仕事を始めることに決めました。
ラギが変身した姿は、黒い毛並みに青い瞳の狐だった。
ただし、体長が二メートルほどあったが。
私はまず、その色を黒から金に変えさせ、体長は三十センチほどに縮めた。これでちゃんと魔狐に見える。
「ラギ、部屋の外に出る時はその姿になってね」
私がそう言ったら、ラギは魔狐の姿のまま首を振った。
その可愛らしい姿に癒されながら、私はラギに言い聞かせた。
「その姿なら、離れろって言わないから」
そう言うと、ラギは少し考えてうなずいた。
その様子も可愛らしい。
私がラギを肩に乗せると、ラギは私に頬擦りしてくる。
それが可愛くて、私はラギの頭を撫でた。
それから私たちは、明日から仕事を始めることを決めた。
「じゃあ明日迎えに来るからな」
「またな!」
そう言って、キースとライは帰って行った。
私は人型に戻ったラギに、明日の予定を説明した。
そして、外に出たら人前で変身しちゃ駄目だからね! と言い聞かせた。
キースたちが帰ってしばらくすると、王太子がやって来た。
「冒険者の仕事をするそうだね」
私はなぜ知っているのだろうと思いながら、王太子の質問に答えた。
「はい。明日から出かけます」
すると王太子はラギを見て「彼は承知しているのかい?」と訊いてきた。
それで私はラギの気持ちを訊かずに決めてしまったことを反省した。
「……ラギに訊いてみます」
「ラギに訊いても、彼はただうなずくだけだろう」
「嫌なことには首を振ります」
「しかし彼が冒険者という仕事を理解しているとは思えない」
そう言われて、確かにラギが冒険者を理解しているはずがないと私は思った。
「君はもっとラギのことを考えるべきだ」
王太子はそう言うけれど、彼は私たちに仕事をさせる気がないのでは、と私は疑った。
「……でもこのままじゃ、私たちはタダ飯食らいのままです」
「私たちはそれでも構わないよ」
「でも、せめて食費くらいは稼ぎたいです」
私はそう言い募った。
ここに来た最初の日に、食費として金砂とその他の金属(ラギに付けられていた魔道具を分解したもの)を渡していたが、それだけでは到底足りないのは分かっている。
本当はここを出て自分たちだけで生活したいのだが、ラギはまだ外での生活は難しい。
「君たちはドラゴンなのだから、人間と同じように考えなくていいのに」
王太子がため息を吐いてそう言った。
それでも、私にはドラゴンとして生きるほうが違和感があるのだから仕方がないと思った。