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『撲殺』〜始まる『宴』

赤い闇の中に、タカヒトはいる。あの素晴らしい死刑ひとときの余韻に酔いしれながら、次に自分に訪れる『コト』に期待していた。

「さあ、何が始まるんだろう…?」

不意に、タカヒトは手足の自由が利かなくなったのに気がついた。まるで、縛られているような…

「何だろう?ステキなコトが始まるのかな?」

唐突に、右足に衝撃が奔る。何か鈍器のような物で殴られたようだ。甲の部分に痛みを伴う熱さが残る。

「あぁ、ボクはまた殺してもらえるのかな?」

タカヒトの瞳に倒錯した愉悦が広がる。

辺りは真っ赤な闇。いつの間に現れたのか、タカヒトの前には黒い人影がいる。恐らく、手にしているハンマーのような物がさっきの痛みの原因だろう。

「いいよ…もう最高だよ…次は腕?それとも顔?」

タカヒトは殺される悦びに期待している。究極の美の追求、『自殺では無い自分の殺害』が死んだ後まで味わえる。これ以上の悦びは考えられない。

『バランスって、大事だよね?やっぱり次は…』

何処かで聞いた声。タカヒトは、その声の主を知っていた。

「そんな…まさか…」

紛れもなく、その声はタカヒト本人のものだった。

「これじゃダメだよ、ボクを殺すのは他の誰かでなきゃ…」

タカヒトの言葉は途中で遮られた。人影がタカヒトの左足を砕いている。

尚も、タカヒトは自分の影に殴られ続ける。手、脚、肩、そして肋骨…

「やめろ…ボクはボクを殺してはダメなんだよ…」

自分が自分を殺してしまったらただの『自殺』になってしまう。それだけは許せない。自らの美意識にかけても、『自殺』だけは。

だが、そんなタカヒトの美意識などお構い無しに、影はタカヒトを破壊し続ける…もはや、タカヒトの首から下は全ての骨という骨が粉砕され、いくつかの臓器も破裂している。

「自殺だけはダメなんだ…自殺…だけは、ダメ、なんだ…」

タカヒトの意識が薄れていく。タカヒトの中に、初めて『死』に対する恐怖がうまれ始めていた。

影が、タカヒトの頭にハンマーを振り下ろす…かなり無造作に。

「やめてくれええっ!!!!」

タカヒトの叫びは、鈍い衝撃と飛び散る血にかき消される。そして、タカヒトの意識は闇に飲まれた…

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