ドラゴンに会いました。
その日、私は宿に戻ると食事もしないで寝てしまった。
そして夢の中をぼんやり漂っていると少しずつ元気が戻ってきた。
(元々一人で仕事するつもりだったし、この街にも長くいるつもりはなかったし)
だから、別れが辛くなるような仲間を作らなくて良かったんだ。そう思うことにした。
夢を渡り歩いていると、またどこからか極上の精気を感じた。
(昨日のドラゴンだ)
私はその精気を辿ってみた。
夢の中に入ると、あのドラゴンが私を見て嬉しそうに駆け寄って来た。
そして私の足下にやって来て身体をすり寄せてくる。
すっかり元気になったようで安心した。
それに、あの卵みたいな膜がなくなってるから、無事に卵から生まれたのだろう。
(良かった)
私はドラゴンの夢から去ることにした。
せっかく回復したドラゴンから精気を吸ってしまうのは、また弱らせる原因になってしまうかもしれない。
私はドラゴンの頭を撫でながら言った。
「私はもう行くけど、元気でね」
するとドラゴンは別れを嫌がるように、私の服に噛みついた。
私を行かせまいとしているようだ。
可愛いなぁと思いながら、私はドラゴンの姿になって夢の中から飛び去った。
「キュウ!」
ドラゴンの鳴き声が、行かないで! と言っているようだった。