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1  ・・・おい、そこの恋愛の・・・神?

 青い大空、真っ白な雲の上にそいつは居た。

 忙しそうに書類を書き続ける天使(男)達の中、恋愛の神様(女)が、現代で言う『社長が座るようなフカフカした椅子』に腰掛けて一人考え込んでいた。

 神様は綺麗というよりは可愛いという顔で、茶髪、いつも白いワンピースを着ており、恋愛の神様を略した『アイ様』という愛称で、とりあえずその辺にいる天使達からは親しまれていた。

 頬杖をついて考え込んでいるアイ様に、1人の男、天使が話し掛ける。

 アイ様の側近(のような存在)の、キューピット。

「アイ様、何をそんなに考え込んでいるんですか? 似合いませんよ。ついでに言うと、あなたの分の書類溜まってますよ」

 アイ様はボーっと遠くを眺めたまま、キューピットの問いに答える。

「書類は後でやるよ。・・・ねえキューピーさん、私ちょっと思ったんだけど」

「キューピーではありません。キューピットです。書類、早くしてくださいね。・・・で、何を思いついたんですか?」

 本当にこの人は・・・

 キューピットは内心そう思いつつ、一応はアイ様の話を聞く。

「えっとさ、この世には2種類のカップルがいるじゃない? 一つは2人で支え合ってて成り立っているカップル。もう一つは、どちらか片方が支えていないと成り立たないカップル。・・・まあ後者の場合はあまりうまくはいってないカップルだね」

「知ってます。恋愛系の神頼みの書類はここの担当ですから、知らない人はいませんよ」

 キューピットは、アイ様に自分の立場を分からせようと思って言ったのだが、色んな面でかなり鈍感なアイ様にはそれは伝わらなかったらしい。そのまま、ペラペラと話し続ける。

「それで私思ったんだけど、カップルである2人のどちらも支えあう気がなければ、そのカップルはどうなるんだろう? ・・・何か、気にならない?」

「別に、気にはなりません。それ以前に、どちらも支えあう気がないのなら元からカップルなど成り立ちはしないでしょう」

 キューピットは多少アイ様の言動に呆れつつも、一応真面目に返してやる。

 そんなキューピットのそっけない反応に、アイ様はむぅっと頬をむくれさせる。

「真面目に答えてよキューピーさん!!」

「あなたは私の名前を真面目に呼んでください。・・・いい加減覚えてください。まさか私の名前、忘れてはいないでしょうね?」

「覚えてるよ〜♪ キューピットでしょ? 私が忘れるわけないじゃん♪」

「じゃあそれで呼んでくださいよ。あなたのその呼び方を、他の天使達が真似してからかってくるんですよ」

「別にいいじゃん♪ 可愛いし♪」

「はぁ・・・もういいですよ・・・・・・。じゃあ本題戻りますよ」

「あ、キューピーさんグレちゃった」

 キューピットはこれ以上続けても意味のない会話に終止符を打とうと切り出したが、アイ様はそれを何を勘違いしたのか、ケタケタと笑っている。それとも分からないフリをしてわざとキューピットをからかっているのか。

 どちらにしても、キューピットにとっては迷惑な話である。

「グレてません。・・・それで、アイ様はどうしたいのですか?」

「へ? 何が?」

「バカですかあなたは。いえ、元からバカでしたね、すみません。・・・どちらも支えあう気のないカップルの事ですよ。それで、あなたはどうしたいんですか?」

「そうそう、それだった!! 私ね、それをちょっと試してみようと思うの。ちゃんと、両方とも支えあう気のない人をカップルにして」

 そんなアイ様の言葉を聞いて、キューピットはいつもの無表情で持っていた書類をバサバサと落とす。完全な無表情。本人なんの自覚もなし。

 そんな異様な光景に、アイ様はおろおろとうろたえる。

「どっ、どうしたの!? キューピーさん!?」

「・・・元からバカというのは知ってましたが、まさかそこまでとは・・・・・・。・・・いいですか? 実際に人間を使って実験するのは、いくら恋愛の神様とは言えど多大なリスクが・・・」

「よし決定!! だーれーにーしーよーおーかーな〜♪ あっ、あの娘なんかはどう? 近くにいるあの人なんかとお似合いっぽい♪」

 アイ様は知ってか知らずか、キューピットの話を無視して雲の端から下の世界を覗いている。

「よし、決めた!! あの『香山 龍』って人と、『松川 利沙』って娘にしよう!!」

 キューピットは完全に呆れ返り、額に手を当ててため息をついていた。

 とてもとても、面倒臭そうなため息だった。

(香山 龍と松川 利沙・・・気まぐれなアイ様に巻き込まれた、可哀想な人間・・・・・・)

 キューピットの脳には、しっかりとそう記憶されていた。

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