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4  望まれざる合コン

 ふわりと雪が舞う中、龍達はとあるレストランの中で、人目もはばからずにギャアギャアと騒いでいた。

「なぁ、ホントにあの利沙さんも来るのかよ?」

 その中の1人、タカシがそう言うと、ショウヤはニンマリと笑って答える。

「あぁ、それなら大丈夫だぜ。今日来る奴の中に俺の知り合いがいるんだけど、そいつが連絡くれて、ちゃんと利沙さんも雛子ちゃんも来るってさ」

「おぉ、マジ!? ラッキィー♪ 今日来て良かったぜ!!」

「だっろぉ〜!? ちなみに、俺は利沙さん狙い」

「そうか? 俺は断然ヒナちゃん狙いだけどな〜♪ あの女の子らしいフワフワした感じが俺のツボにストライクなんだよな〜」

 そんな風に騒ぐショウヤとタカシ、そして益々不機嫌になっていく龍を見て、省吾はオロオロとうろたえる。

 そんな中、その全員を無視して龍は異様に甘ったるい香りの煙草の煙を吐き出していた。少々マイナーな物だが龍のお気に入り、『BLACK DEVIL』のピンクローズ味だ。香りはまさしく甘ったるい感じだが、龍はそれを気に入って愛飲している。

 だが、そのパッケージやフィルター部分は蛍光ピンクのけばけばしい色をしている為龍は人前で吸うことはあまりなかったが、今日はそんなことなど気にしていないかのように人目を全く気にせずにスパスパと煙草を吸い続けている。

 それ程機嫌が悪いのだろう。

 当然その友人の様子に気付いた省吾は、煙草の副流煙を避けながら龍に話し掛ける。

「なぁ、龍・・・今からでも抜けないか? お前嫌いだろ? こういうの」

 そんな省吾に、龍は不機嫌な表情を欠片も隠す事なく睨み付ける。

「あぁ・・・もういいよ、面倒臭ぇし。ずっと黙ってりゃすぐ済むだろ」

 そう言いつつも、煙草を吸う手は止まらない。龍はまた煙草の煙を吐き出すと、タカシ達を一瞥する。

「つーかよぉ・・・なんだよ、入る直前に確認したけど、ここは言わば『高級レストラン』なんだろ? そんなトコであいつら、あんなバカみてぇにはしゃいでていいのかよ? 他の客の迷惑だぜ?」

 龍は話しながらもまたも煙草の煙を吐き出し、吸殻を灰皿にグシャリと押し付けていた。その灰皿はもう、数本の吸殻で汚れていた。

 そんな龍の話を聞いて、省吾は、少なからず龍にもマナーと言うモノがあるのだと知った。

 同時に、人目をはばからずド派手な煙草を吸っている未成年も龍なのだが。

「まぁ、それもそうだな。・・・おいタカシ、ショウヤ、他のお客さんの迷惑になってんぞ? 少しは黙っとけよ。そんなんじゃ、今日来る女の子達にもモテないぞ?」

 省吾が注意を促すと、タカシはおどけた顔をして隣にいるショウヤを小突く。

「全く、お前等って奴は・・・・・・。ここには、全額ユキの負担で来たんだぜ? 少しは遠慮って言葉を学べよ」

「えぇ〜? 何言ってんだよ〜。お前も遠慮ナシに煙草なんて吸ってんだろ? だから、おあいこって事で♪」

「語尾が気色悪ぃ。喋んな」

「ひ・・・酷っでぇな・・・」

 そんな他愛のない話をしている中、不意にレストランの入り口の戸が開く。

 誰だろう・・・。

 そんな思いを胸に龍達一同が振り返ると、数人の女性が戸の中へ入り、それぞれ小さく話しながら辺りをキョロキョロと見回しているのが見えた。

 端から見たら不自然極まりない様子だったが、タカシはその人物等を見た瞬間、パッと顔を輝かせて立ち上がる。

「亜紀ー、こっちこっち!」

 まるで花火大会の中で暫しはぐれてしまった友達を呼ぶような声でタカシは言い、入ってきた女性達の中の一人がピクリと反応して振り返る。

「あっ、タカシ〜! ごめん、遅れちゃって!」

「ちょっと亜紀・・・中で大声出しちゃダメだよ、ここ、その辺のファミレスとは全然違うんだから」

 タカシ同様、食事を摂る周りの人への亜紀の無遠慮さに、流石に店の人に怒られると思った利沙は釘を刺す。

「分かってるって・・・ほら、あっち行こ? あれが今回の合コンのメンバー♪ かっこいいの多いでしょ♪」

「ああ、うん、どうでもいいよそんな事。それより、私はここのデザートが食べたい・・・」

「あまたせ、タカシ! ほら、はちゃんと利沙も連れて来たよ♪ もちろんヒナちゃんもいるよ〜! もう豪華勢揃い? みたいな!」

 レストランの料理を急かす利沙を無視して亜紀はさっさとタカシの隣りへと座り、他の皆も席に座るよう促す。

 そう、今更ながら当然だが、今回の亜紀の目的は合コン。有名レストランの名に惹かれた利沙とは目的が違うのだ。

(・・・利沙、今日は最後まで付き合ってもらうわよ)

 そう訴える亜紀の闘志を燃やす目を見れば、それはすぐにわかる事だった。

(こ・・・っんの・・・! 人がおとなしく付いて来てやったって言うのに・・・! もう意地でもデザート食べて満足して帰ってやる!)

 負けじと利沙も亜紀を見返し、無言で席に着く。

「ねぇねぇ利沙ちゃん、君って亜紀の友達なんだよね? 今まで見たことないけど、もしかして合コン初めて?」

 席に着いた瞬間に不躾な質問をするショウヤを、利沙は眉をひそめて、一点の笑みも含まずに言う。

「・・・悪い?」

「え・・・あ、いや・・・・・・」

 端から見れば睨んでいるような利沙の目付きに気圧されたのか、ショウヤは冷や汗をかきながら目を泳がせる。

 そんなショウヤを哀れむような表情で一瞥し、タカシは向かいに座る亜紀に小さな声で話し掛ける。

「・・・なぁ、どうしたんだ? 亜紀、利沙って子・・・なんか機嫌悪いのか?」

「いや・・・そういうわけじゃないんだけど・・・あー、なんて言うか・・・」

「あ? どうしたんだよ?」

「それがねー・・・最初に合コンって言わないで、無理矢理連れて来ちゃったのよ。・・・店の名前出したらすぐにおとなしくなって付いて来たけど、それまでスッゴイ怒ってたもん。利沙、合コン嫌いなんだって」

 亜紀のその言葉を聞くと、タカシは成る程、という顔をして理沙を見る。

 未だ機嫌の悪い利沙は、ウェイター出された水を無言で飲み、音を立ててテーブルに置いていた。

 同時に、ウェイターに出されたメニューを見て、いつもより幾分か低い声で注文を済ませている。

(・・・デザート・・・)

 ようやく念願のデザートを注文できた利沙は、先程よりは機嫌のよさそうな表情で窓の外の景色に目をやる。

 と、同時に目に入ったモノ。

「・・・あ? 何見てんだよ」

 そこにいたのは、濃いピンク色をしたフィルターの、利沙から見れば悪趣味な柄の煙草を吸う、恐らく同学年代だろう男性、龍だった。

 龍が利沙の視線に気付いて睨み付けると、利沙はそれ以上の鋭い眼光で睨み付けて迷惑そうに言う。

「・・・何よ、あんた。未成年でしょ? こんなトコで臭い匂いなんか撒き散らさないでよ」

「あぁ!? んなの俺の勝手だろ!? いちいち話し掛けんなよ」

「はぁ? ふざけないでよ。臭いって言ってんでしょ? せめて吸うのやめてよ」

 ただでさえ元から機嫌の悪かった二人は、この会話でますます険しい表情になっていく。

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