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緊急クエストー4 ネオ・ゴブリンロード

 文香の言った通り、先に進むと階段があった。後ろを見ると5つの道がある。ゴブレイさんの言った通りだ。

 階段の下にはゴブレイさんがいた。いや、ゴブレイさん以外の冒険者の姿は見えなかった。


「あぁ大河さん。無事でしたか。他のメンバーは?」

 俺は事の顛末を簡潔に伝えた。


「ゴブレイさんのグループはどうなったんですか?」

 沈黙が訪れる。兜で表情は読めないが、良くないことがあったんだろうと推測できる。


「私以外は死にました。ネオ・ゴブリンが大量のゴブリンを引き連れて私たちを襲い、そしてそのゴブリンたちごと毒ガスで殺したんです。毒の対策はしてきたつもりでした。しかし、それが意味をなさなかった。あの毒は私の知っている毒ではない。少なくとも東の大陸の毒ではない」


 ネオ・ゴブリンは西の大陸の種族なのか?そしてゴブレイさんのスキルも気になる。普通の毒対策スキルで対策ができるなら彼以外のメンバーも生き残っているはずだ。


「Cグループは?」

「Cグループはまだ確認できていません」

「そうですか」

 Cグループは最短経路を通っている。ここにたどり着いていないということは道中で全滅したか、途中で離脱したかだ。


 奥に見える巨大な扉に向かって進む。敵の影は見えない。

 扉の前にたどり着くと中からざわざわと声が聞こえる。人の声じゃない。ゴブリンの声だ。


 ギィ。


 ゴブレイさんがゆっくりと扉を開ける。

 扉の先には巨大な空間が広がり、中には大量のゴブリンがいた。ほとんどがホブゴブリンだ。シャーマンとレッドキャップもそこそこいる。この空間にいるゴブリンの戦力はS級冒険者のパーティー10組以上に相当するだろう。

 壁に等間隔で並ぶ松明で遠く広間の奥までよく見える。ゴブリンたちは綺麗な列を作って並び、こちらに背を向けて椅子に座っている。いや、座っているのは椅子ではない。

 それは、手と膝を地面につけた人間だった。裸の人間の上にゴブリンが座っているのだ。

 この冒涜ぼうとく的な状況を見て、激しい怒りが湧き上がってくるのを感じる。それはゴブレイさんも同じようで、彼の手は拳を作り震えている。

 広間の奥はステージになっており、そこには8つの椅子があり、中央には玉座が設置されている。椅子は人骨のようなもので作られているが、玉座は違う。

 ゴブリンが作ったとは思えない立派な玉座だ。玉座の奥には両開きの大きな扉がある。ステージ上にはまだ誰もいない。


 これだけの数のゴブリン。『檸檬(れもん)』を使えば一掃できるが、しかし。

檸檬れもん』は強力なスキルだけに使いどころが難しい。1割以上のMPが残っている時のみに使え、MPの殆どが使用される。

 使用後に残るのは魔導銃10発分のMPのみ。使ったMPの量に依らず威力は同じだ。だからギリギリまでMPを使ってから最後に使った方が得になる。

 MPはまだ9割ある。今の俺は死ねない。使うなら確実な状況が欲しい。



 突然、扉が開く。中からはボロボロのマントを羽織った巨体のゴブリンと、髪の長い巨大なゴブリンが出てくる。

 前者は胸に大きな傷跡があり、後者は首に傷痕がある。

「ゴブリンロード......確かに殺したはずだ。あの傷は私が......」

 ゴブレイさんがそう呟いた。


 ゴブリンロード。ゴブリンを統べる王。だが、ステージ上にいるそれは最高指揮官とは思えない行動に出た。

 扉から出てきたゴブリンロードとマザーゴブリンはそのまま扉の前に立ってそれを抑えている。


 そして、中からは真の王が出てきた。

 ネオ・ゴブリンロード。名前をつけるならそれ以外ない。

 ソレが現れた瞬間、いままでにない威圧感が俺を襲った。ゴブリンロードよりもひときわデカい身体は気色の悪い青色をしている。

 両目の上にある額の瞳は赤黒い光を放っていて、背中からはカラスのような皮膚と同じ色の羽が生えている。その羽は身体の割に小さく、飛行するための物ではないとわかる。頭の上には金の王冠。そして深紅のマント。左手に持つ緑色の盾には瞳があり、右手の大剣は黒い闇を放っている。

 ネオ・ゴブリンロードが現れた瞬間、広間のゴブリン達は立ち上がり、歓喜の叫び声をあげながら狂ったように拍手をする。


 ネオ・ゴブリンロードの後ろからは8体のネオゴブリンが続き、最後の一体が出てくると、ゴブリンロード達は扉を閉めた。その後、真の王が玉座につくと、ゴブリンロードが剣を受け取り、マザーゴブリンが盾を受け取る。


 ネオ・ゴブリンロードは手をあげ合図を出すと、拍手が止んだ。

 そして、広場のゴブリン達はおもむろに剣を取り出す。

 まずいと思ったときにはもう遅かった。


「Gaaaderuuuuuma!」

 ネオ・ゴブリンロードがそう叫ぶと、ゴブリン達が続く。


「「「「「Gaaaderuuuuuma!!!」」」」」」



 俺たちが介入する暇もなく、ゴブリン達の剣は無慈悲に振り下ろされ、人質の首が飛んだ。


「「「gaa!gaa!gaa!」」」


 ゴブリン達は興奮して騒いでいる。

 俺が引き金を引くよりも早く、ゴブレイさんは行動に移った。


「【武器よさらば】」

 腰から出した黒い球体を握りつぶしたゴブレイさんの手には長い一本の槍が握られていた。

 槍を大きく振りかぶる。黒い光に包まれ、ゴブレイさんの槍がネオ・ゴブリンロードに向かって放たれる。

 槍は超高速で目標に向かっていく。ネオ・ゴブリンロードもその存在に気が付くが、時すでに遅し。回避はできない。

 ゴブレイさんの槍がネオ・ゴブリンロードに到達した瞬間、槍が消える。

 槍は横のネオゴブリンの胸に突き刺さっており、刺されたネオ・ゴブリンは血を吹き出し、倒れた。


 突然の出来事に混乱したゴブリンたちが叫ぶ。その声は威嚇のようにも聞こえる。

 俺も魔導銃と短剣を構える。ゴブリンたちはまだ襲ってこない。

 ステージ上ではゴブリンロードがネオ・ゴブリンロードに何か話している。そして、ネオ・ゴブリンロードはおもむろに立ち上がると、号令をかけた。騒いでいたゴブリン達は急に静かになると、人間の死体と剣ををもって、広間の脇に逸れる。

 俺たちからステージまで一本の道ができる。道の中央は円ができ、そこに向かって大剣を持ったゴブリンロードが歩いてくる。ネオ・ゴブリンロードはゴブレイさんの方に向かって指さす。

 言葉が通じなくてもわかる。ゴブレイさんとゴブリンロードで1対1をやろうということだ。


「どうしますか?」

「やるしかないでしょう。この人数差です。まともにやっても勝てる見込みはありません」

 ゴブレイさんは俺の力を見誤っている。だが、この勝負を止めることは俺にはできなかった。

「わかりました。俺はどうすれば」

「タイミングを見計らって逃げてください。私のことは見捨ててもらって構いません。悪いのは私です。私は敵の戦力を侮っていた。ギルドに帰ったらすぐに今回の報告をしてください。S級冒険者、その中でも特に実力者を集めてこいつらを始末してください」

 そういってゴブレイさんは中央に向かう。


 ゴブリンロードとゴブレイさん。二人が中央にたどり着くと、ゴブレイさんはあの球を取り出し、割る。

 手には刀が握られている。ゴブレイさんは腰を低くして刀を構えた。

 意図は読める。居合い。初撃の補正がかかるゴブレイさんに最も適した技。一撃でゴブリンロードを仕留めるつもりだろう。


 ゴブリンロードは大剣を両手で持ち、頭の上で構える。上段の構え。向こうも一撃で決めたいらしい。


 静寂。


 ゴブリンの一人が何かを叫んだ瞬間、二人が同時に動き出す。

 ゴブレイさんが居合いを放つ。刀は心臓をとらえる前にロードの振り下ろした大剣とぶつかった。

 ゴブレイさんの刀が折れ、刃が宙に飛ぶ。しかし、居合いの勢いのままゴブレイさんは回転する。その右手にはナイフが握られていた。

 ナイフがロードの胸をとらえた。ロードの大剣は地面に振り下ろされる。ゴブリンロードは胸を押さえながら地面に倒れた。

 ゴブレイさんの勝利だ。


「Geeaa!」

 一体のホブゴブリンがゴブレイさんに攻撃を仕掛ける。

 それに続いて、他のゴブリンも動き出す。

「「「「Geeaa!!」」」


 まずい。このままではゴブレイさんは。

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