緊急クエストー1 前日
ブクマってどうやったら増えるんだろう。
たんたんと投稿していくしかないのかな
ゴブレイさんの話の内容はこのようなことだった。
まず、今回のゴブリン殲滅作戦は従来のものとは明らかに違っているということ。
ゴブリンに対して緊急クエストが発動されたことは過去に何度かある。それらは全てゴブリンロードの出現により発動される。
ゴブリンロード。ホブゴブリン以上の身体能力と並みの人間より高い知性を備え、その圧倒的な指導力でゴブリンを統率し、人間や亜人の村を襲う。前回はエルフの里を占領し、周囲の国家に多大な被害をもたらした。
ゴブリンロードの出現はマザーゴブリンによって起こる。マザーゴブリンはゴブリンの自然的要因で生じた突然変異種でメスのゴブリンのことを示す。マザーゴブリンは大体10年ごとの周期で、いつも同じ姿で生まれるから突然変異種というより、希少種といったほうが適切かもしれない。ひとたびマザーゴブリンが生まれると、そのゴブリンの集団は加速度的に数を増やす。そして集団が一定の規模を超えると、ゴブリンロードが生まれるのだ。
以前、ゴブレイさんがゴブリンロードとマザーゴブリンを殺してからまだ4年の月日しか経っていない。
今までで10年という周期が崩れたことはなく、その事実からして今回の事態が異常であることがわかる。
他にも不可解な点は存在する。
一つ目にネオ・ゴブリン出現。今まで発見されたことない青いゴブリンの個体は自然的に発生したものでないのは確実だ。しかも奴らはかなり強い。今回の依頼に絡んでいるようなら難易度はいっきに跳ね上がるだろう。
二つ目に今回ゴブリンロードが拠点にしたところが前回と全く同じ場所であるということ。
確かにエルフの里はゴブリンにとって都合のいい場所である。100年前の妖狐とエルフの戦争で、妖狐の圧倒的な魔法攻撃に対応するため、エルフは多数のエルフの命と引き換えに禁忌魔法を発動し、エルフの里の土地や建物に対して強力な防御魔法をかけた。その効果は今なお継続しているため、土属性魔法による地形変動や妖狐の超火力をもってしても里一帯にダメージを与えることができない。だが、それだけの理由で前回と同じ場所を拠点にするのはあまりに安直すぎる。
過去の他の拠点を調べてみても、土属性魔法が無効化されるような地下の大迷宮や、大森林など適した場所はいくらでもあった。
それにもかかわらず、ゴブリンロードは前回と同じ場所を選んだ。高い知性を備えた奴がこのような選択をするには何か理由があるはずだ。
ゴブレイさんの作戦内容は簡潔だった。
以前ゴブレイさんが構築したルートのうち、前回使用しなかったいくつかのルートを使う。
最初に乗り込むのがゴブレイさん率いるAグループ。Aグループは隠密に行動し、できるだけ敵の拠点の奥部へ素早く到達する。
Aグループの侵入後、時間差で俺たちBグループが正面から攻め入る。目的はできるだけゴブリンを殲滅すること。文香やマジック・フォックスのメンバーが威力の高い広範囲魔法で敵の数を減らす。
生き残りは俺とファイズが仕留める。Cグループは俺たちの殲滅作戦が終わった後、正面のルートで敵の根城に侵入する。Bグループは別の裏ルートから侵入。
以前の敵の本拠地はやはり地下だった。エルフの大木の近くにある遺跡。この奥深くにゴブリン達はいると予想されている。
なお、今回の緊急クエストでは人質の生死は問題となっていない。その数は数十人と見積もられているが、ゴブリンロードの脅威はそれ以上の命を脅かすものであり、戦略的な判断から人質の命は諦めなくてはいけない。ゴブレイさんが立てた作戦の中にも人質に関するものは含まれていない。
***
集会から3日が経った。俺たち冒険者は嘘松王国領の宿に滞在している。
作戦実行は明日。夜はゴブレイさんの提案で親睦会を開くことになっている。
装備を整え、文香と事前の作戦確認などをし、俺たちも親睦会に参加した。親睦会にはマジック・フォックスのメンバーを除く、ほとんどの冒険者が参加していた。彼女たちは嘘松王国でゆっくりとしているのだろう。嘘松王国に入るにはそれなりの許可が必要であるが、ここの宿は十六夜天狐がなろう王国に対するサービスとして開放していて、嘘松王国領でありながら冒険者が利用できる場所となっている。
嘘松王国となろう王国は同じ東大陸の国として友好な関係を築けているようだ。バビロンは冒険者の街として例外的に人間であろうが亜人種であろうがアンデットであろうが誰でも入ることができるが、他の場所はそうはいかない。人口の半分以上がアンデットであるヘルヘイム帝国と冷戦状態にあるなろう王国で唯一アンデットが入国を許可されているのがバビロンなのだ。
なろう王国の首都ラインクラッドに入れるのはなろう王国の配下の国の国民、もしくは嘘松王国の妖狐だけである。
親睦会で改めて周りのグループを見ると人間が多いことがわかる。
国によってはゴブリンでさえ亜人のひとつだと数えるところもあるのだ。リザードマンなどはまさにそういった定義を採用していて、リザードマンの国ではゴブリンを殺すことは犯罪にあたる。
逆にルーツが同じといわれている鬼族ではゴブリンを亜人と定義していないそうだ。
Cグループにひときわ目立つ2人組がいた。
そのうちの一人は男であったが同性の俺からしても目が奪われるような美しさをしていた。
もうひとりの顔は標準的な顔であったが、片方があまりに美形であるがために少しゲイカップルのように見えなくもない。
宴の席でゴブレイさんが話しかけてきた。
「大河さん少しお話があります」
なんとなく重苦しい雰囲気を感じ取った俺はゴブレイさんと周りから少し離れた場所にいった。
「何ですか話って」
「あの妖狐たちの話です」
今回緊急クエストに参加した妖狐は俺たちのグループのマジック・フォックスだけだ。
「どうかされたんですか?」
「あの妖狐たちは危険です。気を付けてください」
「何かそう思う理由が?」
「根拠はありますが理由は言えません。もしかしたら私の思いすごしかもしれませんし。それならそれでいいのですが、一応大河さんには言っておいたほうがいいと思っただけです。お二人はS級冒険者に劣らないほど強いのはわかっていますので、そこまで心配しているわけではないのですが、念には念を入れておきたかったので」
「そんなに強く見えますか?」
「はい。見えます。あ、でも安心してください。多分気が付いてるのは私だけだと思います。
強くない私だからこそ気が付けたことです。といっても大河さんの強さに気が付いたのはただの偶然なんですけどね。大河さんと文香さんはてっきり〈ゴブリン・キラー〉をセットしているのかと思っていましたけど違いますよね。良く観察すると、暗視の効果が私のものと異なってます。恐らく別の探知系スキルをセットしているか、もしくは何もつけていない。最初はただの間違いだと思っていたんですが、この前にネオ・ゴブリンと戦っていた時の動きを見て大河さんの真の実力が計り知れないことを確信しました。
このことを他の人に言うつもりは一切ありません。魔導銃もそうですし、何か理由があって本当の力を隠しているのはわかっていますから」
「はは。ばれてましたか。いやぁ驚きました。あ、でも『ゴブリン・キラー』を習得してるのは本当なんですよ。明日はしっかりとセットするつもりです」
そんな会話をしていたら、ファイズのメンバーに絡まれていた文香がこっちに助けを求めるような顔で見ているのが見えて俺とゴブレイさんは宴に戻った。
宴の途中、ここのメンバーが誰一人欠けることなくこうして集まれることがあるんだろうかという考えが、心に浮かんだ。こんなセンチメンタルな気持ちになったのは久しぶりだ。ドワーフの里の名産だというこのお酒のせいかもしれない。でも、なんとなく。理由はないけれど。こうしてまた集まれることはないんじゃないかって気がした。




