表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死にゲー的人生論 繰り返される3日間と5人の女神  作者: サジキウス
第1章 自宅からの脱出
3/18

the despair and other goddess

少し投稿が遅れて申し訳ない

一話見てない人は先にどうぞ

 また例の神殿に戻ってきた。クロノスは例のごとくこちらを見つめている。


「朝食が焼き魚からトーストになっていたんだが…… ひょっとして俺が過ごした最初の一日と復活した一日は俺が何もしなくとも変化するのか?」


 当然の疑問だ。もし朝食がトーストじゃなかったら俺は妹にバターナイフで刺し殺されるなんて経験をしないですんだわけだ。


 俺の話を聞いてクロノスはうーむと考えてから言った。


「勿論大まかな未来は変わることはないのじゃが、僅かな未来はお主の行動で変化するのかもしれん」


 どういうことだろうか。俺は朝食に干渉できるようなことはしていない。


「だけど変わったことなんて強いていうなら部屋の花瓶の移動と階段をゆっくり降りたくらいだぞ」


 そんなんで朝食が魚からトーストに変わるものなのか?


「お主が下の階に降りた時間はそれでズレたじゃろ。 お主の母親が朝食をトースターと焼き魚にするか迷っていて、でお主が本来より遅く降りてきたから」


「朝食が変わったってわけか? 確かに焼き魚に味噌汁にちんたら食べてたら遅刻しちゃうから素早く口に詰め込めるトーストに変えたって可能性も考えられるわけか」


「そういうわけじゃ」


 なるほどそういういことか。起きてくるのが遅かった俺を見て親は朝食をトーストに変えた。そう考えれば全て辻褄は合う。勿論仮説に過ぎないわけだが。

 朝ごはんの変更を避けるためにも次に時間を巻き戻した後にはノルマをこなしつつスピーディにやる必要がありそうだ。


「クロノス次も頼むぜ」


 急かすような俺の声を聞いたクロノスは言った。


「お主死ぬことに少し軽くなりすぎてはいないか? 勿論余の立場から言うのは躊躇われるのだが……」


 クロノスは少し心配そうな顔をしている。どうして心配する必要があるのか?


「3日間後には余が死のうが生き延びることになろうがどちらにせよお主に力を供給することはなくなる、余とお主は縁が切れるわけじゃ。 その後お主は世界から理不尽に殺されることはなくなるが……」


「なくなるが?」


「変な死に癖が付いてしまったらその後の人生長く生きられないじゃろう」


 たっ確かに……

 最初に死んだ時は軽々しく死にたいと連呼していた自分を後悔していた俺だが今は死そのものに対しての感覚が軽くなっている気がする。これは良くない、非常に良くない。



「ありがとなクロノス、気を付けるよ」


「別にお主を気にかけた訳では無い。 お主の命を救った恩人がその後すぐに死んでしまうのは目覚めの悪いからの」


 クロノスは照れ隠しのように言った。意外に可愛いところもあるじゃないか。


「おう、まあともかく俺は準備OKだ。飛ばしてくれ」


 視界暗転すると同時に目覚まし時計の音が聞こえ目が覚める。この感覚もだいぶ慣れてきた。


 いつも通りのノルマを高速でこなし1階へ。ここもだいぶこなれてきた。




 そしてドアを開けリビングに入ると焼き魚の美味しそうな香りが


「よっしゃあ朝食が焼き魚と味噌汁になってる」


 思わず声に出してしまった。


「何馬鹿な事言ってるの? 早く食べないと遅刻するわよ」


 母の声を聞きながら手を洗いに洗面所に向かった。



 俺の家は2階に両親と俺と妹の部屋があり、そして1階にあるリビングはダイニングとキッチンとくっついている。勿論簡単なカーテンによる仕切りはあるのだが臭いは伝わってくるのだ。

 だが風呂場とトイレと洗面所は一度この大きな部屋を出て廊下を少し歩かないとたどり着けないという構造になっている。


 俺は最新のは注意を払い歩いていると、洗面所に向かう途中床が濡れてるのを発見し迂回できたことができた。これは幸いだ。もしここで滑って転ぶと確定死だったのだろう。大分この世界のルールにも慣れてきた。


「数多くの死にゲーをやって来た俺のゲーマーとしての腕を舐めてもらっちゃ困るわけだぜ」


 しかしながら、テンションが上がってたこともあり手を洗いリビングに戻ろうとしたその頃には俺は別のことを考えていて、行きの時に床が濡れていたのをすっかり忘れていた。


「あっ…」


 案の定濡れた床に滑って転び頭を打ち首を折り俺は絶命した。





 クロノスの力でもう1度起きた所からやり直す。8時20分からやり直すのは面倒だが同じことを繰り返すしかない。今度は死なずに手を洗い部屋に戻ってこれた。


「よっしゃあ、やっと朝食にありつける。ここまで何回死んだんだ?」


 向かいには妹が座っていた。


「お兄やん何言ってるの? 早く食べないと」


 トーストならゆったりと座って食ってられないため話は切り出せなかっただろう。しかし今のメニューは焼き魚、味噌汁、米のYMKトリオだ。そして俺は急いで下に降りたため時間がある。ここは話を切り出す時だ。


「実はな、俺はループしてるんだ。夕方にトラックに轢かれてクロノスって女の子に救われて神殿で台座から戻ってこれたわけ…… どう?」


 我ながら何言ってるかわからない。何から話すか頭の整理が追いついてなかったのだ。これは聞く側からしたらもっとわけ分からんだろう。

 まあいい、妹はかなり聡明な方だし疑問には答えられるだけ答える時間はある。そしてここで協力者を作ればかなり楽になる。


「なるほどお兄様はループして戻ってきたわけですね。アニメの主人公みたいに」


 飲み込みが早いのは助かる。が信じてくれてるのかこれは?


「勿論信じてますよ…… だけど」


 妹はこちらを見て言った。ここで俺は違和感に気付いた。妹がさっき俺のことをお兄様と呼んだこと、そして何より。


 妹の顔は全く別人の顔に変わっていた。黒髪ショートだった髪は腰まで伸びている、そして服は制服は和服とロリータファッションが融合したみたいな服になっている。これは一体どういうことだ? いつ入れ替わった?


「ダメですよお兄様、それはルール違反です」


 そう言うとその何者かは俺の腕を掴んできた。そしてグシャッと引きちぎる。まるで紙細工のように。


「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 激痛が走る。今まで死んだ中にもここまでの痛みはそうなかった。


「いてぇぇぇよ。助けて母さぁぁぁん、警察警察警察。いててててててててててててててててててててて」


 四つん這いになり逃げようとする俺にそいつはのしかかった。


「お母様は隣のキッチンで8時51分までお弁当を作る、そういうルールになっています。あなたの元へは来ませんよ……」


 非情に呟くその声には一切の感情がこもっていなかった。ああせっかくうまくいきそうだったのにまた死ぬのか……


「あっあっあっあっ」


 再びグシャッという世界が暗くなる。やがて意識が途絶えた。







 俺は早く目を開けようとした。そこにはいつものように呆れたようなこちらを心配するようなクロノスの姿が立っているはずだ。さっき妹は俺が話を切り出した途端別人に成り代わった。なにがあったのだ? あれはそもそも人間なのか? ルール違反とは? 色々な思考が頭を循環する。


 クロノスが俺が神の力でループしてるのを伝えるのはルール違反だと言っていたことを思い出す。ああそれか、それなのか?



 目を開けるとそこにはクロノスはいなかった。


「どこだよクロノス」


 すると後ろから弱々しい声が聞こえた。


「ここじゃよ」


 振り返るとクロノスは血まみれで倒れていた。美しい白い髪と羽衣は血で染まり、今にも死にそうな弱々しい声でこちらに呼びかけていた。


 その隣に立っている者がいた。

 あれは妹にすり変わり俺を殺した女だ。その手は血で染まっていた。


 安全領域であるはずのこの神殿に突如現れた敵の存在。まさに脳内の安全神話が崩れていったのだった。



「あらお兄様、こんなところでごきげんよう」



 俺は雄叫びを上げて殴りかかっていった。




死にゲー的人生論


第1章 自宅からの脱出


死亡回数 現在6回

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ