宮廷魔術師に誘われました。
「そんな……!」
アンソートが呻くように言って崩れ落ちた。
私には敵わないと悟ったらしい。
すると今まで黙って見ていた一番偉そうなやつが、私をジロジロ見ながら言った。
「おまえ、宮廷魔術師にならぬか?」
私は少し考えて、それから言った。
「どういう条件で、ですか?」
とりあえず時間を稼ごうと思った。
ここから出て行くのは簡単だが、ドラゴンはきっと私を追ってくるだろう。
ドラゴンをここから連れ出しても大丈夫かどうか知りたい。
「どんな条件なら余に仕えるのだ?」
「このドラゴンを私にくれますか?」
そう言ったら、その二が「思い上がるな!」と怒鳴った。
私はその声に顔をしかめて、「このドラゴンは誰のものなんですか?」と訊いた。
するとその二が自慢げに言った。
「そのドラゴンは、私が卵を手に入れて国王様に献上したのだ」
……つまり国王のものらしい。
そしておそらく、国王というのはこの一番偉そうなやつのことだろう。
ドラゴンを連れて行ったら面倒なことになりそうだ。
「……考える時間を下さい」
「よかろう」
国王は鷹揚にうなずいた。
――そうして一日だけ、私に考える時間が与えられた。
国王たちがいなくなると、私は結界を張ってから眠ることにした。
夢の中で情報収集をするためだ。
そのためには、ドラゴンには起きていてもらわなくては邪魔になる。
「ねえ、レキサン……何だっけ?」
私はドラゴンに話しかけようとして、さっき国王が言っていた名前を言おうとしたが、長くて忘れてしまった。
私が首を傾げると、ドラゴンも同じように首を傾げた。
それを可愛いと思いながら、私は「まあ、いいか、レキで」と呟いた。
「ねえレキ。私は少し眠るから、その間誰も近付かないように見張っててくれない?」
私がそう言うと、ドラゴンは分かったと言うようにうなずいた。
夢の中でも思ったけど、どうやら言葉はちゃんと理解しているらしい。
「ちゃんと起きててね。眠っちゃ駄目だよ」
私が念を押すと、ドラゴンはしっかりとうなずいた。
私はそれに安心して、夢の中に入るために眠ることにしたのだった。