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死にゲー的人生論 繰り返される3日間と5人の女神  作者: サジキウス
第1章 自宅からの脱出
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the beginning of the world

しばらく一日一話ペースで投稿してきます

 人生で人は何回死にたいと言うんだろうか?



 思い返せば俺はことある事に死にたい死にたいと言ってきた気がする。でも本当に死にたいと思ったことは1度もなかった。


 むしろ生まれ変わりたい、自分がぶち当たっている困難その全てを放棄したい。そんな気分を死にたいという言葉で表していたんだろう。

 この俺、高橋和馬は今こんな状況になってそう思う。



 俺は今死にかけていた。

 全身から血が抜けて体温が下がっていく、寒い。耳鳴りは止まない。視界は完全に途絶え周りの状況は何一つ分からない。



 ただ直前俺が歩道を歩いていたこと、そして車のクラクションのような音や悲鳴を聞いたこと。それらから判断するにどうやら自分が歩いていた歩道に車が乗り込んできたんだろう。

 そして自分は死んだ。



 正確には意識がある以上をまだ生きてるんだろう。だがもう助かる見込みはないことが自分で分かっていた。

 ほらそんなこと考えてる内に耳鳴りも止んで……






 あれ?



 何故だか急に視界が明るくなる。目も開く。

 何故だ? 様々な疑問が頭に浮かぶ。あの状況から回復するなんて有り得ない、というかそもそも目が潰れていたはずだ。


「なんだよ……これ」



 俺は起き上がった。自分を見つめてみると傷一つ付いてない。

 あの事故は夢だったのか、いやそうとは思えない。あの痛みはいやに現実的だ。



 自分が立ってる部屋を見てみる。神殿、そう呼ぶのにふさわしいような建物だ。

 大きさは小学校の体育館くらい、綺麗な装飾が施された柱が白い大理石の床に一列に並んでいる。そして奥の方に台座のようなものがある。俺はとりあえずそこへ近づいてみることにした。



 少し歩くと台座に到着した。幾何学的な模様が書かれている。そしてそこに書いてある紋様は奇妙でなんというか人が作ったもののように思えなかった。

 そこで俺は一つの可能性に至った。



「ひょっとしてここは死後の世界じゃないのか」


「その通りじゃ」


 思わず口に出してしまった発言に対して、背後から返事が聞こえる。振り返るとそこには小学校高学年くらいの女の子が突っ立てっていた。

 髪は透き通るように白く肩まで伸びている、顔は今まで見てきた女の子の中でも最高クラスに可愛いというか人間離れしてるというべきか。着ている服は絵本で見たことがある。羽衣という奴だっけか?

 とても人間では到達出来ない芸術品のような美しさを持ったその子は独特なオーラを漂っていた。



「ほう、余の神気を浴びても平然と立っておるとはのぉ」


「はぁ神気? って君は? ここはどこ?」



 募る疑問が一斉に噴出した。

 幼女はそんな俺を見て呆れるようにして言った。


「まあ待て、ここにいきなり連れてこられて疑問が湧くのは分かるが一つ一つ答えていくから落ち着け。まずお主は自分が死んだことを気づいているな?」


 まさか幼女に落ち着くように諭されることになるとは


「ああそんなことだろうと思ったぜ」


「うむ、なら話は早い。余は神じゃ名前はクロノス、正式名称は違うのだがそう呼ばれておる。そしてここは余の神殿じゃ。本来はただの死者はここに呼ばれないのだがな、特別な用があり呼んだ」


「なるほどOKクロノスかよろしくな」



 しかし俺の言葉を聞いたクロノスは少し驚いたような顔をした。


「えっ何か不味いことを言った?」


「お主の飲み込みの速さに驚いてな。それとお主、余が神であることを忘れてはないか」


 なるほど彼女は俺にもっとへりくだった態度をとって欲しいと思っているらしい。俺だって神には試験前にはいつも祈ってはいたが、実物がこんな幼女だとね

……



「だってこんな小さな女の子に敬語を使ったりとかは」


 そう言うと同時にクロノスは光りだした。


「うわああああああ目が目が」


 強烈な光に目が痛くなる。とはいえ先程の事故で目が潰れたのよりはマシだが


「ふっふっふっ目を開け、これが余の真の姿だ」


 目を開くとそこにはクロノスが立っていた。

 だが様子がおかしい。


「身長が伸びている…?」


 身長が140cmくらいだったのが10cmくらい伸びてる。それでもまだ小さいが。

 いやそれだけでない、顔は大人びた感じに変わっているしまた胸も大きくなってる。


「フフフこれが余の真の力よ、これからは幼女などと侮らないことだな」


 神だから自分の大きさも可変なのだろうか? 大きくなった彼女はなんというか美しかった。幼子の姿の時は可愛さというものが美しさを上回っていたように思える。だが今の彼女は壁画や彫刻になってそうなそんな美しさだった。



 俺が息を飲んでるその時プシューという音がした。段々クロノスが縮んでいく。そして元の姿に戻った。


「風船か何かかよ…」


 思わず突っ込んでしまった。


「今の余の力ではこんな短時間しか真の姿は保てぬか、まあよい。余の真の姿にメロメロだろ?」


「いや別に…… そんなことより本題に入っていいか」



 ぶっちゃけなぜ俺が特別にここに呼び出されたか知りたかった。

 俺はただの死者でなく何か特別なものを持っているのだろうか? 何か特別な事をやらされるのだろうか?



「うむお主をここに呼び出した理由は一つだ、生き返られせてやろう。ただし余の命を救ってくれ」


「はぁ?」



 色々と飲み込めない。何を言ったんだこの幼女は? 余の命を救ってくれだと?


「お主生き返りたくないのか?」


「いや生き返りたいけどさ、そうじゃなくてそんなこと出来るのかよ? というかお前の命がどうって」


「そうそこじゃ」


 クロノスは溜めてから言った。


「余は3日後に殺される、だがそれは生者にしか止めることが出来ない。 勿論死者蘇生はルール違反じゃ、じゃが余は死にたくない」



 クロノスは語り出した。仲間の神のことを


「本来この世界には沢山の神がいたのじゃ、じゃがもう生き残ってる神は数人しかいない。 人が科学を発達させ自然のメカニズムを解き明かし神の領域を犯した時その神は死亡するのだ。西暦以降実に多くの神は死んだ」


「よく分からんがつまりあれか。火が神が起こしたものじゃなくて酸素と物質が結びつく現象だって判明したら炎の神は死ぬみたいな」


「そうじゃお主はさっきから飲み込みが早くて助かる。人は数を増やし、文明を築き、この世界の全てを科学で暴こうとした。そして多くの余の仲間は死んでいった。 彼らはみな後悔はなく、笑って死んでいったのじゃ。まるで自分が育てていた小鳥が巣立つのを見る親鳥のように。じゃが」


 クロノスは俯いて言う。


「クロノスは死にたくないのか?」


「そうじゃ、余は死にたくない。 他の神みたいに笑いながら死ぬなんてゴメンじゃ。他の神が全て滅んでも自分だけは残っていたい。元々余は時の神じゃ死ぬのは当分先のはずじゃった、だが」


「もしかして人類が時間について完全に解き明かそうとしているのか?」


「うむそうなのじゃ、3日後に東京大学のとある研究所が時間移動の基本システムを完成させる。そうしたら時間の概念は完全に科学のものになる、すなわち余は死ぬのだ」


 クロノスの目は必死だった。心は痛むがそれを俺は突っぱねた。


「つまりお前は自分が死にたくないから人類の科学の歴史を遅れさせるわけか。そんなこと考えるなんて神様失格かよ…… 俺はそんな犯罪の片棒担がないぜ」


「そうかならこうじゃ」


 クロノスは指をクイッとした。



「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」


 目の前が真っ暗になると共に強烈な痛みが襲う。全身の傷は元に戻っていた。何も聞こえないし何も見えない。車に轢かれ死んだその時のように。



「余の時間操作能力でお主の体を元に戻していたのじゃぞ。と、こんな時に喋っても聞こえぬか。 よい、元に戻れ」


 傷が消える。視界が元に戻る。


「これが死の恐怖じゃ、もう同じ痛みは味わいたくないじゃろ」


 俺に選択権はなかった。





 俺は台座に立ち目を閉じた。クロノスの声が聞こえてくる。


「さて台座に立ったか。これよりお主を下界に戻す、時間はお主が死んだ日の朝だ」


「この3日間死んだら余が時間を戻すからお主が死ぬことはない」


「じゃが神から力を貰い生き続けているお主は世界にとって排除すべき異物じゃ、つまり」



「世界のあらゆる全てがお主の敵となる、まあ死が確定した時点で時間を戻すから痛みはほぼ無いはずじゃ安心せい」


「えっ今なんて?」


 不穏な言葉が聞こえたが!?


 言い終わると共に自分は暗い闇の中に放り出された。すると大きな音が耳元で聞こえる、これは目覚まし時計のアラームだ。




「はぁはぁはぁ戻ってこれた」


 さっきまでの事は夢なんかではない、まだ痛みを鮮明に覚えている。


「とりあえず状況を整理だ、東大の時間についての研究所に行けばいいんだろう。えっーとまずは」


 そんなことをダラダラ考えている内にグラグラと床が揺れ始めた。


「そういえば朝に震度3くらいの小さな地震があったんだっけ、寝てて気付かなかったけど」


 すると棚の一番上にあった花瓶が揺れて落ちてきた。


「あっ」


 花瓶が頭にあたり俺は絶命した。




死にゲー的人生論


第1章 自宅からの脱出


死亡回数 現在2回

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