スキルについての回想とギルドへの召集
後日、俺とゴブレイさんは情報を共有するために酒場に集まった。話すのは当然、あの日の依頼のことだ。
「ネオ・ゴブリンは上位の変異種だと思います」
「確かにあのゴブリンの防御力はいままでのゴブリンより高かった」
ゴブレイさんの一撃でゴブリンが倒れなかったんだ。
「大河さんのあの武器についてよかったら教えてもらえませんか」
「あれは魔導銃といいます。僕も実はよくわかってないんです。ゴブレイさんのあのスキルはなんですか?」
「【武器よさらば】。私のギフトです。武器の攻撃力を底上げする代わりに、耐久値を9割以上消耗するいわば諸刃の剣です。私の攻撃には『ゴブリン・スレイヤー』『ゴブリン・キラー』の補正がかかっています。その攻撃をあのネオ・ゴブリンは2発耐えました」
話の流れがよかったので信頼できるゴブレイさんにスキルやギフトについてどこまで知っているかを聞いてみた。
冒険者をしている中で専門用語を聞く機会も増えた。
アクティブスキル。パッシブスキル。ユニークスキル。ジョブスキル。
以下にかかれているのは俺がゴブレイさんから聞いた話とこの世界について考察した内容だ。
アクティブスキルは『The Great Gatsby』や『A Study in Scarlet』のように必殺技として発動するスキルを指す。
ほとんどのものにクールタイムが設定されていて、魔力消費量も多いが、その分強力なものが多い。
それに対してスキルの横にレベルがついているような『体術:Lv』みたいなものはパッシブスキルと呼ばれている。これらはつけているだけで常時発動するものだ。パッシブスキルは吸収ができるらしい。
ユニークスキルはその名の通り、使用者が自ら創り出したオリジナルのスキルだ。オリジナルスキルや魔法スキルと言われることもあるという。発動条件など詳しいことはまだよくわかっていないらしい。
ジョブスキルについてもよくわかっていない。ジョブによるスキルであるがギフトとの違いがいまいちわかっていないという。
これらのことをまとめて言ってしまうと、この世界の住民はスキルについて詳しいことがわかっていない。
スキルの定義はあくまで冒険者がつけた曖昧なものであり、『超位運搬術:Lv5』のようにどちらとも言えないようなものも存在するし、アクティブスキルにもレベルがついていることもある。
スキル欄と魔力を使うのがスキル。努力すれば誰でも使えるのが魔法。魔法以外で体が動くの技という感じだろうか。
魔法については嘘松王国で研究が進んでいるらしいが、その体系をバビロンで学ぶことはできない。
「ネオ・ゴブリンは何故出現したんでしょう?」
「モンスターの突然変異は主に二つの原因から発生します。自然的要因と人工的要因。ゴブリンで言えばホブ・ゴブリンなどの上位種は自然的要因で発生したと言えるでしょう。ゴブリンシャーマンは広義でいうと人工的要因です。冒険者の杖などの魔法触媒がゴブリンの手に渡ったことが最終的な原因になるでしょうから。大河さんはまだ見たことがないかもしれませんが、ゴブリンロードなどは自然的要因で発生します。10年に1度程度ゴブリンの中に指導者が生まれ人類との戦争のため群れを統率する。この時にはAランク以上の冒険者が集められ討伐隊を組みます。私はそこで功績をあげS級へと昇格しました。そんな私のみたてだと、あのネオ・ゴブリンはゴブリンロードと同じような種類であると感じました。ですが、あの色や腕の盾のようなものは明らかに自然的要因で発生した個体だとは思えない。人工的に作られた新型のゴブリン。そんな評価が一番しっくりくる気がします」
その日の話合いは終わった。
それから一か月。俺達とゴブレイさんはそれぞれゴブリンを狩り続けていた。この一か月間でゴブリンの依頼数は徐々に減っていき、俺と文香はゴブリン以外のモンスターを狩ることも増えた。
そしてある日、俺と文香はギルドに召集された。
ギルドには30人ほどの冒険者が集まっている。プレートの色から多くはA級だとわかる。中にはS級冒険者もいる。ギルドの副会長が話を切り出す。
「今回集まってもらったのは他でもない。緊急クエストの依頼について話すためだ」
冒険者がざわつき始める。緊急クエスト。危険度の高い依頼に対して発動されるクエスト。普段の依頼の報酬は依頼主が報酬の80%、国が20%の額を出す。しかし緊急クエストは違う。報酬の100%を国が負担し、報酬も通常の依頼の数十倍もの額になっている。
「依頼内容はネオ・ゴブリンの殲滅」
殲滅。その名の通り、種そのものを完全に無くすことを言う。
「本作戦ではゴブレイをリーダーに命じた。召集した冒険者はA級以上のつわものたちだ。諸君の検討を祈る」
そういって副会長は去った。ゴブレイさんに司会を変更するためだろう。
ゴブレイさんが口を開く。
「〈ゴブリン・スレイヤー〉のゴブレイです。今回の依頼の指揮は私が担当します。よろしくお願いします」
続いてゴブレイさんは俺と文香の紹介をしてくれた。B級冒険者だが既に『ゴブリン・キラー』を獲得していて、戦力としては申し分ないと。
その後ゴブレイさんの指示で冒険者は3つのグループに分かれた。ひとグループは大体3つのパーティーで振り分けられた。
俺と文香はゴブレイさんとは別のグループだった。俺たちBグループは人間の男4人のパーティーに嘘松王国の妖狐3人のパーティー、それに俺と文香を合わせた9人のグループになっている。
まずはグループで自己紹介をする。
「マジック・フォックスのリーダー、楓です。今回のグループリーダーは私が務めることになりました。よろしくお願いします」
楓と名乗った妖狐を見る。尻尾の数が3本。他の二人は1本だ。他のメンバーのプレートがA級なのに対して、楓さんだけS級のプレートをしている。そこからも彼女が実力者であることがわかる。
盾と直剣を装備しているが、妖狐であるからにはパーティー全員が〈魔法使い〉なのであろう。
他の2人は皐月さん、朱莉さん。朱莉さんは小杖をもっているからサポート役であることがわかった。
続いて男グループのリーダーが自己紹介を始める。
「俺はファイズのリーダー、マヒルヒマだ。このグループには美人が多くてよかったぜ」
そういって男たちはニヤニヤしながらマジック・フォックスのメンバー、それに文香を見る。
とっさに腰の魔導銃に手をかけた俺の腕を文香がそっと撫でた。
ふぅ。
ここで悪い印象を残すのはよくない。
他の3人は順にラザエル、スタイン、ザトースと名前を名乗った。リーダーはS級で他の3人はA級の冒険者だ。リーダーはナイフ使いか?ラザエルは腰のロングソードから前衛。スタインは杖を持っているから魔法職。ザトースは小杖と短剣だからサポート職だろう。
「俺は川霧大河。文香と二人で組んでいる冒険者だ。特にパーティー名なるものはない。先ほどゴブレイさんの話にあったように今はゴブリン狩りを専門にしている」
「パーティー名がないなら俺がつけてやろうか?」
スタインがしゃべりだした。
「そうだな、文香ちゃんファン倶楽部なんてどうだ?それで俺も入れてくれよw」
そういうとファイズのメンバーに笑が起きる。ラザエルが「俺も」と手をあげる。文香の様子を見る。顔は笑顔だが、これは確実に怒ってる顔だ。
「名前は、今度思いついたらつけることにします。あなた達の名前はファイズですけれど、どうしてその名前なんですか?」
マヒルヒマがしゃべる。
「あぁ。それにはちゃんとした理由がある。本当のリーダーは他にいたんだが事故があってな」
「事故ですか?」文香が質問をする。
「事故というかなんというか、あいつの人生は波乱万丈なんだよ。大変な時はありえない程良いことが起きるが、調子のいい時はその逆。考えられない程悪いことが起きるんだ」
「調子のいい時にあいつと組むのは疫病神をパーティーにいれるようなもんだぜ」スタインが口を挟む。
「ほんとにいい迷惑だよ。悪い時にだけいてくれれば助かるんだけどな。西大陸の鬼ヶ島にゴースト退治にいってからおかしくなっちまった」
西大陸か。現在俺たちがいるのは東大陸。なろう王がこの大陸の4割を支配している。他には嘘松王国やリザードマンたちなどの亜人種の国があり、草原や山、森林などモンスターが生息する自然も多い。
そしてカインズがいるのが西大陸。様々な国家が存在しているが西大陸の7割はユグドラシル連合の土地となっている。
ユグドラシル連合は9つの国の同盟であるが、実際のところはカインズのヘルヘイム帝国が連合の実権を握っている。
「そろそろ自己紹介も終わったと思いますので、具体的な話に移りたいと思います」
ゴブレイさんが再び全体に話を開始した。




