転生
伏線多いと字数増えてしまいますね。
目が覚めると辺りには見慣れない景色。頭がぼーっとする
「ここは.......」
「お目覚めですか?」
目の前には女性がいた。
「はじめまして。私は天使ミカです。あなたの新しい旅立ちのお手伝いにきました」
天使というだけあって、女性は美しかった。長く伸びた青髪と美しく澄んだ青い瞳。胸は豊満で服は光沢のある絹の衣。背中からは純白の羽が生えている。
「すみません。意味が.......」
「そうですね。では順番に説明しましょうか」
そういって天使は微笑んだ。
「結論から申し上げますと、あなたは死にました」
天使の言葉を聞いて、今までの記憶がはっきりしてくる。俺は文香と心中したんだっけ。
つまり、ここは死後の世界。だが、さっき天使は新たな旅立と言っていた。ならば、そう簡単に定義できる場所ではないのかもしれない。
「しかし、あなたにはまだ果たすべき役割があるのです。なのでこれから異世界に転生してもらいます」
「異世界、ですか? どんな役割なんですか」
「正確にいうと異世界ではありませんが、その話は今はできません。あなたには転生者を始末してもらいます」
始末。聞きなれない言葉が目立つ。
「これからあなたが転生する世界には、既に転生者がいます。諸事情により転生した者たちです。彼らが転生した理由はまちまちですが、多くは現世での不幸の補償としてです。ですが、彼らは我々が与えた特別な力を使って征服の限りを尽くし、異世界の秩序をゆがめてしまったのです。だからあなたに始末してもらおうと思いました」
彼らということは転生者には男が含まれている。彼女らと言わないということは3人以上は男だと考えてもいいだろう。
「となると、あなたたちは直接的に彼らを止めることができないのですね」
「察しがいいですね。我々できるのは新たな転生者を送り込むだけ。そして、今回はいままでの失敗を踏まえて報酬を用意することにしました。報酬が異世界での心地よい生活より良いものだったら、あなたは目的を達成してくれるでしょう?」
「報酬には何がもらえるのですか」
「あなたの願いを1つ叶えましょう」
「1つというのは具体的にはどの程度ですか?」
「願いを1つ叶えるというのはあくまで典型的な表現をしただけです。実際には我々にデメリットのないことなら、ほとんどのことを望むまで叶えます」
「では、妹を生き返らせてもらうことはできますか」
「可能です。その答えは我々が予想したものです。その願いを望むと思い、あなたを選びました。勿論、蘇生後はその後の生活も保障させていただきます」
「わかりました。では、私は転生を希望します。概要を説明してください」
「あなたが転生する世界は剣と魔法の世界です。多少の物理法則がいままでの世界とは異なっておりますが、大きく異なることはありません。物を投げれば下に落ちます。重力が普通にあるということです」
「続けてください」
「大事なことをいいます。あなたの第二の人生はあくまでゲームだということです。途中バットエンドを迎えることはあっても、トゥルーエンドのシナリオは絶対に用意されています。だからあなたが諦めなければクリアできるものだということを忘れないでください。そして次にあなたに授けるギフトについて説明します」
「ギフト?」
「ギフトは一部の人間が持つ固有のスキルみたいなものです。異世界ではこのギフトを保有する人は多くありません。ですが冒険者ならまず持っていると考えて間違いないでしょう。ギフトといってもその強さはピンキリで一流冒険者であれば強力なものをもつものもいますが、普通の冒険者であれば【筋力アップ】程度の大したものでないことが多いでしょう」
天使はふわふわと漂っている。
「異世界ではギフトのほかに、誰でも身に着けることができるスキルというものがあります。ギフトが一人一つのものであるのに対して、スキルは複数個身に着けることが可能です。しかしその一日のうちに使えるスキルの数は人によります。一流冒険者ならば3つほど。転生者は普通5つです。ギフトは生まれつきなものであるため変化することは通常ありません。スキルは成長に応じて任意組み合わせを変えることができます。しかし戦闘中にスキルを変更することはできません」
色々情報が出てきたな。まず異世界には冒険者という存在がいること。そして転生者の中には保有できる選択スキルを5つ以上もつものがいるらしいということ。
「つまり俺はそのスキルやギフトというものを武器に転生者たちと戦えばいいんですね?」
「間違いではないですが、恐らく認識が正しくないので補足説明をしましょう。転生後の世界ではスキルとは別に魔法があります。これは覚えられる数に限りはありません。また武器ごとに技というものもあります。異世界の人間は主にスキルをベースに、転生者は強力なギフトとスキルをベースにして戦闘スタイルを選び、魔法や技を使用して戦う場合が多いと思われます」
天使は地面にゆっくりと着地するとゆったりと歩き始める。
「またステータスというのもかなり大事になってきます。レベル上げをすればステータスも上がります。しかし、これらの正確な数値というのは我々上位存在以外には見えません。ステータスはレベル以外にその人のジョブによる部分もあります」
本格RPGアクションゲームみたいなものか。
「一応、今のが大まかな異世界の常識のようなものですね。あくまで常識です。正確な説明ではないということだけ心に念じておいてください」
どうして正確な説明をしてくれないのだろうか?
「転生者が強い理由はステータスが異常に高かったり、ギフトやスキルがチート級であるからです」
天使がチート級という言葉を使うのは何か違和感があるな。
「わかりました。丁寧な説明に感謝します。ところで、私がもらえるギフトについて教えてもらえますか?」
「あなたに与えるギフトとはまだ決まっていません。転生する際にあなたにあったものが与えられます。しかし、そのギフトがどれくらい強いかはこちらで決められるので、あなたに授けるギフトはチート級に設定しています。先ほども言いましたが、このゲームの勝者はあなた以外にありえません。だから安心してください。ここで、あなたが倒すべき相手の名も教えましょう」
女神は5人の名を口にした。
盾の奴隷商 サトゥー須磨太郎
森の大賢者 リメル・テンペスト
嘘松王 十六夜天狐
不死者の王 カインズ・ジョージ・オーウェル
なろう王 カナヤッパ・イキリト
教えられるのは名前だけでそれ以外は言えないらしい。何か上位存在の中でも制約があるそうだ。
それならば名前から得られるだけの情報を得よう。
サトゥーというのは佐藤がなまったものなのか?須磨太郎というのは日本語だ。こいつは男だろう。
リメル・テンペスト。テンペストは英語か。性別は不明。
十六夜天狐は日本語の名前。性別は特定できないが、もしかしたら女性の可能性がある。
カインズ・ジョージ・オーウェルは英語で男性の名を指しているな。イギリス人か?いや、キリスト系の名前だった気もする。
そして気になるのはカナヤッパ・イキリト。イキリトか。まさかな。
「このイキリトというのは.......」
「流石ですね。そうです。なろう王イキリトはあなたが轢いた生島陸斗本人です。彼は転生されてからわずか2年で大国を作り上げました。我々は彼の本質を見抜けず、最強のギフトを授けたのですが、彼の人格は最悪でした。一般人を巻き込み、人殺しをなんとも思わない非道さでたちまち世界の秩序を乱しました。あなたが選ばれた理由には彼がいたということも含まれています」
現世ではどんなやつかわからず、同情したこともあったが、どうやら間違いだったようだな。あいつが異世界に送られたのは俺のせいでもあるし、そこには責任をもたなくては。
「最後にあなたにジョブを選択してもらいます。先ほども言いましたが、ジョブはステータスと大きく関係します。まあどれにしてもらってもレベルが高く転生されるので問題はありません。そもそもあなたのギフトは最強です。なので自分に合いそうな自由なものを選んでください。〈初級戦士〉や〈初級魔法使い〉みたいなものは転生後の世界でも習得できるので、ここでしか選べないレアなジョブをお勧めします」
天使から渡されたリストには数百のジョブが書いてある。後ろにいけばいくほど強そうなものばかりだ。
「この中にないものを選べますか?」
「ある程度なら融通しましょう。〈神の孫〉程度のものなら、用意いたしましょう」
「では私は〈運転手〉のジョブを作ってもらいたいです」
「〈運転手〉ですか。予想外ですね。ですがあなたらしい。いいでしょう。用意します。しかし、恐らくステータスは他のチート級のものに比べて劣るかとも思われます」
「大丈夫です」
「わかりました。ではそろそろ転生を始めましょうか。ギフトの他に、あなたにはプレゼントを送る予定です。転生後の世界で受け取れると思いますので楽しみにしていてください」
「期待してます」
女神が何かを思い出したように口を開く。
「まだ言い残したありました」
「何ですか?」
「あなたの転生ですが、前世での悪行、人殺しのことですね。これに対するペナルティがあると思います。
覚悟しておいてください。ですが、情状酌量の余地もありましたので、あなたの勝利に影響はありません」
「心に留めておきます」
「ではそろそろ出発です。あなた達の健闘を祈ります。どうか神のご加護があらんことを」
身体が青白い光に包まれる。身体が浮き上る。
「ありがとうございました!」
女神は下から手を振っている。
そして俺は転生した。
いろいろネタバレしたいけどできないもどかしさ。
あと30話くらいで分かってくるんじゃないかなと思います。