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交渉が成立しました。

「早く決断しろ。仲間を利用されたくないだろ」

「私ともう関わらないほうが、二人のためになると思うんだけど」

「馬鹿だな。この国に置いて行ったら人質に取られるかもしれないだろ」


 ……そんなことは考えもしなかった。

 けれどドラゴンを取り戻すために、あの国王ならやるかもしれない。


「私はドラゴンと一緒に逃げるから、キースとライだけ連れて行ってくれない?」

「……どこで落ち合う?」

「そうだなあ……オルムの麓で」


 オルムはこの国とロゼスとの国境にある山の名前だ。ロゼス側で落ち合えば都合がいいだろう。


「オルムにドラゴンを住まわせるのか?」

「さあ……まだ分からないけど」

「……まあいい。俺はオルムの麓にあんたの仲間を連れて行く。それでいいな?」

「ちゃんと二人に説明してあげてよ」

「わかってる」


 それきり、男の声は聞こえなくなった。


 私は眠るレキを見つめながら、国王が、もうドラゴンを利用する気にならないようにするにはどうしたらいいかと考えるのだった。





「おーい、餌だぞ!」


 レキに肉と果物が差し入れられた。

 するとレキが起きて、私に肉を差し出してくる。


(そういえば、昨日から何も食べてない)


 飲み物さえ差し入れてくれないなんて、あの国王は本当に私を雇う気があるのかどうか疑わしく思えた。


「レキ、これ頂戴」


 私は林檎に似た果物を一つ取ってレキに訊いた。

 すると餌を持ってきたおじさんが「それはドラゴンのための物だ」と言った。


(私は飢えてもいいっての!?)


 私が憤慨してもおじさんはお構いなしだ。


 するとレキが、また私に肉を差し出してきた。

 私に肉を食べさせたいらしい。


「ありがと。レキは優しいね」


 私はレキにお礼を言ったけど、肉よりも果物が食べたい。


「でもね、私はこっちのほうがいいの」


 私がそう言うと、レキは果物を全部私の前に積み上げた。


「ありがと」


 私がそれを食べようとすると、おじさんが「駄目だ!」と怒鳴った。

 するとレキが「グルァ!」と、おじさんを一喝してくれた。


 ビビって何も言えなくなるおじさんに構わず、私は果物を食べ始めた。

 私が食べるのを見ながら、レキも肉を食べ始めた。

 そして食べ終わると、レキは私に寄り添って目を閉じた。


 すぐにレキの寝息が聞こえてきた。

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