触らせました。
「私が君に触れようとしたのが悪かった」
アリード王子はそう言ったけど、ラギの怒りっぽさは何とかしないとこれからも困るだろう。
「ラギ、少し触るくらいいいじゃない」
私がそう言うと、ラギはブンブンと首を振った。
「……じゃあ、ラギが触らせてあげる?」
そう訊くと、ラギはうなずいた。
それで私はラギに再びドラゴンになってもらい、大人しくしているように言い聞かせてからアリード王子に「触っても大丈夫です」と言った。
アリード王子は夢の中と同じように、そろそろと近付いて来てラギの身体にそっと触れた。
私は彼に危険がないように見守りながら、嫌そうにしているラギの身体を宥めるように撫でていた。
「ドラゴンに触れるなんて思わなかった……」
アリード王子は感動したように言った。
すると王太子が「私も触ってもいいかな」と私に訊いてきた。
「王太子様にも触らせてあげてね」
そう言うとラギがうなずいたので、私は王太子にも「触って大丈夫です」と言った。
王太子も慎重な足取りで近付いて来て、ラギの身体にそっと触れた。
そして顔を輝かせた。
「綺麗な鱗だね……」
「そうだよな。すごく手触りがいいし、ずっと触っていたい」
王太子とアリード王子がそんな会話をしている。
しかし、そろそろラギが不機嫌になってきたので、お触りタイムは終了にしてほしい。
「あの、そろそろ……」
私がそう言うと、王太子が「ああ、すまない」と言ってラギから手を離した。
そしてアリード王子にも手を離すように言ってくれた。
二人が離れるとすぐにラギは人型に変身した。
そして再び私に抱き付いて来る。
頬擦りしてくるラギの頭を撫でながら、私は王子たちに言った。
「本当に、私のことは秘密にして下さいね」
するとアリード王子はうなずいたが、王太子は「父上には報告するよ」と言った。
「……約束したじゃないですか」
「約束したのはアリードだよ。私はしていない」
私の言葉に、王太子はそう返してきた。
……確かに、王太子は何も言ってなかった気がする。
「じゃあ、国王様に言うのは仕方ないですけど、ほかの人には言わないで下さい」
私は自分の落度を認めてそう言った。そして「本当に、国王様だけですからね」と念を押したのだった。