決心しました。
王太子がいなくなると、私はさっき彼が言ったことについて考えた。
(私たちの動向が国を左右する、か……)
確かにドラゴンの存在は大きいのだろう。しかしプライベートを覗かれているなんて、考えただけでも恥ずかしい。
(ラギとのこと、全部見られてたんだよね……)
今もどこかで見ているかもしれないのだ。
これを我慢しろと言うほうが間違っていると思うのは、私のわがままなのだろうか。
私が思い悩んでいると、ラギが私の頭を撫でてきた。
見ると、ラギが心配そうな顔で私のことを見つめている。
私はラギに申し訳なく思った。
私のわがままにラギを付き合わせているのに、ラギは嫌な顔をせず、それどころか私を心配している。
私は今まで目を逸らしてきたことを考えることにした。
(ラギの本当の幸せって、何だろう)
ラギは私と一緒にいたい。でもたぶん、ほかの人とは一緒にいたくない。
きっと私と二人きりで暮らすことが、ラギにとっての幸せになるのだろう。
でも、私にとってはそうではない。
(もしもラギが人間だったら、きっと別れていたんだろうな……)
それでもラギは追ってくると思うが。
そう考えて、私は傲慢だな、と思った。
ただラギを私に付き合わせる言い訳を探しているだけだ。
(私は本当にラギのことが好きなのだろうか)
今更ながら、うやむやのまま恋人関係になってしまったことを後悔した。
私はラギの好意に甘え過ぎている。
私はラギをじっと見つめた。
そして、私の中である結論が出た。
次の日、私は王太子と話したいとメイドさんに言った。
そしてやって来た王太子に、ここを出て行くことを告げた。
「市井で生活するのかい?」
「いいえ。ラギと二人で山の中で暮らします」
「……君はそれでいいのか?」
「ええ。決めました」
「そうか……」
王太子は残念なようなホッとしたような、複雑そうな顔をした。
そして「いつでも遊びにおいで」と言ってくれた。
私はその日のうちに、キースたちの宿を訪れて別れを告げた。
「そうか……いつかそうなると思ってたよ」
キースはそう言って笑ってくれたけど、ライは「ハルカにもう会えなくなるのは嫌だ」と言った。
「たまには会いに来るよ」
「……約束だからな!」
「うん」
私は彼らとの再会を約束して城へと戻った。
そして王太子やアリード王子、王妃様たちに見送られながら、ラギの背に乗って飛び立ったのだった。




