国王の夢に入りました。
「何者だ?」
私が夢の中に入ると、ロゼス国王が問いかけてきた。
「私は冒険者のハルカです」
すると国王はあごひげを撫でながら「ドラゴンを従えているという者か」と言った。
「従えているわけではありません」
「しかしドラゴンはおまえの言うことしか聞かないというではないか」
「それは、ほかの人の言葉が分からないからです」
それだけではないだろうと思ったが、詳しく説明することはできない。
それよりも、私は気になっていることを訊いてみた。
「ドラゴンが王太子を祝福に来たと噂になっているようですが……」
「ああ……城の人間が広めたらしいな」
「国王様の命令ですか?」
「まさか。余が命じたのは、ドラゴンが人間の姿になることを外に洩らさぬようにしろということだ」
では、噂は自然発生したもののようだ。
私は少し気が楽になった。
「では、国王様は、ドラゴンを利用するつもりはないのですね」
私がそう言うと、国王はニヤリと笑って「どうかな?」と言った。
「……利用するつもりなんですか?」
「ドラゴンの害になるようなことはしない」
じゃあ、害にならなければ利用するということか。
「利用するつもりなら、私たちは出て行きます」
私がそう言うと、国王は「まあ待て」と言った。
「おまえはアストニアで手配書が回っているそうではないか」
「……それが何か?」
「今のままでは冒険者は続けられないだろう」
「……」
それは私も思っていたことだった。
「余ならおまえに新たな身分を与えられる」
「宮廷魔術師ですか?」
「それでもいいが、なんなら貴族位を与えてもいい」
「お断りします」
「つれないな」
国王はフッと笑った。
「まあとにかく、しばらくはここにいるといい」
「……しばらくはお世話になります」
出て行こうと思えば、いつでも出て行ける。
だからもうしばらくは王城でお世話になるつもりだった。
私は国王の夢から出て、ほかの王族の夢を探した。
すると、王太子に似た人物の夢を見つけた。
こちらも美形だが、しっかり筋肉がついていて、綺麗というより格好いいという感じの男の人だ。
(確か、ロゼスの王子は二人だったはず)
年は20歳くらいだし、王太子の弟かもしれない。
私は夢の中に入って確かめることにした。




