6 Let'sサボり!
その頃アイ様達のいる雲の上では、楽しそうな声が響いていた。
「良かった〜♪ ほら、なんとかなったよ、キューピーさん!」
声高らかにアイ様が言うと、キューピットは微かに眉を寄せて俯く。
「キュー・・・」
「・・・? ・・・どうしたの? キューピーさん」
明らかに『キューピーさん』という単語にため息をついたキューピットに、アイ様は全く気付かずにその顔を覗き込む。
「・・・いえ・・・なんでも、ありませ、ん・・・・・・」
大きな机の前で再びため息をつくキューピットに疑問を抱くが、アイ様はまた画面の前に座ってコントローラーを握る。
「・・・アイ様、あんまり画面に近付いていては視力が落ちますよ」
キューピットはアイ様を案じて注意するが、逆にアイ様は楽しそうな顔をしてチョイチョイと手招きをする。
当然キューピットは不審に思ったが、動かしていた手を止めてアイ様の方へと歩み寄る。
アイ様が恋愛実験を始めてから、キューピットの仕事がはかどらなくなったのは言うまでもないだろう。
「ね、ほら、キューピーさんも一緒にやろ!」
アイ様はニパッと笑ってコントローラを差し出す。『龍クン』のシールが貼られたコントローラーだ。
「私までお遊びに付き合わせるつもりですか?」
「いやいや、そう言う事じゃなくてさ・・・キューピーさんも、たまには息抜きしよ?」
ね? と言って小首を傾げる姿はなんとも可愛らしいが、今この状況で、キューピットはそれを受け入れるわけにはいかなかった。
「いえ、私は遠慮しておきますよ。アイ様の分の仕事も少しはやっておきたいですし、何より私の分の仕事も今の所まともに進んでいるとは言えませんので」
「え、まさかキューピーさんもサボり?」
「も、と言っている時点でアイ様は言葉的にはサボっているという事になりますが・・・・・・」
「ぅえ? や、やだな〜、私がサボりなんてするわけないじゃん、アハハ〜・・・・・・」
キューピットの指摘にアイ様は脂汗を浮かべながら目を泳がせる。
そんなアイ様をみてキューピットは深い深いため息をつくと、置かれている『龍クン』のコントローラーをスイッと拾い上げて画面の前にいるアイ様の隣に座り込む。
「え、キューピーさん?」
カチャカチャとコントローラーの動かし方を確かめ始めるキューピットに、アイ様は驚きを声にする。
キューピットは常にかけていた眼鏡を外して懐に仕舞い、黒く短い髪をクシャリと掻き揚げて乱す。
「・・・あなたが言ったんでしょう? たまには息抜きも必要だって。・・・まぁあなたは息抜きしすぎですけどね」
そう釘を刺すのも忘れずにキューピットが言うと、アイ様は屈託のない笑顔で返事をした。
「うん、そうだね!」