雇われました。
「ところで、カイは?」
私が訊くと、ライが「なんか報告に行くとか言って出て行った」と言った。
(じゃあ王太子のところにでも行ったのかな)
王太子は、カイにも私がドラゴンだと言うのだろうかと気になった。
「なあ、ハルカはもう冒険者はできないのか?」
キースが心配そうに言った。
ライも「この国の王様になんとかしてもらえないのか?」と訊いてきた。
「うん……それは無理みたい」
私も夢の中で国王や王太子に訊いてみたのだ。
けれど国王は新たな身分を与えると言うし、王太子は冒険者などやらなくてもいいと言うし……結局のところ、アストニア国王の命令を撤回させることはできないらしい。
「それなら、今度は俺たちがハルカを雇うよ」
ライがそう言った。
「ただし、ハルカは後方支援だけにしてほしい」
キースがそう続けた。
「俺たちもいつまでもハルカに頼ってばかりじゃ駄目だしな」
「ああ。ちゃんとした冒険者になりたいからな」
ライとキースがそんなことを言う。
(私は二人の成長を妨げていたのかもしれない……)
私は反省して、「そうだね。じゃあ、二人の護衛だけするよ」とキースたちに言った。
そうして私に新たな仕事ができたが、問題はラギが私にくっついて離れないことだ。
私たちはそのことについて話し合った。
そして出た結論は、ラギを使い魔(テイムした魔獣)に見えるように変身させるというものだった。
「魔狐なんかいいんじゃないか?」
「そうだね。小さくて可愛いし」
キースの提案に、私はうなずいた。
魔狐というのは狐の魔獣で、地球の猫くらいの大きさしかないので連れ歩くのにちょうどいい。
本物の魔狐は気性が荒くて手懐けるのは難しいらしいが、見た目は可愛いので使い魔にしている人は結構いるようだ。
私はラギに魔狐の姿を教えるために図書室に行こうとした。
しかしそれを言ったらメイドさんが「それならば、私が探してまいります」と言うのでお願いした。
……たぶん、ラギを張り付かせたまま人目につく所に出したくないのだろう。
メイドさんが魔獣図鑑を持って戻ってきたので、私はそれをお礼を言って受け取った。
そしてラギに魔狐の絵を見せて、これに変身してみてと言った。
ラギは不思議そうな顔をしたが、言う通りに変身してくれた。