食べられました。
鏑木春風、それが私の名前だ。
女子高生である私には秘密がある。
なんと、私は夢魔なのだ。
父親は人間、母親は夢魔。だから私はハーフというわけ。
昼は人間としての生活をして、夜は人間の夢の中に入って精気を取り込む。
ただ夢の中を渡り歩くだけの簡単なお仕事だ。
危険なことは何もない。……そのはず、だった。
その日、私はいつものように夢の中を漂っていた。
すると、どこからか極上の精気が流れ込んできた。
私はそれに吸い寄せられるように、元となる夢の中に入っていった。
まずい、と思った時には遅かった。
最期に見たのは、ワニのような大きな口の中だった。
――何か薄明るい光を感じる。
……私は食べられたのではなかったのか。
(どこも痛くない……)
もしかして天国? と思ったが、夢魔でも天国に行けるのだろうか。
(……もしかして、魔界とか?)
だとしたらヤダな、と思いながら周りを見ると、何やら白っぽいものに囲まれている。
(狭い……)
白っぽいものの向こうから光を感じるから、厚さはたいしてないのだろう。
私はその白っぽい壁を押してみたけど、意外と硬い。
手だけじゃ駄目だと思って、身体全体を使って押してみた。
すると、頭の上から何か硬い物がぶつかるような音がして、壁にヒビが入った。
(もう少しだ)
私は思いっきり壁を叩いた。
すると壁が割れて、目の前には夢の中で見た大きな口が。
(あ、死んだ)
死を覚悟した私を、その口の主はベロンと舐めた。
そのまま身体中をベロベロされて涎塗れになった。
その時、自分の身体を見て、私は固まった。
――私は恐竜のような生物になっていた。