていた。
「いらっしゃいませ」
女が声をかけてくる。俺は辺りを見回してみるが、裏口や階段のようなものは見つからない。
「すみません、お尋ねしたいことがあるのですが」
「はい。何でしょう?」
「あなたは闇商人について何か知っていますか?」
ダメもとで聞いてみる。答えがどちらだとしても聞いた以上は一度リセットしなくてはならない。
「知っていますよ」
「それはよかった。彼がどこにいるかわかりますか?」
「わかりますよ」
沈黙。
「では、その場所を教えてもらえませんか?」
「無料で、ですか?」
「あぁ、それもそうですね」
何だこの厚かましい女は。この国にチップ制度があるとは初めて知った。まあいい。どうせリセットする。金はくれてやる。
ポケットから金貨3枚を取り出し、女に渡す。
「毎度ありです♪」
そう言って女は微笑む。
「聞かれているのは場所でしたが、全部答えてあげましょう。サービスです」
少しの間をおいて、女は口を開く。
「闇商人は私です」
その言葉に俺は少し驚く。それから改めて女を観察する。
赤茶色の短い髪に、褐色の肌。瞳の色は黄色で吊目をしていて、なんとなく猫のような印象を受ける。顔は整っている。端的に言って美人だ。身長は165くらいだろうか、文香よりは低い。手足は細いが、筋肉は十分についていて、アスリートのような体型をしている。しかし、それに似合わず胸は大きい。
「お客様、であってますか?もし違うのなら出て行ってもらいますけど」
「あぁ、それであってる」
「それはそれは。ようこそおいで下さいました。本日は何をお求めですか? うちには何でもそろってますよ。お客様は初めてですからサービスして差し上げます」
「欲しいのは情報だ」
「情報、ですか。お客様はお目が高い。どんな武器やアイテムでも情報よりは価値がないですからね。私は多くを知っています。知っていることなら何でもお答えしましょう。勿論、それ相応の対価は貰いますが」
少し待ってくれと言って、外で待っている文香を呼んでくる。
「奥様ですか? 美人ですね」
「ありがとうございます」
文香はそう言って微笑むが、内心では笑っていない。狐狩りのことを思い出しているのだろう。警戒しているのがわかる。
一方、闇商人はニコニコと能天気な笑顔を見せている。どうして俺たちに対して警戒をしないのだろう?
闇商人の考えがわからない。ここは直接的な質問をするべきだ。
「一つ質問するが、どうしてお前は動じないんだ? 俺たちはお前が招待した客ではないだろう?」
「え、やっぱりお客様ではないんですか?」
「いや、情報が欲しいというのは本当だ」
「ならいいじゃないですか。あなたがどうしても語りたいというのなら聞いてもいいですけど、別に私はその話に興味はないですからね。それに、あなたがどの方のことを言っているかわかりませんが、私のお得意様は結構いるんですよ?」
ビジネスはビジネス。そう割り切っているのか?まあもし何かあればリセットすればいい。
今欲しいのは情報だ。
「そうか。ならいい。買い物をしよう。まず、この本について知っていることを教えてほしい」
俺はバックからゴブレイさんの本を取り出す。
「珍しい物をお持ちですね」
「知っているのか?」
「勿論です。そうですね、これのことでしたら、金貨500枚くらいで教えますよ」
腰の袋をそのままカウンターにのせる。
「文香、3枚追加してくれ」
文香が袋から金貨三枚を出す。
闇商人は金貨の袋を触り、スキルを使用する。
「『鑑定』」
袋がスキルの発動と共に消える。
「きっかり50000マニーですね。それでは情報を話しましょう。
まず、その本ですが、普通の本ではありません。それは魔導書です」
「魔導書?」
「異世界のことが書かれた本です。読むと精神に支障をきたしたり、異世界の呪文を覚えることもあります」
「異世界とは何だ?」
「それは別の情報になります。まあ、それについては私自身も詳しく知らないので商品としては扱っていません。なのであなたに話すつもりはありません」
「わかった話を続けてくれ」
「その本の名前は『屍食鬼写本』です。中は......その様子だと読んでなさそうですね。内容もお話しします。それに書かれているのは、主に屍食鬼とその崇める神についてです。屍食鬼、屍食鬼とも言いますが、は西大陸にいる種族で死肉を好みます。種族的な性質としてはアンデットと鬼の中間といった感じでしょうか。東大陸ではまだ観察されてないですね。地下に好んで住むのでもしかしたらいるのかもしれませんけど。
その本がここにあるということは東大陸にも屍食鬼という種族が観察される可能性があるということでもあります。というのは、信じられないことかもしれませんが、『屍食鬼写本』を読んだ人は屍食鬼になってしまうからです。
屍食鬼化は本を読んだ時から始まり、人にもよりますが、遅い人でも半年ほどあれば、完全な屍食鬼になります。読んだ人間は数時間のうちに強い飢餓感を感じるでしょう。あ、ここでいう人は広義の意味ですよ。亜人種も当然同じような衝動に襲われます。そしてその飢餓感は我慢のできるものではなく、屍食鬼化が始まった人間はそれを抑えるために誰かを殺して食べることも躊躇しません。一度食べれば、飢餓感は治まりますが、それはあくまで一時的なもので、屍食鬼化が止まったわけではありません。完全な屍食鬼になるまでに、高位の聖職者による治療があれば普通の人間に戻ることも可能かもしれません。
知っていることは大体こんな感じですかね。何か今の話で質問があれば答えますよ。魔導書の情報はそれだけで相当価値のあるものですし、『屍食鬼写本』なんかは特に、その性質上リスクなしでは内容を得られるものではありませんから、値段はそれ相応の物になっています。そこはご了承ください」
「随分、詳しいんだな。お前はその情報をどこで知ったんだ?」
「それは別の情報になるうえに、私自身の情報ですので、かなりのお金がかかるわけですけど、まあいいでしょう。サービスです。無料で教えて差し上げます。実は、私はその本を読んだことがあるんです。それ以上のことは言いません」
どこでこの本を入手したのか聞ければ、十六夜天狐に繋がったかもしれないが、仕方がない。
言わないと断言した以上、こいつは口を割らないだろう。
「説明でひとつ気になることがあった。屍食鬼が崇める神というのを詳しく説明してくれ」
「神の名前はわかりません。納骨堂の神という別名でも称されています。姿はその本にしっかりと描写されています。確か......
儀式を行うと、黒い影みたいな宙に浮いたエネルギーの塊が徐々に形を作って身体が具現化された。その顔には両目がなく、身体には四肢がない。身体は巨人のように大きく、奇妙な動きで生贄の元に近づいて、死を食らう。
だったかと」
闇商人の話は俺が読んだ内容と完全に一致している。こいつは信頼できる。
「どうして神の名前がわからないんだ?」
「その名前を記した文字が読めないからです」
「それはどうしてだ?」
「その質問は別の質問になりますね」
「じゃあ、俺は情報を売ろう。悪い相談じゃないと思う。そもそもお前の話がどこまで本当か俺は知らない。お前に対する完全な信頼がまだ抱けていない。この本以外にも聞きたいことは山ほどあるが、それを聞いて損するようなら他を当たりたい。そこで、俺からも情報を出させてほしい。無論、嘘をつくつもりはない。お互いが信憑性の高い情報を公開し合うことでいい関係を築きたいんだ」
「今までの話の中で嘘をついたつもりはありませんが、まあ乗ってもいいでしょう。どんな情報を売ってくれますか?場合によっては買いませんよ。商売なので」
「この本をどうやって入手したかについて話そう」
「確かにそれは気になりますね。いいでしょう。買います」
「ゴブレイという冒険者を知っているか?2年前ゴブリンロードを倒してS級になった冒険者だ」
「知ってますよ。最近、新種のゴブリンの王を倒したとか」
こいつ、どうしてそんなところまで知っているんだ?確かにギルドに報告はした。だが、あまりにも早すぎる。
「そうだ。よく知ってるな。そのゴブレイさんから本は貰った」
「ほう?ではどうしてゴブレイさんがその本を持っていたんですか?ご存じでないなら、そう答えてください」
嘘をつくこともできる。だが、それはしない。相手は情報に精通している。嘘の一つや二つ見抜かれる可能性が高い。そもそも、俺に真実を言って生じるデメリットはない。死に戻りすればいいだけだからな。
ノーリスク、ハイリターン。これが俺の【運命を転がす女神の右手】の強みだ。
「ゴブレイさんは、あの十六夜天狐から貰ったらしい。これは彼の手記に書いてあったことだ。どういう経緯で貰ったかの詳細は知らない。天狐はゴブレイに力を与えるといって本を渡した。俺の知っている話は以上だ」
「なるほど。どうやら本当に嘘はついていないようですね。そして情報の価値も高い」
どうして確信できる?何かスキルを使ったのだろうか?闇商人というジョブの特性もしくは嘘を見抜くギフトでもあるのだろうか?まあ今はどうでもいい。むしろそういった能力を相手が持っていたほうが好都合だ。なんせこっちは嘘をつく気は毛頭ないんだから。
「それなら良かった」
「では話を戻して、文字の話をしましょうか。どうしてその文字を読めないのか、それはその文字が異世界のものだから、と私は考えています。この言い方からわかるように、あくまでこれは私の推測です。私にとって価値のあるこの情報もあなたにとっての価値は無に近い。なので、これと関連した別の情報も出しましょう。この神の名が読めないという現象は他の魔導書でも起こっています。以上が私の今もっている全てです」
「わかった。それじゃあ話を変えよう」
読んでくださってありがとうございます。
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