dead bee
投稿遅れて申し訳ないです
まだ見ていない人は1話からどうぞ
「麻央どうしてここに……」
窓を開ける。麻央は窓から入ってきた。そして俺の匂いをクンクンと嗅いでから言った。
「うーん確かにこれは濃厚な死の匂いだね」
鈴鹿麻央は猫だった。誰がなんと言おうが猫だった。
小さい頃から小さな虫やネズミを捕まえてきたり (さすがに食べはしなかったが)、毎日の登校では俺を起こしに来るのだがその後俺を放置して近道だって言って塀の上を登って走ってったり、猫じゃらしが効いたり、猫の周回に混ざってて書記をやってたり。まさに自由奔放な猫そのものだった。
そんな彼女との出会いは10年前に遡る、俺達がまだ小学一年生の時だ。
当時某妖怪アニメの再放送がやっていて、学年中の奴らから毎日のように麻央は猫娘だと言われからかわれていたのだが、それを救ったことによる。
まあもっとも救ったというよりも俺がもっと大きな問題を起こしてそっちの方に全ての話題が持ってかれただけなのだが。
それ以来、彼女は俺に親しく接してくれている。俺としては近所の野良猫に好かれてるような感じで悪い気分ではない。
「死の匂いってなんだよ」
思わず突っ込む。
「全ての生き物は死んだ後独特の匂いを出してるの。私はよく虫とかを捕まえてるから嗅ぎなれてるんだけどね…… こんな強い匂いが人から漂うなんて初めて。通学路にある老人ホームからもこんな匂いしないよ」
俺の置かれている危機的状況、どうやらそれを彼女は動物の本能のようなもので感じ取ってるらしい。
「あーそうだぜ。今にも俺は死にそうなんだ。玄関の蜂を見たか?」
「うんバステトもそう言ってる」
新手の神か!? そう思い身構えたが彼女のリュックから顔を覗かせたのは猫だった。
「この子がバステト、和馬の危機に気付いたのはこの子の力も大きいんだよ。この子が街の空気がおかしいって教えてくれたの」
そうだったのか、ありがとうとバステトにおじぎをする。
「さてここからどうするかだな……」
俺の声を聞いて彼女は言った。
「こっちにおいでよ、塀に乗り移ってとりあえず安全な場所まで移動しよう。近所に猫の隠れ家があるんだ、本当は人は駄目なんだけど……」
「頼むぜバステト、俺を入れてくれ」
そう言い俺はバステトの方を見つめた。バステトはこくんと頷いた。
「バステトはOKみたい、行くよ」
彼女に先導され俺は2階の窓から塀に飛び乗った。何回も死んでようやく俺は家から脱出することが出来たのだった。
ズンズンと歩いていく。途中で何回も落ちそうになるが彼女に助けられた。
蜂は未だ玄関にいるらしい。今自宅の中で避難してる家族からLineがあった。
「で猫の隠れ家ってどこなんだ?」
すると麻央は笑って言った。
「下を見てご覧よ」
塀の下を見るとそこは空き地だった。土管や鉄パイプ、廃材などが置かれてる。草は生い茂り荒れ果ててる。
「ここはね昔工事をしようとしたんだけど土地の持ち主が死んでゴタゴタの中で計画が途絶えて、今や猫が隠れられるスペースが沢山ある隠れ家なの」
なるほど、そんな土地があったのか。地元民だが知らなかった。
俺が塀から降りてゆっくり腰を下ろそうとしたその時、麻央とバステトの表情が変わった。
「急いで入って」
俺を土管の中に入るように急かす。俺が入ると2人も入ってきた。中には何匹か猫がいた。そこで俺はある違和感に気づいた。
「どうして外に猫が一匹もいなかったんだ?」
ブーンブーンブーン
羽音が聞こえる。これは蜂だ!!
「遠くに行ってくれ……」
俺達は息を殺して土管の中に身を潜めた。そんな時
ピロリーン、無情にもLineの着信が入る。
「あっ……」
蜂に気付かれた。すぐに土管の出入口は塞がれる。
今にも刺されそうなその時声がした。
「皆の者攻撃を止めい」
蜂はピタリと動きを止める。
「我が死を冒涜したものよ、出てくるが良い。直々に制裁を加えてやろう」
ここは出るべきなのであろうか? しかし命令に従わないと何されるかわからない。俺だけじゃなくて麻央や猫にまで……
俺は土管から出た。そこに立っていたのは俺よりも1回り身長の大きな軍服を着た大人の女性だった。髪は短い金髪に切りそろえられていて、グラマラスで胸のあたりは大きく膨らんでいる。俺の好みのタイプだ、最も殺されそうな今そんなことを言ってる場合ではないが。
「貴様が高橋和馬か、私が直々に手を下そう。我はタナトス、死を司る神。死を弄ぶ貴様を私は許さない」
かそう言う彼女は短刀を抜き、俺に振り下ろした。避けようとしても体が動かない。
俺は死亡した。
第1章 自宅からの脱出 完
累計死亡回数 10回
次回から第2章 女神への挑戦が始まります
夕方 間章 the dead ending futureを投稿し、明日の本編はお休みです