おしゃれをしました。
私がドレスを着て迎えに行くと、ラギはすぐに私を抱き締めて頬擦りしてきた。
……私の格好には関心がないようだ。
せっかくおしゃれをしたので誰かに褒めてもらいたかったが、それをラギに求めるのは間違っているのだろう。
「せっかくだから、夕食は皆で一緒にとりましょう!」
王妃様がそう言った。
けれど皆というのは、国王や王子たちと一緒ということだろう。
そんな堅苦しい席で食事をしたくはない。
「すみません、王妃様。私たちはマナーがなってないので、食事は部屋でとることにします」
「あら、マナーなんて気にしなくていいのに」
「でも、気になりますから」
私はそう言って固辞した。
すると王妃様は残念そうにしていたけど、それ以上は言ってこなかった。
食事は相変わらず肉類中心の豪華なメニューで、ただの居候なのにこんなに贅沢させてもらっていいのだろうかと私はいつも不安に思う。
そういえば、料理に使われている肉は、魔獣の肉ではなかった。
私がドラゴンだとバレてから、メイドさんに「お食事はお口に合っていらっしゃいますか」と訊かれて「魔獣の料理をご用意することも可能ですが」と言われたのだ。
私は魔獣の料理というものに心惹かれたけれど、居候の身で贅沢してはいけないと思い、「安いお肉でいいです」と答えた。
その後出された料理もいつもと変わらず美味しかった。
食事時はラギにマナーを教える時間だ。
ラギは最初、ほとんど手掴みで食べていたけど、それではマズイと思い少しずつ教えていって、今ではスプーンとフォークは上手に使えるようになっている。
しかしナイフはあまり使おうとせず、歯で噛み切ろうとするのでなかなか上達していない。
それでも、ラギはラギなりに一生懸命頑張っているので、根気強く教えていけばそのうちちゃんと使えるようになるだろう。
しかしラギは私のすぐそばで食べたがるので、それが直らないと人前での食事は無理だろう。何より私が恥ずかしすぎる。
(本当は、ラギが独り立ちできるようになるまで、どこかの山の中で暮らせばいいのだろうけど)
私のわがままでラギに無理を強いている。
それは分かっているのだけれど。
私はラギと二人きりでの生活を選べなかった。