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13  お気に入り以上愛してる未満

「・・・おお、買うもん買ったか?」

 既にユキの分の会計を済ませ店の外にいた龍が、出てきた利沙に手を振り自身場所を知らせた。それに気付いた利沙は機嫌良さげに歩み寄り鞄を持ち上げると、ぺしぺしと叩いて見せた。

「当然よ、まだ全部読んでいないのに」

「読み終わってたら買わなかったのか?」

「そんな訳ないでしょ、ポルノが出てるのに買わないなんて私に出来るわけないわよ」

「・・・へー、そう」

 嬉々として誇る利沙に、興味なさそうに生返事を返す。しかしそれを咎める事もせず、利沙は買ったばかりの雑誌を取り出してページを捲った。

「ん、そう言えばさっきの人は?」

「ユキか?」

「そう、その人」

 雑誌から目を離さず、文字を追いながら尋ねる利沙。その器用さに龍はある意味尊敬する、などと感心しながら店の自動ドアへと視線を移した。

「今は山崩してる筈だけど・・・そろそろ来るんじゃねーか?」

「山?」

「ああ、山」

 雑誌から以外にも簡単に目を離し、疑問符を浮かべる利沙。龍はその様子に苦笑すると、無機質な音を立てて開く自動ドアを指差し利沙に合図した。

「ほら、来た」

 龍の声と共に、うー、と疲れたようなユキのため息。利沙は振り向くと、出てきたユキに手を振った。

「遅かったけど・・・何してたの?」

「山崩し・・・・・・」

「だから何よそれ」

 先程から続く意味不明な単語に利沙はむっと顔をしかめると、肩を竦めるユキを無視して龍に向き直った。それに龍はユキの方をちらりと見やると、首を振って頭を掻いた。

「ユキが言うなって」

「ゴメンね、利沙ちゃん。なんかあんまりにも言いふらしたら変人扱いされるって前龍に言われたの思い出してさ」

 利沙は見てはいないが、先程のユキの様子までセットで見てしまったらドン引きするに決まっている。大分前にユキに釘を刺したのを思い出すと、龍はその時の自分に心の中で敬礼を送った。

「・・・まあ、どっちでも良いけど」

 そんな2人の怪訝そうに目を細めるも、直ぐに自身を納得させ踵を返した。

「それより、ユキさんの家に行くんでしょ? 早くしないと」




「ねえ、利沙ちゃん」

「ちゃんは付けないで。気持ち悪いし私に合わないわよ、ユキさん」

「知り合って早々酷いな〜、良いじゃん可愛いよ」

「全然」

 家までの道を先導する後ろで、ユキは雑誌を黙読する利沙に迷惑な程ちょっかいを掛けていた。それを関心を全く持たずに受け流す利沙は、特に煩わしそうな表情をせずに黙々と的確に龍の後を着いて行く。

「だーかーらーさ、利沙ちゃん」

「ちゃん付けは・・・」

「もう話進まないから流してよ利沙ちゃん。・・・俺、さん付けで呼ばれんの嫌なんだけど」

「私は嫌じゃないわ」

「俺が嫌なんだってば。もしかして龍の事もさん付けで呼んでんの?」

「・・・覚えてない」

 しつこく話を続けるユキに利沙は流石に眉を寄せるが、ふとした質問に空を見上げ暫く考え込み、ポツリと答えた。

 頭の隅では、今日はよく雑誌読むの邪魔されるな、なんて考えていたりする。

 それから仏頂面を悪戯な笑みに変えて、利沙はまた雑誌へと目を落とした。

「・・・そうね、じゃあ龍、と、ユキ君」

「俺は君付けなんだ・・・やっぱ彼氏は格上だな〜」

「え? ああ、そっか彼氏だったわね。私からしてみてばユキ君も龍も対してレベルは変わらないわよ」

「あ、じゃあ俺まだ狙えるの?」

「何をよ」

「利沙ちゃんの彼氏権」

 何よまた読むの邪魔するつもりなの。いい加減静かにしてくれないかな。

 そんな事を考え利沙は2、3歩歩き続けると、ビタリと足を止めてユキを振り返った。

「何か利沙ちゃん、他の女の子と感じが違うんだよね〜・・・・・・。なんていうか、こう、無駄な飾り物とかがすっきり取れて逆に良い感じ。何だろ、何だろね?」

 硬直する利沙に、ユキは楽しげに首を傾げて見せた。

 ユキからしてみれば初めての感情。それが意味するものを直ぐに理解出来たが、初めから友人のものであった利沙を自分のものにする事は出来ない。

 それが逆にユキの口を軽くしているのか、それともあまり構わないとでもいうのか、自身の言葉がなんの意味も持たないようにくすくすと楽しげに口を滑らせた。言った本人は特に気にはしていないが。

「えーと・・・あの、ユキ君?」

「ん、なぁに〜?」

 利沙の見る限り普段と変わらぬそのユキの表情。逆にそれが奇妙で、利沙は雑誌を鞄にしまい声を潜めた。仮初めの恋人だとしても、前を歩く龍に聞かれるのは気が咎める。

「・・・私、龍の彼女よ? 一応」

「知ってるよ? あ、別に手ぇ出すつもりはないから安心してよ。利沙ちゃんはね、何だろ、俺の格付けの中では最高位辺りのお気に入りに入ってるってだけだから」

 自分の状況を理解していないのか、あっけからんと声量を変えずに話すユキ。特に危険な状況という訳ではないが。

「・・・お気に入りが最高位辺りって緩いのね、その格付け。まあ私も嫌いじゃないわよ、ユキ君の事は」

「ちなみに、利沙ちゃんの格付けで嫌いじゃないはどの辺り?」

「中の上辺り。龍もその辺にいるわよ」

「お、やた! んじゃ俺との事も考えててよ利沙ちゃん」

「頑張って」

「イエッサ!!」




 いつの間にか親密な関係を築いていた2人は、目的地であるユキの家に着くと漸く話を止める。

 足の向く先には一つの高層ビル。その入り口に立った利沙はあんぐりとその口を開けた。




高校入学してから小説更新出来る場所が限られてしまった……!!


中学では帰り道に公共のパソコンで打っていたんですがねぇ(汗)


今まで以上に更新が遅くなってしまうかもしれませんが、どうぞこれからもお付き合い下さいませ〜

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