前日譚
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『IQ250の天才詐欺師が、異世界転生者から【最強の武器と能力】を奪い取り、家族の復讐を果たすために、世界の全てを欺く物語』
https://ncode.syosetu.com/n9099fr/ (8/18追記)
100%完結します! 安心して読み進めてください。
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主人公 川霧大河
某有名大学に通っていたが、在学中、父が心臓発作で亡くなる。
母親は妹を生む際に命を落とした。妹の学費を稼ぐために大学を中退し運送会社に務め始める。
IQは160の天才。彼女いない歴=年齢。
妹 川霧菜々美
花も恥じらう高校生。兄が大学を中退して自分の学費を稼ぐことに引け目を感じている。美人で性格も良く、学校では良好な友達関係を築いている。
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前日譚
俺はトラック運転手だ。某運送会社に務めてもう5年になる。
俺の勤務する会社は変わった方針を掲げている。それは各自が専用の決まったトラックを担当するということだ。なんでもトラックとの絆が深まるらしい。最初はわけのわからない社訓だと思ったが、今ではその考えを改めている。愛車の名前は「文香」だ。
文香を乗り始めてから3年、信じられないかもしれないが、俺は文香と会話ができるようになった。先輩ドライバーの中でもトラックと会話している人は多くはないが、それでもそういった例はある。でも、考えてみてほしい。雨の日も風の日も、灼熱の炎天下も極寒の冬もほぼ毎日トラック共に生きた者にとって、トラックと会話できるのは自然なことではないだろうか?
「そうだよな。文香?」
「どうしたの急に。またあなたの悪い癖ね。考え事をしたならその内容を説明してから同意を求めてよ」
「はは、悪い悪い。文香は今日も可愛いなってね」
「もう。いきなり恥ずかしいこと言わないでよ。でも、ありがとう。今日も安全運転を心がけてね」
「おう!」
今日もいい一日になりそうだ。
アクセルを踏む。
「3つめの角を右だっけ?」
「それで合ってるわ」
しっかりと交通規則を守った運転。交差点に差し掛かる。信号は青だ。だが、目の間に突如人が現れた。
慌ててブレーキを踏む。しかし男はスマホをいじっていてトラックに気が付かない!
キイイイイイイ!
目の前のガラスが赤く染まった。急いでドアを開け、吹っ飛んだ男に駆けつける。男は死んでいた。頭が真っ白に染まる感覚。何も考えられない。
「あなた!」
文香の声がする。あぁ、文香。
「あなた、落ち着いて!とりあえずまずは警察に連絡!」
「わかった」
俺は警察に電話をして、状況を説明するとトラックに戻った。涙が出てくる。後悔。自分が人を殺してしまったことよりも、文香の手を汚してしまった後悔。
「文香、ごめん」
涙が頬を伝う。
「いいのよ。あなた。あなたは悪くない。大丈夫だから。あそこを見て。ちゃんとカメラがあるでしょ。信号は青だったし、確かに安全確認もしていた。この人はヘッドホンをつけて歩きスマホをしていた。あのカメラがあなたが悪くないって証明してくれるはず」
「そうだな。ありがとう。少し落ち着いた」
最悪の事態だけは防げたはず、だった。しかし、現実は想定していたよりもっと酷い、最低最悪なものだった。俺が轢いた男の名前は生島陸斗。あの生島財閥の長男だった。生島は高校の帰りだったらしい。
数万円もするヘッドホンを耳に当て、スマートフォンをいじりながらの下校だった。でも、警察が調べた結果は違った。事実は捻じ曲げられた。極悪のヤクザが金に目が眩んで、運転手になりすまして故意に罪のない青年を轢き殺したらしい。そんなのは全部嘘だ。この事故は全国に大体的に放送された。ある放送局では、昔の知人だという全く知らない人物が、俺の人格がどんな最悪だったかを語り、別の放送局では俺が関わっていたとされるヤクザについて専門家が何か述べていた。
ありえない。信じられなかった。日本という法治国家で、こんな出来の悪い物語みたいな話があるなんて。
その後、裁判があった。第一審では信じられないことに死刑を宣告された。
裁判から数日後。家に帰ると菜々美の表情が暗い。
「どうした、菜々美」
「あのね、お兄ちゃん実は......」
あの事故以来、菜々美は学校でいじめられるようになったらしい。最初は耐えていたがいじめは徐々にエスカレートし、流石にもう耐えられないという。情けなかった。自分のことにいっぱいで妹の窮地に気が付けなかった自分が本当に情けない。
「包み隠さず話してくれてありがとう。ごめんな気が付いてやれなくて。辛かったよな」
涙声になってしまう。菜々美の前では頼れるお兄ちゃんでありたかったのに。
「ううん、大丈夫。私こそ迷惑かけてごめんね」
「お前が謝ることなんてないんだ。今の学校は辞めて別の学校を探そう。菜々美のレベルに見合う学校となると少し遠くになるかもしれないけど」
菜々美は別の学校に転校した。苗字も母親の旧姓を使用した。だが、転校先でもいじめにあった。
おかしい。そんなはずがない。どうして転校して3日もたたないうちにいじめが始まるんだ?そもそも最初からおかしかったんだ。あんな優しい子がいきなりいじめられるはずがないじゃないか。
菜々美が転校してから4日後、俺は菜々美をいじめている主犯格の生徒の後をつけた。
「やはり黒だったか」
生徒は怪しいスーツを着た大人に封筒を貰っていた。あいつは生島家の使いだろう。家に帰って菜々美には真相を告げることにした。
「私、学校通わなくてもいいよ」
「本当に、いいのか?」
苦渋の決断。俺は今まで菜々美のために働いてきた。だから菜々美が学校を辞めるというのは俺の生きる目標が消えることを意味する。それは菜々美も知っている。だが、そのことよりも自分が傷つくことで俺に迷惑をかけていることの方が菜々美にとって耐えがたいことなのだろう。俺は菜々美の思いをくんで、菜々美の好きにしていいといった。菜々美は学校をやめた。
法的な手続きをして帰ったある日、家に入ると様子がおかしかった。
いつもは玄関先まで迎えに来てくれる菜々美の姿がない。恐る恐る部屋に入る。部屋の中では、菜々美が浮いていた。菜々美は首吊り自殺をしていた。
「ドッキリ、だよな......?」
俺の声はかつてないほど震えている。菜々美のそばに駆け寄って、状態の確認をする。
菜々美の顔は血の気がなく、呼吸が止まっていて心臓も動いていなかった。
それからの記憶はない。
ふと気が付いたときには、耳元で誰かが叫んでいた。あぁ。うるさい。誰だ?いや、叫んでたのは俺だった。
喉が焼けるようにひりひりする。痛みを感じる。手が、足が、額が。心が。
周囲の家具は滅茶苦茶に破壊されていた。壁や机をボコボコに殴った俺の身体は全身が血だらけになっていた。
何時間がたっただろうか。気絶していたらしい。体中がきしむ。現実を思い出してまた涙が止まらない。
それからまた長い時間がたって、自分を取り戻した。菜々美の縄を解いて、瞼を閉じてやる。その時、そばに紙が落ちているのに気が付いた。
「お兄ちゃん、ごめんなさい。死んじゃった♡」
怒りみたいな感情がドロドロになって沸いてきた。無論、これは菜々美の字じゃない。菜々美は殺されたのだ。紙の裏をみると番号が書いてあった。11桁の番号。恐らく電話番号だろう。
「かける以外の選択肢はないか」
俺はそばにあった受話器を拾って、電話をするが電話は通じない。仕方がないので、また落ちていたスマホを拾って電話をする、しかしそれも通じない。
「あぁ。壊したのか」
近所の公衆電話に行き、番号をかける。電話に出たのは女性だった。
「もしもし」
「あ、川霧さんかしら。はじめまして」
「はじめまして」
「私は生島園華です。あなたが殺した陸斗の母です」
「......」
「妹さんの姿をみてどう思いましたか?」
「菜々美は、菜々美は一切関係なかったはずだ!!お前らが恨んでいるのは俺だろ!!!どうして菜々美にあんなこと......」
「関係ない!?本当にそう思っているの?」
生島はヒステリックに発狂した。
「私は、私と夫は今も!陸斗がいない現実に苦しめられているのよ!だったらそれと同じ苦しみをあなたが味わうのは当然でしょ。あなたの妹を殺す計画は夫が立ててくれたの、素敵でしょ?この前の妹さんをいじめようってのは私が考えたのよ」
ダメだ。言いたいことが多すぎて言葉が出てこない。こいつらは終わってる。
「あ、そうだ。今回あなたに電話してもらったのには理由があるの。実は今週の日曜、私たちは陸斗のお墓参りに行くの。もし本当に反省しているのならあなたも来てね。お墓の前で何をしてもらおうかしら。場所は後で詳しく送るわ。楽しみにしてるわね」
電話が切れた。もう俺の心は決まっていた。
その日は文香と一緒に寝た。家の中はぐちゃぐちゃで入れないからだ。
「文香、俺はもう心を決めたんだ。お前には迷惑をまたかけてしまう」
「いいのよ。私の一生はもうあなたに捧げているの。あなたが死ぬのは嫌だけれど、どうせ裁判でも死刑を宣告されるだろうし、されなくても奴らに殺されるのはもう目に見えてるしね」
「ありがとう」
俺は眠りについた。墓参りの日までに菜々美の葬式をした。菜々美のことを思うと辛くて辛くてたまらないが、もうそれも終わる。
***
実行日。墓は由緒ある山の山頂にあった。生島夫婦は先に到着していて、墓に何かを語りかけているところだった。
ブー!
クラクションを鳴らす。こちらをみた二人の顔に絶望が浮かんでいる。それもそのはず。だってこの組み合わせは、大事な息子を殺した最低最悪ののタッグだから。
俺はアクセルを全開に踏んだ。そこに躊躇はない。
ブチャ!
目の前が再び赤い血で染まる。俺は息子と同じやり方で二人を殺してやると決めたのだ。
ドアから外に出て、一応死体を確認しに行く。園華のほうは上半身が吹っ飛んでる、即死だ。
男のほうは以外にもまだ生きていた。どうやら片足がちぎれてもう歩けないようだ。命乞いをしているが聞くつもない。俺は男に馬乗りになって、首を思いっきり絞めた。男のもがきもだんだん力がなくなっていく。そして、男は力尽きた。心臓が完全に停止しているのを確認してトラックに戻る。
「文香、見苦しいものを見せてしまってすまない」
「全然平気よ。あなたの辛さは十分わかるから。憎しみは少しは和らいだ?」
「いや、全然。いいものは何にも得られなかったよ。得られたのはまた文香の手を汚してしまったという後悔だけ」
「もう。何度も言ってるけどそのことは本当に気にしなくていいのよ」
そんなことを言いながら進んだ。
「文香、じゃあもうそろそろ」
「わかりました」
目の前には崖。二人を殺してから文香と心中する。これが俺の計画だった。
「今までありがとう。文香が俺のトラックでよかった」
「私こそあなたが私の運転手でよかったわ」
アクセルを踏む。
浮遊感。地面が目の前に迫ってくる。
「文香、大好きだよ。生まれ変わっても文香と出会いたい」
「私もあなたが大好き」
・・・・・・。
こうして俺の人生は終わった。
書籍化目指してます。気にってもらえたらブクマ、評価、感想などいただけると嬉しいです!
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