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捨てられました。
(やばい。見捨てられた)
そう気付いたのは、ドラゴンがいなくなってから二日後のことだった。
もっと早く気付けって感じだけど、私は赤ちゃんだから眠ってばかりいて、親が帰ってこないことに気付いたのがついさっきだったのだ。
(お腹すいた……)
こんなことになるなら、あの時無理にでもウサギを食べるんだったと後悔したけど、今更どうにもならない。
時間だけが過ぎて、空腹感は増すばかりだ。
(また死んじゃうのかな……)
それならそれでいいような気がした。
今度生まれ変わったら、また前世のお父さんとお母さんの子供になりたいと思った。
私は夢の中を漂っていた。
ああ、夢魔に戻れた。そう思った。
夢の中を渡り歩き、人間の精気を取り込んでいく。
身体が満たされていくのを感じた。
そうして私は眠りながら精気を得る生活を続け、すくすくと成長していった。
そして人間の姿に変身できるようになると、洞窟を出て森で果物を取って食べるようになった。
そうして何年か過ぎたある日、生まれ変わってから初めて人間と出会った。