『首吊り』
白い空間。上も下も無く、前も後ろも、自分が立っているのか寝ているのかも分からない。だけど、この空間に自分はいる。
「あ…あぁ…」
タカヒトは壊れかけていた…遂に訪れた『自殺』。最後の閂が、外れた。
「いやだ…もう…死にたくないよ…」
タカヒトは泣いている。もう耐えられない。だが、そんなタカヒトの声をかき消すように、やたらと陽気な声が響き渡った。そう、あの声…
『バンジージャンプ、行ってみよう!』
唐突に、タカヒトの足下に『地面』が出来た。見えないけれど、確かにそこに存在する『床』…そう、それは、忘れもしないあの…
「死刑台、だよね…?」
いつの間にか現れた階段、てっぺんにある絞首台…
『それじゃあ、スタートしちゃおうか♪』
声と同時に、タカヒトの足が動きだす。階段をゆっくりと上がる。勿論、タカヒトの意思ではない。
止まる事無く、タカヒトは階段を昇り続けた。遂に最上部につき、目の前にぶら下がっているロープの環を手にする。
「やめて…」
タカヒトは声をあげる事しか出来ない。
「やめろって…!」
タカヒトの手は、ロープを持ち、環を自らの首に掛けていく――
『準備オッケー♪』
あの声がして、タカヒトの目の前に、スイッチの付いた台が運ばれて来た。
『カウントダウン!』
10…
「いやだ」
9…
「やめろ」
8…
「こんなの…」
そして…
2…
「いやだああぁぁぁっ!」
1…
「助けてえぇっ!!!!」
タカヒトの手が動く。そして、スイッチを自らの手が叩いた。
ガコンッ!足下が無くなり吊されるタカヒトの身体。暫くの間じたばたと藻掻くタカヒトの身体。そして、ついには動かなくなる―