王太子に会いました。
「王太子様に、この手紙を渡してほしいのですが」
私がそう言って手紙を差し出すと、兵士の間からローブを着た魔術師っぽい人が現われて言った。
「誰からの手紙だ」
「カイっていう人です」
そう言うと、ローブの人は私に近付いて来た。
するとラギが、私を守るように羽を広げた。
兵士たちがざわめく。
私はラギの背から降りて、手紙を渡すために一歩前に出た。
するとラギが人型に変身して、私を後ろから抱き締めた。
兵士たちがどよめいた。
(もう! 人前で変身しないように言ってるのに)
私はラギに抱き付かれたまま、手紙をローブの人に差し出した。
ローブの人が手紙を受け取って、「しばし待たれよ」と言った。
そして私とラギは、兵士たちに案内されて客間のようなところに通された。
しかし王城の中だけあって広い部屋だ。
二人だけでは広すぎる。
私はここにキースたちもいたら良かったのにな、と思った。
しばらくして、あのローブの人と王太子(夢の中で見た)がやって来た。
「カイからの手紙は読んだよ」
王太子がそう言った。
私は彼に見とれていた。
(夢で見たより綺麗……)
銀の髪と薄紫の瞳が神秘的で、男の人なのに“綺麗”という言葉が合っている。
年は25歳くらいだろうか。年齢のわりに華奢な感じがした。
(確か、病弱だって噂があったっけ)
病弱って感じがしないのは、意思の強そうな視線が原因だろうか。
私がそんなことを考えていると、王太子は自己紹介を始めた。
「私はロゼスの第一王子、マリウス・アギル・ロゼス、この男は宮廷魔術師のエカル・ローデ」
王太子が紹介すると、魔術師が小さく会釈した。
「私は冒険者のハルカです。こっちはドラゴンのラギです」
私がそう言うと、王太子はラギを見つめて、ドラゴンが人になるなんて……と呟いた。
「本当にドラゴンですよ」
私が言うと、ラギが変身しそうになったので、慌てて止めた。
「いや、疑ってるわけじゃないんだよ」
王太子がすぐにそう言ってくれたけど、きっと自分の目で見ないと信じられないのだろう。
「良ければ庭に出て、変身してみてくれないか」
そう言われて断る理由もなく、私は王太子たちと共に、ラギを連れて外に出た。