現実で王子に会いました。
翌朝。
豪華な朝食の後にメイドさんが言った。
「アリード殿下がお会いしたいそうです」
「アリード殿下?」
「第二王子のアリード・ゼクス殿下です」
私は夢で見た王子を思い浮かべた。
「ぜひ会いたいです!」
私は思わず言ってしまった。
「……ではそのようにお伝えします」
メイドさんはそう言って退室して行った。
……ミーハーな女だと思われたかもしれない。
(いや、まだ女だとはバレてないから、権力者に媚びる男だと思われたかな)
どっちにしてもあまり良い印象ではない。
これからは言葉に気をつけようと思った。
アリード王子がやって来た。
興味深そうに私たちを見てから、王子は自己紹介を始めた。
「私はアリード・ゼクス・ロゼス。将軍職についている」
「……私はハルカ、この子はラギです」
「では、ドラゴンはラギのほうか?」
「はい」
そう言うと、王子はラギをしげしげと見つめて言った。
「どこも人間と変わらないように見えるな」
そして「ドラゴンに変身して見せてくれないか?」と言った。
その期待の眼差しに私は「わかりました」と言って、外に出るために歩き出そうとした。
しかしラギがしがみついて私を行かせまいとする。
そしてラギが変身しようとするのを感じて、私は慌てて止めた。
ところが、ラギは構わず変身してしまった。
「何で……?」
私は呟いた。ラギはアリード王子の姿に変身していたのだ。
「……凄いな。私にも変身できるのか」
アリード王子とお付きの人が驚いている。
私は「戻って」と言ったけれど、ラギは首を振って私に抱き付いてくる。
私は慌てた。イケメンに抱き付かれるなんて、初めての経験だ。どうしていいのか分からない。
私が真っ赤になって固まっていると、ラギは嬉しそうに喉を鳴らして頬擦りしてくる。
「ラギはハルカが大好きなんだな」
アリード王子が笑って言ったが、私にとって今の状況は笑い事ではない。
(どうしたらいいの〜)
そんな私に構わず、ラギは私を抱き締めてスリスリし続けていた。