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第三話 彼と彼女は自分たちの変化に気付く

「あはは、私としたことが取り乱してごめんなさい!ちょっとお兄ちゃんではあり得ない光景だったもので」

ノルンはそう言いながらシュークリームを頬張っていた。しゃべるときは口にものを入れながら話すなというのに…。

対する神奈は先ほどからシュークリームとのにらみ合いを続けている。皿から取って持ち上げてはぐるぐる回したり、生地を指でつついてみたりして皿に戻す作業を数回繰り返していた。

「あの〜?カンナさん、どうかしたんですか?」

「は!はい!何?私何かした?」

声をかけられた神奈の様子はまるで猫だな、背中をビクッとさせるような人を初めて見たぞ。

「シュークリームを回している人なんて普通いませんから。」

ノルンはオブラートに包むということを知らないのだろうか、そこまでストレートに言う必要はないだろうに。

神奈はやかんか何かなのだろうか、すごく面白いなこいつ…。

だがこのままだと話が進まないな、助けてやるか。

「神奈、このお菓子は別に変なものではない。中にたっぷりの甘いクリームが入ってるだけだ。」

「だって、こういうの食べたことなくて…。」

「心配するな、これは美味しい。俺は食べ物で嘘をつくことはない。ほら、口を開けろ。」

「本当よね…?」

訝しげに口を開ける神奈に俺はシュークリームを突っ込んだ。

口に入れられた神奈の表情は不思議そうにしているものから目を輝かせ幸せに包まれたものへと変わった。

こういうところは人並みなんだな。いつも不機嫌そうにしているのに…。

「突然何してるの、変だよ。」

「いつもノルンにしているのことをしただけだが。」

「それが変だって言ってるの!」

「何を言っているのかわからん。」

そんな問答の間に神奈はシュークリームを食べ終え、手に少し着いたクリームを舐めてまた幸せそうにほおを緩めるのであった。





間食を終えた俺たちはノルンに今朝の状況を伝えた。

途中から不機嫌だった理由がよく分からないが。

「ということはカンナさんはこの世界の人ではないんですね…。」

「ええ、そうなの。」

「お兄ちゃんがなんで知り合いなのかっていうのは……待って、お兄ちゃん何してんの?」

「ただ風魔法と土魔法を合わせて使うことで人形を作っているだけだ。」

左手の手のひらから土を精製し続け指から風で邪魔な部分を削っていく少々骨が折れる技だが暇をつぶすぐらいにはなる。

「いつ見てもその技すごい…じゃなくて今大事な話してるんだけど。」

「暇だからな、悪いか。」

「あの、アレン、この世界ってやっぱり魔法があるの?」

首をこてんと傾けながら尋ねてくる神奈は面白い。今度は小動物かよ。

「覚えていないはずはないのだが…説明するよ。」

「魔法を知らないってことは本当にこの世界の人ではないんですね。わーかりました!このノルンちゃんが教えて差し上げましょう!」

なんで上から目線なんだよ、お前より年上だぞ。

「まず魔法は三角形と逆三角形を組み合わせた六芒星をイメージしてください。魔法は大きく分けて2種類あります。それは光魔法と闇魔法です。三角形を光魔法、逆三角形を闇魔法と考えてください。光魔法の場合、真ん中に光、右には水を左には風を置きます。闇魔法の場合も同じように真ん中に闇、左には火を右には土を置きます。これが魔法の基本、六源魔法の配置です。」

「えっと、光、土、水、闇、風、火を時計回りにするのね。」

「そうです、これでこの後の説明が簡単になります。」

「その前に1つ、光魔法は主に創造、闇魔法は破壊と考えておくこと。これはかなり大事なことだから、覚えておくように。」

「次に、人は光か闇のどちらかの属性に分かれます、その中の1つがもっとも得意な属性となります。これは必ず光か闇が得意になるのではなく、光の3つ、闇の3つのどちらかから1つということです。」

「ならアレンは闇の土か、光の風……あれ?違う分類なんだけど。」

「それはですね、得意な魔法と対角にあるものは違う分類でも使えるんです。ただし、制限がありまして人は得意な魔法を3つまで伸ばすことができます。その中に対角にある魔法を選択すると使えるようになるんです。」

「俺の例で説明しよう。俺は土の魔法が一番得意だ、そのためあと2つ得意なものを選べる候補に風、闇、火がある。俺はそこに風を選んでいるから風も使えるんだ。そして得意なものでなくても同じ分類なら使うことはできるようになっている。」

「注意点が2つあります。対角の魔法は得意なものに入れなければ使うことはできません。また、光か闇が得意のときは対角の魔法は使えません。相互作用により魔法がうまく発動しないんです。」

「だから光か闇になったやつは光魔法か闇魔法の全てを得意なものが使える神聖魔法と暗黒魔法を選んでいく。」

「途中からわけわからなくなりそうね。」

「図にすればわかりやすいかもな。」

「また、魔法を使えない人の方がこの世界では大半を占めています。そのため魔導士には少々選民意識を持った輩もいるので気をつけてください。」

「わかったわ、それで私も使えるのかしら。」

「検査が必要になるがな。」

「検査なんてあるの……。」

神奈は困った顔をしていたがすぐに「出来なくてもいっか」という顔になった。

俺はその間に猫の人形を作ったのだが何かが足りない気がした。





「やっと本題ですね。」

ノルンの顔付きが鋭くなった。ON、OFFしっかりできるやつなんだな。

「なんでお兄ちゃんと知り合いなんですか。」

俺たちが聞かれたくないところを突いてくるあたり、ノルンは本当に目がいいやつだと感心した。

先に口を開いたのは神奈だった。

「私たちは2人で1つみたいなものだったの、だけど話すのは今日が初めてだし顔を見たのだって数時間前よ。」

「夢みたいなものだな、それでお互いの人生をずっと見てきた。」

「なら、なぜ魔法のことは忘れていたんですか?」

「ごめんなさい、思い出せないの。色々なものに靄がかかっていて…。最初にノルンちゃんを見たときもわからなかったわ。」

「そうなんですか、それならしょうがないですね〜だって覚えていないならもうしょうがない!うん!」

ノルンは一人で謎が解けたように手を叩いていた。

「だからお兄ちゃんと同じ呪いにかかっているんですね!」

「「え?」」

俺と神奈は驚き横にいるお互いを見た。

そして、

「神奈、お前の右手のその紋様…なんだよ。」

「アレンの左手だって同じのが…。」

2人の片手には同じ紋様が刻まれているのだった。

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