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諦めました。

「王妃様が教師なんて、恐れ多いです」


 私はそう言って断ろうとしたけど、当の王妃様が乗り気で断ることができなかった。


「恐れ多いなんてことはないのよ、あなたたちはドラゴンなのだから。教師ができるなんてわたくしとても光栄だわ」


 王妃様はそう言ってにっこり微笑んでいらっしゃる。

 私は断るのを諦めた。


(国王様にしか言わないように言ったのに、王妃様も知ってるんじゃない)


 この分だとほかにも知っている人がいそうだ。

 しかし、国王や王妃に口止めなんてできないし……そう思って、私はため息を吐いた。



 王妃様は優しく教えて下さった。

 けれどラギは予想通り、王妃様の言うことには無関心で、ちっとも言葉を覚えようとしない。

 ラギは私以外の言葉が分からなくても構わないと思っているのだろう。

 いくら王妃様が気を惹こうとしても、勉強する気にはならないようだ。


 とうとう王妃様はラギに言葉を教えるのを諦めた。


「まあ、あなたと一緒にいる限り、言葉が分からなくても困らないものね」


 そう言って王妃様はため息を吐く。

 私は申し訳ない気持ちになった。


「せっかく教えて下さっているのに……すみません」

「いいのよ。……ドラゴンを人の尺度で計ろうとしたわたくしのほうが間違っていたのかもしれないわ」


 そう言われて私はドキッとした。


(私も、人間としての考えをラギに押し付けているのかもしれない)


 そう思うと、これ以上ラギに言葉を学ぶようには言えなかった。



 ラギに言葉を教えるのは諦めたけど、それからちょくちょく王妃様は私たちの部屋を訪れるようになった。


「わたくし娘がいないから、一度こういうことをしてみたかったの」


 王妃様はそう言って、私にドレスをあてがった。

 ……どうやら私が女であることはバレていたらしい。

 私は着せ替え人形のようにメイドさんたちに着替えさせられながら、ラギの様子が気になっていた。


 ラギは隣の部屋で待たせている。

 私はラギに着替えを見られても構わなかったが、王妃様が「男性には外に出ていてもらってね」と言うので、私が結界を張った部屋に閉じ込めたのだ。

 だからなるべく早く着替えて迎えに行きたい。


 私はドレスを何着も着せられながら、一刻も早くこの時間が終わることを願っていた。

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