森に入りました。
目的地に着くと、私たちは馬車を降りて森に入った。
この森のどこかに角熊の巣があるらしい。
私は魔術で気配を隠してから森の中を進んで行った。そうしないと、角熊に逃げられるからね。
しばらくすると、角熊が三頭現われた。
私は氷の矢を放って瞬殺した。
「すげー」
ライが感心したように言った。
キースは無言で辺りを警戒している。
「キース、解体してくれる?」
私がそう言うと、キースは「血の臭いで獣が寄ってくるぞ」と言った。
「そしたら私が仕留めるから」
私の言葉にキースは「わかった」と言って、ライに指示を出しながら二人で解体を始めた。
キースは器用だと言うだけあって、あっという間に三頭の解体を終えた。
その必要部位を仕舞いながら、ライが「これ食えたらいいのになー」と言った。
魔獣は魔力が強過ぎて、人間が食べると中毒を起こすのだ。
私のような魔力の強い生き物なら、食べてもなんともないらしいが(私は食べたことはないが)。
だから魔獣を倒しても、肉は棄てていくしかない。
そうこうしてると血の臭いに惹かれたのか、狼が寄って来た。群れに囲まれている。
――食べられない獣に用はない。
私が隠していた気配を一瞬だけ放出すると、狼たちはあっという間に走り去って行った。
「なんだ……?」
キースが呟き、ライは首を傾げている。
「何でもいいから、さっさと行こうよ」
私が声をかけると、二人は不思議そうにしながらも角熊の巣を探すために歩き出した。
魔力の弱い人間には、私の放った気配が分からない。
そのことに安心しながら、私は森の奥へと進んで行くのだった。