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バビロン

 バビロン。なろう王国領の最西端に位置する巨大都市。

 5年前に突如現れたバベルの塔を囲むようにして都市が形成されている。一番重要な施設は冒険者ギルドだろう。ここはなろう王国領でありながら、他国の者の出入りが自由な特区なのだ。

 現在、イキリト率いるなろう王国とその東にあるカインズ率いるヘルヘイム帝国は冷戦状態にある。だが、ここバビロンではそのような雰囲気を感じられない。流石にスケルトンが街を悠然と闊歩しているということはなかったが、フードを深く被ったアンデットのような者は見かけるし、他にも様々な亜人が来ているようだった。リザードマン、エルフ、ドワーフ、ワーウルフ。


「亜人も日本語を話すんだな」

「そうね。あ、見てあの人たち」

 文香が指をさした先には妖狐の冒険者チームがいた。


「嘘松王国の冒険者か」

 アニメや漫画でみたような狐を擬人化させたような身体。ラプト村の元冒険者トニーさんは妖狐と仕事をしたこともあり、その時の話をしてくれた。

 俺は遠目から妖狐たちを観察する。武器は持ってないように見えるが、それは違う。あの尻尾が妖狐の最大の武器なのだ。妖狐の尻尾は最高ランクの魔法触媒だ。妖狐は魔導士として人間の到達できない領域に達する。


 大通りを歩いていくと、ギルドについた。


 ギルドで冒険者手続きを済ませる。

 自分の身は自分の身で守る。福祉国家という概念がないこの世界では冒険者手続きも雑だった。

 なりたいと言えば契約書一つ書いてすぐにでも冒険者になれる。初めはEランクから、最大はSランクになっている。ランクによって受けられる依頼が決まってくる。

「冒険者の階級にはアルファベットが使われているのね」

「この世界の言語がどうなっているのかはよくわからないな」


 ギルドを後にして宿の確保にいく。ギルドが運営している宿はいくつもあるが、Eランク冒険者では割引も殆どないうえにいい場所はありそうになかった。宿でコネを作れる可能性も考慮したが、ギルド受付嬢に話を聞いたところ冒険者は基本的に野宿をすることが多く、宿に帰ることはほとんどないそうだ。商店街のような場所を抜けた先に空き家が沢山ある地域が見つかった。ここのどれかを借りよう。手持ちのお金と相談し、相手と交渉する。

 村でこの世界の通貨の概念と相場は聞いている。ここ一帯の土地を管理しているのは人間だ。交渉相手は感じの良い老人でなかなかいい値段で契約をしてくれた。

 かつて冒険者ギルドがなかった時代に、冒険者(便宜上そう呼ぶ)の多くがここの地域に住んでいたが、イキリトがこの地域を支配するようになると、政府が管理する冒険者ギルドができ、その時に建てられた宿(前の世界だとホテルといったものに近い)が建てられ今はこの老人の管理する地帯は廃れてしまったらしい。


 契約した家についた。ギルド付属の宿のように最新の魔法道具が導入されているわけではないが、管理の行き届いた綺麗な部屋で俺は満足だった。文香がラプト村から運んできた家具類を引き出す。


「今後の予定はどうするつもり?」

「まずは地図が欲しい。あとは武器や装備。最初はここでの生活を安定させることを目標にギルドの仕事をこなし、情報を入手しよう」

 俺たちのバビロンでの生活が始まった。



 ***


 最初はEランク冒険者らしく薬草の採取や小型の獣を狩って仕事をこなした。魔導銃を使うところは見られたくなかったし、転生者に俺たちが転生してきたことを隠すためにも直ぐに片づくような依頼も俺と文香の二人だけでじっくり時間をかけて行った。もらえる報酬も殆どなく、最初に購入した二人の装備一式の借金を返すのに4か月半かかった。この世界でも1年は365日と決められている。ここバビロンでは季節の影響を受けることはあまりないが、他の国や地域だと季節が生活に深く根差しているところもあり暦が発達したらしい。

 冒険者ギルドでは月の終わりに階級の変更が発表される。変更といっても階級が下がるような冒険者は滅多にいない。俺と文香は真面目に確実に日々仕事をこなしたこともあり、無事にDランクに昇級できた。DランクとCランク冒険者の人数が一番多くなっており、Dランクからやっとこ本物の冒険者らしい冒険が送れるようになるのだ。


 Dランクになってから1か月半の間に文香とは様々な約束を作った。

 俺は無闇にギフトを使わない、これが文香が定めたルールだった。

 効率を求めるあまり、俺は少しでも情報が漏れることがあった瞬間、死に戻るということをしていた。

 俺が死を選択するたびに、文香の心は傷ついていた。だから俺は死に戻る際には文香の許可をもらわなければいけないということにした。文香は優しいが感情的な人では決してない。論理的に死に戻りをするメリットを話せば、それが妥当な意見ならば受け入れてくれる。だから俺も文香の意見を受け入れ、本当に必要な時以外は死を選択しないことにした。


 死に戻りの実験をする際にわかったことがいくつかある。

 まず、アンリミテッド・ノートブックスについて。

 一見ただのメモ帳に見えるそれは死に戻った際も書いた内容が保存されるという能力があることがわかった。

 次にわかったのは、死に戻った場合、最後に目覚めたときに戻るということ。

 これが無敵とも思える俺のギフトの弱点だろう。詰みポイントで睡眠をとってしまった場合、終わらない地獄がまつことになる。


 異世界に転生して半年。俺と文香は少しずつ自分たちのスキルやステータスについて実験を重ねた。それらの結果は全てアンリミテッド・ノートブックスに書き留めてある。

 この世界で必要な最低限の知識は得られたと思う。

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