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塩キャラメル

作者: 8番線快速

  昨日、大好きなおじいちゃんが亡くなった

 ママはとおくに行ってしまってもう会えないの

 そう言ってぼくに説明してくれた


  だけどそれはわかっていた

 ぼくももう子供じゃないんだ、それくらいわかる


  今はお葬式が終わって、まだぼくには

 よくわからない時間が来ている

  ママとパパがたくさんのおじさんやおばさん

 おじちゃんやおばちゃん、ちがうお家の

 小さい子とまでお話していた


  ぼくはポッケからキャラメルを取り出し

 つつみの紙を開けて口へと運ぶ


  まだぼくの口には大きかったのか

 噛むのは少しむずかしい


  飴のようになめているとフニャっとし

  やわらかくなってきた そうすると

  だんだんと口の中いっぱいに

  独特の甘さと口の中からの甘いにおいがする


 おかしいな?おとといの病院で食べた

 おじいちゃんの寝顔を見ながらに食べた、

 おじいちゃんにもらった塩キャラメルの味がした


 おじいちゃんは優しい人だったんだ

 ぼくはおじいちゃんが大好きでだった


 よく僕にキャラメルのお話をしてくれたんだ


 「義之よしゆき キャラメルってのはすごいんだぞ」

 これがお決まり 僕にいつも言ってくれたんだ


 その言葉に毎回同じに飽きずに僕はこう言う

 「なんで!!?なにがすごいんだろう!!」

 こう言うとおじいちゃんがしわを寄せて笑うんだ

 くしゃってするおじいちゃんの笑顔が好きだった




「おい。中畑なかはた。何してんだ。もう帰るか?あ?」

 そこでハっと意識が戻ってきた。

何してんだ俺。勤務中だぞ。やってしまった。


「す、すいません!!い、いま資料持ってきます!!」

 急いで、作っておいた資料を抱え会議室へ急ぐ。

大失態だ。ただでさえ評価が低いのに。

そう思いつつも上司の背中を見ていると先ほどの

俺に対する暴言が蘇ってきた。


 クッソ。なんなんだ。二週間働かされっぱなしで

まともに働いてられるほうがおかしいんだ。

お前だって倉庫整理と言って仮眠室へ行ったり

面倒なことはこっちに押し付け昼食に行ったりして

あげく怒鳴り人を貶すくせに決算書を間違えて

そんなんで給料をもらえるならいい仕事だな、と


 気づくと内心で悪態をついていた。こうでもしないと

やっていけないから。仕方ないと思っていた。

だが、昔からのコンプレックスでもあったのだ。


 学生時代もテストの本当に小さなミスも

見つけ先生に質問に行ったり、仕事を始めてからも

取引先の失態、自分の管轄外までのミスを見つけてた。

だが企画会議でいいところはと聞かれると

途端に返答に困るようなクズになっていた。


 人のミスだけ見つける「揚げ足クン」と言われる

 会社のお荷物になっていたんだ。

俺はそのいたたまれない視線がもう嫌だった。




 そんな折に母が倒れたとの連絡がきた。

俺は会社に休暇をいただいて駆けつけた。


 母は元気そうにリンゴを食べていて

あら義之。なんて言ってくれちゃったりして

正直何もなかったので良かったと思った。


 母は何事もなくとも検査などで入院するようで

俺も数日間こっちにいることを決めて

実家に泊めてもらうことにした。


 数日の休暇を久しぶりの実家で過ごす。

実家で使った布団は暖かくて

誰かに抱きしめられているようでもあった。



 最後の日なので挨拶がてら見舞いに来ると

あと1週間もすれば検査も終わり

すぐに退院できるとのことであった。


 そんなことを聞いたからなのか

 今日はなぜか母の病室に来るとその光景は目線の

 高さは違えど昔に見覚えのあるものに見えた。


 そして母がここ数日話し相手がいなかったのか

思い出話を淡々と語り、自分は適当に相槌を打つ。

特にきちんと聞いていることもなかった。


 俺は病室の机の上にあるキャラメルを手に取って

数個をポケットへ入れ一つを口に運んだ。

とっても甘くて、そう何個も食べれたものじゃない。


 よく小さいころは好んで食べていたなと思ったりした。



そんなこんなしていると最後にこんなことを母が言った


「おじいちゃんね、義之は絶対にすごい人になる。

 物の悪いところを見える人はいいところも見える人なんだ。

 義之の大きくなって偉大なところを見たかったよ。

 って言ってたのよ。結局ただのサラリーマンだけどね」



 その時におじいちゃんが死んだ病院だったのを思い出した。

母は、見透かしたかのように言う


今、使ってるこのベット。お父さんとおんなじところなの。



そう言われた時、なぜかわからないけれど

走り出していた。向かう先はおじいちゃんのお墓。

俺は走りながら思い出していたんだ。



今まで忘れていた『キャラメル』のことを。



  笑顔のおじいちゃんはこういう風に

 まいどまいど得意そうに言ってくれる

 

 「キャラメルってのはいい点と悪い点

 両方がなきゃおいしくないよう出来ているんだよ」


 そう言ってぼくに、右手でキャラメルを

 つまんで見せつけるように言う


 「義之、キャラメルのいいところはわかるかい?」

 おじいちゃんはとても簡単な質問のようにいう

 小さなぼくはとても真剣になやんでいつも

  とーっても甘くておいしいところ と

 こんなありきたりのことを言う


 「そうだね じゃあ悪いところはあるかい?」


 どんなに毎回一緒の答えでも、いつもと

 おんなじ崩れた笑顔でうなずくおじいちゃん


 ぼくはこれもいつもと同じ通りにいう

  いっぱい食べると虫歯になる や

  食べてると歯にくっつく や おおきい など

 悪い点をたくさん言う

 なぜか悪い点はたくさん頭におもいつくから


 そうすればおじいちゃんは常に

 「よく気付く子だ だけどそれがなければ

 甘くはないし、食べごたえはないし

 なにより大人からこどもまでのたくさんの人に

 食べてもらえない だからキャラメルはね

 こんな風にできているんだ」


 いつもこんなことを言っていた

 こどものぼくには全然理解できなかったけど

 褒められているとわかっていたからよかった




 おじいちゃんのお墓の前につくと

息を切らせながら伝えたいことを言葉にする



 「おじいちゃん。俺さ…いままで自分の…

  人の揚げ足を取ること…注意ばかりされてて…

  コンプレックスだった。でもね…救われたよ。

  こんなんで、いいんだ。こんなんでも…

  結局は自分次第だったんだね…ありがとう」



今だからおじいちゃんのキャラメルの話が分かる。

 自分が認められたような気持ちだった。

 自分は間違ってないよと言われたようだった。

 自分を肯定されたように撫でられた気がした。


 今、俺は今まで忘れていたことを

謝りもせずにここに立っている。

でも、今だけはおじいちゃんに甘えてると

そういうことにしてもらえたらいいなと思った。


そしてポケットに手を突っ込んで一つの

お菓子を取り出す。包みを開け口に運ぶ。


「あぁ…とーっても甘くておいしいや…」


 そうつぶやき食べるキャラメルは

昔におじいちゃんの寝顔を見ながら食べた

少ししょっぱい塩キャラメルの味がした。

いろいろ意図をもって書きました。

これ書く前100均の塩キャラメル食べていまして

おいしくて思いついたストーリーです。


誤字脱字あればご指摘お願いします。

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