お菓子を食べました。
庭に出ると、私はラギに「ドラゴンに戻って」と言って変身させた。
王太子は驚いたように、ラギの姿をじっと見ている。
「納得しましたか?」
「……ああ」
魔術師と王太子が、そんな会話をしていた。
その間に、ラギは再び私の姿になって抱き付いてくる。
「ずいぶんと懐かれてるね」
王太子がそう言った。
私は苦笑して、ラギの頭を撫でた。
しばらく王城にとどまるように言われて、私たちは客室へと案内された。
「ここでドラゴンの姿にならないようにね」
王太子はそう言って去って行った。
メイドさんたちもお茶を入れると退室して、広い客室にラギと私の二人だけになった。
私はお茶を一口飲んだ。上品な良い薫りがする。
私はラギにもお茶を勧めた。
ラギは私と同じようにしてカップを持ち、同じように口をつけた。そしてその熱さに驚いて、カップから手を離してしまった。
私は咄嗟に魔術を使って、カップを水の膜に包んだ。
そして水を操りカップをテーブルの上に戻して、水は霧状にして散らした。
「ラギ、火傷しなかった?」
私が訊くと、ラギはコクンとうなずいた。そして申し訳なさそうに私を見た。
「怪我がないならいいから」
ラギのお茶はなくなってしまったので、私は自分のお茶を勧めたけど、ラギは首を振って飲まなかった。
それで私は、テーブルの上に置かれたお菓子をラギに与えた。
「ラギ、これ美味しそうだよ」
ラギは私が食べないと自分も食べないので、私は先にお菓子に口をつけた。
(美味しい!)
それは思った以上に美味しかった。
前世で食べた高級菓子のような味がする。
こんなものがこの世界にあるなんて思わなかった。
「ラギも早く食べてみて」
私が勧めると、ラギも一口パクリと食べて、それからすごい勢いで食べ始めた。
ドラゴンの味覚に合うか少し心配だったけど、ラギもこの味を気に入ったようだった。
ラギはお菓子をもう一つ手に取ると、私に差し出してきた。
私は苦笑してそれを受け取った。
そしてラギにもお菓子を手渡す。
そうやって私たちは置いてあった全てのお菓子を平らげ、満ち足りた気持ちでベッドに横になった。
ラギが私を抱き締めて、私がいつもやるように頭を撫で始めた。
お返しに私もラギの頭を撫でると、今度は頬擦りしてきた。
喉がグルグル鳴っている。
この姿でも喉が鳴ることをおかしく思いながら、私はラギの頭を撫で続けていた。