アインツと煉獄
衝撃の結婚発表。かなり驚きました。お二人ともおめでとうございます。
――旧ザルバド王国――
和の国を出て半日。俺と文香は旧ザルバド王国に潜入した。自身の姿を消すスキル『存在の耐えられない軽さ』を使い、敵の眼をあざむいた。
旧ザルバド王国にはリザードマンしかいなかった。人間である俺と文香はその姿をさらすことはできない。あらかじめ手に入れていた城下町の地図を頼りに、大きな城をめざした。国民の姿はあまり多くは見られなかった。その理由は城に近づくにつれわかった。今日は祭事が行われるらしい。その情報は知らなかったから、近くにいたリザードマンを裏路地に連れ込み、『時計仕掛けのオレンジ』を使用して内容を聞いた。
どうやら、第一王子アインツが継承戦に勝利をし、今日は新王子のお披露目会が行われるそうだ。
「悪くないタイミングだ」
「そうね。一度は姿を見ておいた方がいいわ」
俺と文香の目的は煉獄を持ち帰ること。それに加えて、天叢雲剣についての調査をし、さらにはヘルヘイム帝国とのつながりも調べておきたい。そのためにはアインツに接触する必要がある。
俺たちが戴冠式に入り込んだ時、ちょうどアインツが姿をみせた。
ワアアアアアアア!
歓声が起こる。新たな王の誕生にリザードマンたちは沸いていた。
「あれが煉獄か」
遠目ではあるが、アインツが両腰に双剣を携えているのがわかる。
「あれだと伝説の7本という割には8本も剣が造られたということになるな」
俺はそんな軽口を叩きつつ、観察を続ける。
ギロリ。
「あなた」
「うん」
いま一瞬ではあるが、アインツがこちらの方を向いたような気がした。一瞬だけ俺たちは身構えたが、アインツは何も気が付かなかったかのように儀式を続けていく。
「奴の目が俺たちの『A Study in Scarlet』と関係があるならば、ばれていてもおかしくはない。あの輝き方を見る限り、本当に俺たちと同じものを持っている可能性が高くなった」
「そうね」
「文香、昨日話した通りだ。納得してくれているよな?」
俺は昨日、文香に潜入がばれたら死に戻りを選択するという話をした。文香は合理的な判断の下、それを許可した。
国家を治める俺たちが他の国家間の争いに直接関与していると思われるのは国民にとってよろしくない。陽菜さんとの約束を果たすためにも俺たちは嘘松王国に不利が被るような可能性は排除しなければならない。
「納得はしています。でも、まだ早いわ」
「あぁ。今のが俺たちの勘違いである可能性もゼロではない。それに死を選ぶならばもう少し有益な情報を手に入れてからだ」
死に戻るという行為、否、時間を巻き戻すという行為は大きなストレスになる。
同じ時間、同じ場所で、人々は操り人形のように同じ行動をし、気温や湿度、風の向きまでもが不自然なほど正確に繰り返される。その世界は俺に圧倒的な疎外感を与える。自分だけが正常で他の人間が全て狂人になったような、現実と夢の区別さえわからなくなったような感覚を俺は体験する。
文香がいなければ発狂していただろう。こんなもの普通の人間が到底耐えられる行為じゃない。
「どうやら式は終わったらしい。潜入しよう。どこかに隙が生まれるはずだ。そこで終わらせたい。できることなら一度の挑戦だけで」
「えぇ。いきましょう」
***
俺と文香は『存在の耐えられない軽さ』により、不可視化された状態で、なんなく城へと潜入できた。
「『A Study in Scarlet』」
文香が緋の目を発動する。
数秒が経つ。
「見つけたわ。最上階の部屋に一人でいる。煉獄を携えたまま背を向けて立ってる姿が見える」
「わかった」
俺は魔導銃を構えつつ、先へと進む。
銃を撃つつもりはない。スキルを使うためだけに俺はこれを握っている。
「この部屋よ」
文香が指をさす。
「生体反応は?」
「一つだけ」
「わかった。突入する」
俺はドアを静かに開ける。アインツを視認し、銃を構える。
「『時計仕掛けのオレンジ』」
俺は弾を発射する。
しかし、弾はアインツに着弾する前に、切り落とされる。
確かに、通常の弾に比べると、スキルを込めた弾の弾速は遅い。十分な距離で視認されていれば、反射神経のあるものならば避けることも可能だろう。
だがしかし、アインツは大して遠くもないこの距離で、避けるわけでもなく弾を切り落とした。異常だ。だが、これだけの事実で、3つのことがわかった。
まず、アインツは俺が攻撃をしてくることを知っていた。恐らく緋の目の力で透明なはずの俺たちを見抜いていた。
次に、アインツの身体能力。類稀なる反射神経と、弾を切り落とす精密動作。こいつは強い。
最後に、こいつが自信家であるということ。俺たちが来るとわかって、一人で待ち構えていた。よっぽどの自信があるのだろう。
アインツが距離を詰めてくる。俺は腰のナイフを取り出して応戦する。殺す気はないが、銃も構えておく。
バン!
アインツの脚をめがけて銃を放つ。が、それは回避される。だが、そこまでは予想通りだ。その方向へ回避するように仕向けたのだ。
俺はアインツと接近戦に入る。
俺がナイフで攻撃を放つと、アインツは右手の剣をそれに合わせてくる。その動きには普通のものでない。それは俺の知っている動きだった。緋の目により、相手の予備動作を見抜き、カウンターをする攻撃。
反射速度で言えば、相手の方が上かも知れない。ギャッツビーなしで緋の目で得た情報を処理し、的確な動きをしている。
俺はナイフと煉獄が触れる瞬間、左手の銃を右腕の下にくぐらせ、放つ。再びスキルを発射した。しかし、その動きも読まれており、アインツの左の剣が弾を叩き落とす。
ナイフが煉獄と触れる。力だけならば勝てるはずだった。しかし、ナイフはドロドロに溶ける。
「なっ!」
アインツは逆手のまま左手の煉獄で俺の魔導銃を切りつける。魔導銃も熱により溶け、両断される。
魔導銃が使えなくなった。これは大きな損害だ。これにより目的は達成できなくなった。俺は死を選ばなければならない。
「『存在の耐えられない軽さ』」
俺は再び透明になる。このスキルでは自身の身体を不可視化する過程で、体重の5kgと防御力を失う。透明になればなるほど、防御力はゼロに近づいていく。
アインツの両刃が俺を切りつけた。意識が飛ぶ。
・・・・・・。
ブクマが順調にのびてて嬉しいです。100話超えるとスコッパーさんが見つけてくれるんですかね?
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