噂を流されました。
「ハルカ!」
夢の中でキースが私に抱き付いてきた。
「無事だったのか!」
「うん。ごめん、心配かけて」
「それより、あんたが密偵だって噂になってるぞ」
「何それ!」
何でそんな噂が出てくるんだと私は憤慨した。
「ドラゴンが国王の命令で密偵を捕まえたってことになってる」
「……やられた」
きっと噂を流したのは国王かその側近だ。
国王が飼っているドラゴンが人を襲うなんて噂になったら困るのだろう。
(だからって、私を悪者にするなんて)
でも、と私は思い直した。
どうせ逃げれば反逆者として追われるんだ。
だったら密偵でも何でも同じようなものではないか。
私は気をとり直してキースに言った。
「キース、私はこの国を出るから」
「どこに行くんだ?」
「サンドーラかロゼスに行こうと思う」
「……俺たちも行くよ」
キースが決意したように言う。
だけど私はそれに首を振った。
「駄目だよ。キースたちまで密偵の仲間だってことで追われることになるよ」
「けど……」
「ライのことも考えてあげて」
「……」
私はやっと、彼らと別れる決心がついた。
(下手に連絡を取るとキースたちが危ないかもしれない)
私は現実で彼らに接触するのを諦めた。
「今までありがとね」
「ハルカ……」
キースは涙ぐんでいる。
私はライの夢の中にも入ることにした。
「キース、私はもう行くね」
「ハルカ! 待てよ、もう少し」
「ライにも会いに行かないとね」
「……そっか」
「また、夢の中で会えるから」
「……約束だぞ」
「うん」
そうして私は、キースの夢を出てライの夢を探しに行くのだった。