ドラゴンになりました。
「君はドラゴンなのだろう?」
アリード王子が訊いてきた。
私は「違います」と言ったけど、彼の目は信じていなかった。
そのままアリード王子に見つめられ続けて、私はとうとう白状した。
「……ドラゴンです」
「やっぱり!!」
アリード王子が嬉しそうな顔をして「ドラゴンになって見せてくれないか」と言った。
「……ここにいる人たちだけの秘密にしてほしいのですが」
「分かった、秘密にするからドラゴンになってくれ」
アリード王子は期待に目を輝かせている。
その眩しい美貌によろめきそうになりながら、私は外に出るため、ラギに抱き付かれたまま歩き出した。
外に出ると王太子に人目につかない場所へと案内されて、そこで私はドラゴンに変身することになった。
(変身できなかったらどうしよう)
夢の中ではよく変身していたけど、現実では拾われてから一度も変身していない。
もしかしたら変身できなくなっているかもしれない。
周囲の人々の私を見る目は二種類だ。
期待の眼差しと疑いの眼差し。
ドラゴンになれなかったらここから逃げるしかない。
ロゼスでもお尋ね者になる覚悟をしてから、私はドラゴンの姿を思い描いて夢の中と同じように変身してみた。
すると徐々に身体が大きく膨れあがっていく感じがして、視界が高く広がった。羽を動かすとバサリと音がした。
(ちゃんとドラゴンに戻れた)
私はホッとして下を見た。
王太子たちが驚きの目で見ている。
アリード王子は一層顔を輝かせて私を見ていた。
腰を抜かしている者もいる。
ラギが私にすり寄ってきた。
いつの間にかラギもドラゴンの姿になっている。
私とラギは同じくらいの大きさだった。
ドラゴンの成長は人間よりもずっと早いようだ。
「触ってもいいかな?」
下からアリード王子の声がした。
見ると、アリード王子は私のすぐそばまで近寄っていた。
(踏んでしまいそうで怖い)
私はうなずいてその場に座りこんだ。
アリード王子が私に触ろうとした時、ラギが「グルァ!」と吠えた。
私は咄嗟にアリード王子を守るように羽で隠した。
ラギは羽をバタバタさせて風をおこしている。 私はラギを落ち着かせるために人間の姿に戻った。
するとラギもすぐに人型に変身した。そして私を抱き締めた。