疑われました。
王太子とアリード王子も、ラギの今の姿を見にやって来た。
ラギは王太子のことは無関心だったけど、アリード王子には対抗心むき出しで威嚇していた。
それを面白がるアリード王子に王太子は苦笑していた。
「アリードをライバルだと思っているのかな」
するとアリード王子がラギに言った。
「ハルカを取ったりしないから大丈夫だよ」
そう言っても、アリード王子の言葉はラギには通じない。
私はラギに通訳した。
「アリード王子は私を取ったりしないって言ってるよ」
するとラギが、アリード王子のことをじっと見て、そして唸るのを止めた。
「君の言葉だけ通じてるように見えるけど……」
王太子がそう言ったので、私はドキッとした。
「……はい。私の言葉しか分からないみたいです」
「君の言葉は私たちと変わらないように聞こえるけど?」
「そうなんですけど……」
王太子は鋭い目をして私を見た。
「もしかして、ドラゴンと何か契約のようなものをしたのかい?」
「いっいいえっ!」
「じゃあ君の言葉以外は分からないように、魔術で何かしたとか?」
「そんなことしてません!」
王太子は私が何かしたせいだと疑っている。
(マズイ……どうしよう……)
私が困っていると、ラギが王太子を威嚇し始めた。
「ハルカを苛めているわけじゃないよ」
王太子がそう言った時、アリード王子が「そうか!」と声を上げた。
「ハルカもドラゴンなんだろう!」
アリード王子にそう言われて、私はうろたえた。
その場の視線が私に集中する。
「グルルル」
無言の空間にラギの唸り声だけが響く。
「君はドラゴンなのか?」
王太子がそう訊いてくる。
「絶対そうだよ! ドラゴンは番と強い絆で繋がってるって言うだろ?」
アリード王子がそう言ったので、私は慌てて訂正した。
「番じゃありません!」
するとラギが悲しげな顔をして、私に頬擦りし始めた。
「ラギの片想いか」
アリード王子がそう言ったので、私は「違います! 私もラギが大好きです!」と言った。
するとラギが嬉しそうに喉を鳴らして頬擦りする。
私はラギに頬擦りされながら、このまま私のドラゴン疑惑はうやむやにならないかな、と思っていた。