試合をしました。
私はギルドの裏手にある広場に連れて行かれた。
「ここで試合をしてもらいます」
こんな所で魔術を使っても大丈夫なのかと言ったら、案内してくれたおじさんが、結界を張るので大丈夫だと言った。
試合の相手は、腕っ節の強そうなガルスという男だった。大きな剣を持っている。
この相手に勝てばいいのだろうか。
「勝敗は関係ありません。実力を見せてもらうだけですから」
私の考えを読んだかのように、おじさんが言った。
おじさんが結界を張って、その中には私とガルスだけが残った。
「では、始め!」
おじさんの合図で試合が始まった。
ガルスは剣を構えて動かない。
(攻撃しても大丈夫かな)
魔術師の相手ができると判断されたのだから、初級の攻撃くらい躱せるだろう。
私はとりあえず、火球を放ってみた。
「うおっ!?」
ガルスはギリギリで避けた。
「なんだ、この威力は!?」
ガルスが私の火球に驚いている。
これで少しは私の実力を示せただろう。
私はもういいかと言うように結界の外のおじさんを見たけど、彼は何も言わないのでまだ続けろということだろう。
次に私は水球を放ってみた。
ガルスは避けようとしたけど、私は指をクイッとして水球をガルスの顔に当てた。
そしてガルスの顔を包んだままで固定すると、彼は息ができずにもがき始め、おじさんからストップの声が掛かった。
私はすぐに水球を拡散させた。
「死ぬかと思った」
ガルスが剣を仕舞いながら呻くように言った。
おじさんは結界を解いてから、私に訊いてきた。
「おまえ、ほかには何が使えるんだ?」
「えーと、雷撃と風刃、それに土礫とか光撃とか」
「……もしかして、全部の属性使えるのか?」
「はい」
「……」
おじさんが、なんとも言えない複雑な顔をした。
それとは対照的に、ガルスは明るい声で言った。
「すげぇな、おまえ」
褒められた。……嬉しい。
「なあ、俺んとこ入らないか?」
「待て。勧誘は登録の後にしろ」
おじさんがそう言ったので、私は登録のことを思い出した。
(そういえば、まだ登録してないんだった)
試合して、すっかり忘れていた。