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死にゲー的人生論 繰り返される3日間と5人の女神  作者: サジキウス
第1章 自宅からの脱出
2/18

repeated death

第2話です

第1話を見てない方は先にそちらをどうぞ

 目が覚めるとまた例の神殿に立っていた。目の前にはクロノスがいる。



「おうおかえり和馬」


「なんだったんだよあれ……」


 突如タンスから落ちてきた花瓶、それにぶつかって俺は死んだ。

 前の世界では地震はあんな大きくなかったはずだ、いやそもそも震度3の地震花瓶は普通落ちてこないし、さらに頭に直撃するなんて運の悪いどころではない。

 まるで世界がそうなるように仕組んだかのように何者かの作為を感じる。




 そんなことを考えているとクロノスはこちらを見て言った。



「おお和馬よ しんでしまうとは情けない」


「ドラクエかよ! ふざけんな、こっちは死んでるんだぞ。てかさぁ、なんであんないきなり死ぬことになるんだ。というかそもそも俺の名前知ってるのかよ」


 つい殺されたショックから感情が吹き出してしまう。しかしクロノスは比較的冷静にそれを流した。


「まあまあまあ待て、落ち着け落ち着け。だがこれでルールが分かったじゃろう、この世界の全てはお前の敵なのじゃ。何一つ信用出来ない、そう余以外の人間はな。森羅万象その全てがお前の命を狙っていると考えろ。そして余を深く信頼するのじゃ」


 なるほどクロノスの言いたいことはわかった。自分を殺そうと世界が働きかけてるのだろう。そのためどんなに低い確率でも起こりうる死は再現してくる。


 知人が殺人者になる可能性はゼロではないんだろう。だが……



 俺には友達も家族もいる、信頼できる人間は沢山いる。彼らは決して俺を殺そうとはしないだろう。実は俺に以前から恨みを持っていたなんて可能性もゼロじゃないが低い。


 上手く彼らに協力してもらえば俺は安全な所にいながらクロノスを今にも殺そうとしてる計画を妨害させることが出来るはずだ。



「この世界が全て俺の敵だって? 俺には信頼できる家族や友達がいるぜ、彼らだったら相談したら協力してくれるはずだ」



 ここまで言ったところで思った。神の存在や俺が死んでも生き返ることを他の人に言いふらしていいのだろうか?

 クロノスの顔を見ると意外な顔をしていた。


「……そうか余としては人との接触がない方が生き残り安いと思うんじゃが好き勝手しろ」



 クロノスは不貞腐れたように言った。自分以外に信用出来る人間はいないと言ったことを否定されてムカついているのだろうか?


 さっきは自分に敬語を使ってこないって理由で不愉快になっていたしこの神は頭も幼女レベルになっているのかもしれない。ロリコンなら怒ってるクロノスを可愛いなと思うんだろうが俺は残念ながらそうはできてない。



 さて閑話休題


「俺の時間を戻して欲しいんだが、その前に作戦を考える時間をくれ。 あともう一つお前の存在を他の人に話してもいいか?」


「好きにするがいい、もう余はルールを一つ破ってる二つも一つも同じじゃ」



 その時神殿の空気がまるで凍ったかのように冷たくなった。


「いえ、それは違うと思いますが」


 ふと背後から声がした気がした。酷く冷淡で恐ろしさも感じる声だ。


「え……?」


 しかし、振り返るとそこには何もいなかった。気のせいか。




「まさかの……」


 クロノスは呟いた。一体なんだ?



「それよりお主もう作戦は立てたのか?」


 クロノスは話題を変えた。それに強引さを感じつつも俺は乗ることにした。


「ああこれで行けるはずだ」


 作戦はこうだ。確か今日の朝は家族全員で朝食を食べていたはず、その場で話を切り出す。そして協力者になってもらう。


「行くぞおおお、今度こそは3日間生き延びてやる」




 台座に立ち目を閉じる。すぐさま暗い闇に浮かぶような感覚になる。そして目覚まし時計の音が聞こえたので目を開けた。さっきはそこまで見る余裕はなかったが俺は目覚まし時計を8時20分にセットしていたらしい。

 なにはともあれまた同じ朝に戻ってこれたわけだ。




「とりあえず地震が起きる前にと」


 花瓶を移動する、そして念のためタンスや電球など落下しそうなものから離れておいた。

 5分も経つと案の定地震は起こっただが今回は俺は無傷だ。今回ばかりは俺の勝ちだ。地震が終わり俺は部屋のドアを開けた。

 そして一階のリビングへ降りようと階段に足をかけたその時



「あっ……」


 階段は普段では考えられないほどの滑りを見せ俺は階段を転げ落ちた。そして当たりどころが悪くて死んだ。







「お主はアホなのか」


 目の前に怒ったような呆れるような心配してるようなそんな顔をしたクロノスが立っているのが見える。辺りを見渡すとまた神殿だ。


「そんなに怒らなくてもいいじゃないかよ…… 俺はお前のためにやってるって所もあるんだぜ。それにまさかあんな階段が滑るなんて予想外だ」


「うむ…… 確かにそうじゃな。神気なく怒ってしまいすまないな」


 しょんぼりと謝るような素振りを見せる。神気なくとは大人気なくみたいな意味だろうか?


「いやいいんだぜ。ていうかクロノス、そんなふうに謝れるんだな」


 実は俺が思ってる以上にクロノスはいい神なのかもしれない。


「うむ余も自分が悪いと思ったら謝る。2000年も前のことじゃ、余のミスで大陸が一つ沈んじゃった事があっての。その時は住民を救出した後、誠心誠意謝ったものじゃ」



 前言撤回だ、この神ヤベーやつだ。とはいえ彼女は大真面目に言っているみたいだ。おそらく人間と神の感覚は埋められないくらいの剥離があのだろう。



 そんな雑談を終えてから


「さてと」


 気分を切り替え台座へ向かう。今回の死は回避余裕だろう。


「クロノス頼むぜ」


「任しておけ和馬、では行くぞ」



 視界が暗転する。目覚まし時計の音が聞こえる。再び自室で目を覚ました。いつもと同じ8時20分だ。


 花瓶をどかし階段を手すりをつかまりかなりゆっくり降りた。そして朝食の席に座った。ここまでは順調だ。


「今日の朝食はトーストか」


 俺の時は味噌汁と魚と米だったのだが品目が変わっているのだ。何故だ? 何やら悪い予感がする。

 妹の方を見ると食パンにバターを塗っている。


「はい、お兄やん」


 そう言って妹はバターナイフを差し出してきた。


「おう」


 受け取ろうとしたその時、妹の手が滑った。


「ああああああ」


 バターナイフは首筋に向かい俺の頸動脈を切断した。また俺は死んだのだった。




死にゲー的人生論


第1章 自宅からの脱出


死亡回数 現在4回

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